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真悟「」 エル『』 川村〔〕
「はぁ…」
安堕良 真悟、25歳独身。
今まで生きていて彼女など、1人もできたことがない。今はただ働いて怒られて食べて寝て…そんな生活を送っている。
俺だって最初は頑張っていた。しかし、現実は厳しかった。今日も今日とて、あのクソ上司に理不尽に怒られた。
〔お前さぁ…仕事舐めてんの?お前がいなくてもこっちは困らないんだよね、とっとと辞めれば?ちっ、使えねぇな…。〕
川村のその言葉が何度も頭に響く。
「くそっ…俺だって頑張ってんだよ…」
そうして道端にあった石ころを蹴る。こんなことしてもどうにもならないが、なんでもいいからイライラをぶつけたかった。
家に着き、服も着替えずにベッドに倒れ込む。
「疲れた…」
目を閉じると、余計な考えが頭を巡る。そして、ふと思う。
「死んだらどうなるのかな」
本気で死のうと思ってた訳ではなく、ただ気になっただけだった。そう小さく呟くと、どこからか声が聞こえる。
『大丈夫?』
まさか返事が来るとは思わなかった。
目を開けると目の前に、神秘的なオーラを醸し出した女の子がいる。 自分の身長の半分もなさそうだ。
腰まであるくせっ毛気味の金髪、ふわっとした白いワンピース、闇を何も知らないような澄んでキラキラした瞳、 頭の上には天使の輪のようなものがあり、翼が生えている。少女の周りの空気だけ光っているように見えた。
「…ははっ…ついに幻覚まで見えるようになったのか…」
幻覚だと思い、再び目を閉じて開けるがまだいる。
目を擦ってもまだいる。
「……」
もしかして本当にいるのか?でも、こんな天使みたいなのがなんでここに…。
『幻覚じゃないよっ!!ちゃんと触れるから!』
その少女はそう言って、俺の手を握る。
冷たい。寒気がする。
体温がまるでない、柔らかな肌の感触だけが伝わってくる。
「まぁ…確かに触れるけど…」
ベッドから起き上がる。この子はなんなのだろうか。
「…誰?」
『エル!エルっていうの!よろしくね!』
エルと名乗った少女はにこっと微笑んだ。
その笑顔はとても眩しくて、久しぶりに心が温かくなるような感じがした。
『私は天使なんだよ〜!…って言ったら信じる?』
少女は俺に問う。
「…天使なんて本当にいるのか?信じられないよ」
『いるよ!ここにいるんだからさぁ〜!』
エルは変わらず笑っていた。
でも先程とは違い、どこか違和感があるような気がする。
しかし、俺は気のせいだと思いスルーしてしまった。
「…そっか。なんで天使がここにいるんだ?」
『ん〜…なんか疲れてそうだったから!』
「…それだけ?」
『それだけ!』
「……はぁ…」
ため息をついて額に手を当てる。頭が痛い。本当になんなんだ。仕事で疲れているというのに、また面倒事が起きた…。
「じゃあ、なんだ?天使っていうなら、俺を幸せにしてくれるのか?」
皮肉気味に言う。
まさか、こんな少女が俺の願いを叶えられるわけがない。そもそも、本当に天使なのかもわからないのに…。
『幸せに…?う〜ん…真悟が幸せになりたいなら叶えてあげる!』
「…は?」
予想外の返答に呆然とする。
叶えてくれる?どうやって?しかも、なんで俺の名前を知って…
そんな俺の考えを見透かしたかのように、エルは言う。
『叶える…まぁそんな感じ!名前を知ってたのは……魔法みたいなっ?ふふんっ。』
「あ、そう…」
少し躊躇してから俺は言う。
「…じゃあ…どうせ叶わないだろうけど…」
1度言葉を止めて深呼吸をし、再び口を開く。
「…もし叶うのなら、俺を幸せにしてくれ」
『うんっ、いいよっ!』
エルは優しく笑って再び俺の手を握った。
その手は冷たかったけど、俺には何故か温かく感じた。
『これからよろしくね!真悟!』
「…あぁ、よろしく」
そうして、突然現れた天使のエルと俺の生活が始まった。