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その夜は日向ひなたのにおいに包くるまって私の緊張は最高潮だった。お互いに半袖Tシャツにハーフパンツ、肌の密着面積はこれまで以上に広く肢体の熱を感じた。
くちゅ ちゅ ちゅぱくちゅ
敷布団に押し付けられた私の頬に惣一郎の口付けの雨が降った。深く重なり合う唇、舌先が中をなぞり舐めまわし唇を啄む。その快感をもっと堪能したいと舌を差し出すと、惣一郎はいつもの気怠い微笑みで口をつぐんだ。
「七瀬、どうして欲しいですか」
「な」
「な、何ですか」
「舐めて、舐めて下さい」
淫靡な声のトーンに思わずはしたない言葉を口にする。するとお預けを喰らっていた舌先を惣一郎が喰み舌裏の筋を舐め上げる。
「あ」
「今夜は声を出しても良いですよ」
惣一郎の舌先が口腔内を所狭しと這い回り、息継ぎで唇が離れると涎がいやらしく糸を引いた。
(ーーーあ、勃ってる)
股の間に大きく形を変えた惣一郎を感じた。
(触って、お願い、触って)
けれど今夜もその気配は無く、触れるのは口元だけで首筋にすらそれは届かなかった。
「あ、あ」
惣一郎は私の乳首が硬く膨らみそれを待っている事を感じている筈だ。なのに決して指先を伸ばす事はない。私は行き場のない感覚に身悶えしながら浅い眠りに落ちた。
浅い眠りから目覚めると惣一郎はまだ寝息を立てていた。薄っすらと髭が伸び、少し野生的な雰囲気を醸し出していた。私は起こさないようにベッドから這い出しリビングのベンチに座り朝靄あさもやの海を眺めた。
「朝の海って灰色なんだ」
重い腰を上げて歯を磨く事にした。
(洗面所がないのはちょっと不便)
このコテージにシャワールームはあるが洗面所がない。「顔を洗うのはどうしたら良いのか」「歯磨きはどこでしたら良いのか」という問い掛けはあっという間に解決した。
「キッチンで洗えば良いじゃないですか」
「あ、はい」
という事で私は腰に手を当て、半分寝ぼけ眼まなこで歯磨きをしていた。木枠の窓を開けると湿った朝の空気が身体に纏わり付いた。
(ーーー今日も暑いのかなぁ)
私はまたなにかを感じた。慌ててカーテンを開け、朝靄の中で目を凝らした。
(あ、またあの人だ)
今度は楡にれの樹の下に、白い日傘を差して黒い髪をハーフアップに結えた大島紬の着物を着た細身の女性が立っていた。会釈をしたがあまり反応がない。不思議に思っていると肩を叩かれた。
「ひゃっ!」
「なんですか、人を幽霊みたいに」
「おはようございます」
「おはよう」
惣一郎は顎を掴むと唇を重ねて来た。
(ーーーやだ、見られちゃう)
横目で見た樹の下に日傘を差した女性の姿は無かった。