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5話 隠された過去***
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松下ときの秘密
夕暮れのショッピングモール。
アノマリーを鎖で拘束し、一瞬で消滅させた少女——松下ときは、冷静な表情のままみこと海を見つめていた。
みこ「……あなた、すごいね」
みこは驚きと尊敬の入り混じった目でときを見た。
とき「別に。慣れてるだけよ」
ときはそっけなく答え、ステッキをしまった。
海「慣れてるって……いつから魔法少女をやってるんだ?」
海が尋ねると、ときは少し視線を落とし、静かに答えた。
とき「……ずっと前から」
その声には、どこか哀しげな響きがあった。
みこ「ずっと……?」
みこが聞き返そうとしたとき——。
ピロン♪
みこのスマホから《Magica Order》の通知音が鳴る。画面には、短いメッセージが表示されていた。
《新たなアノマリーが出現しました。討伐推奨》
みこ「また?」
海「今日は多いな……」
みこは顔をしかめたが、ときは静かにスマホを見つめ、呟いた。
とき「……このアプリ、便利なようでいて、すごく残酷よ」
みこ「え?」
とき「この通知が来た時点で、私たちには戦う以外の選択肢はない。それがどういう意味かわかる?」
みこと海は、ときの言葉の意味を考えた。
みこ「……放っておけば、もっと被害が出るってこと?」
とき「そう。でも、それだけじゃない」
ときは、ゆっくりとみこを見つめる。
とき「このアプリが何のために存在してるのか、本当は誰も知らないでしょ?」
みこ「え……?」
みこは思わずスマホを握りしめる。
とき「……私たちは、ただ戦わされてるだけなのかもしれない」
ときの言葉が、みこの胸に不安として残った——。
新たな敵
通知に従い、みこたちはアノマリーの出現場所へと向かった。
人気のない川沿いの公園。日が落ち、街灯がぼんやりと足元を照らしている。
みこ「ここか……」
みこは周囲を見回した。静かすぎる。
海「気をつけろよ、みこ」
海が言った瞬間——。
ズゥゥン……
再び空気が歪み、暗黒の霧が立ち込める。
みこ「来た……!」
霧の中から姿を現したのは、異形の影。今までのアノマリーとは明らかに違う雰囲気を持っている。
とき「……強そうね」
ときがステッキを取り出し、静かに構える。
みこ「いくよ!」
みこも魔法少女の姿へと変身し、戦闘態勢に入った。
しかし——。
みこ「……え?」
次の瞬間、アノマリーの目がぎらりと光り、みこへと向かって一直線に飛びかかってきた。
みこ「くっ……!」
みこは慌てて防御魔法を展開するが、衝撃が強く、吹き飛ばされそうになる。
海「みこ!」
海が駆け寄ろうとしたが、そのとき——。
とき「……あなたの魔法じゃ、こいつには効かない」
ときが前へ出た。
海「え……?」
とき「アノマリーには、個体ごとに異なる弱点がある。知らずに戦っても、無駄よ」
ときは冷静にアノマリーを見つめると、ゆっくりと口を開いた。
とき「このアノマリーの弱点は……闇に溶け込む前に攻撃を当てること」
みこ「そんなの、どうやって——」
みこが言いかけたその瞬間——。
ときがステッキを振りかざし、鎖を解き放つ。
とき「——《絶対拘束》」
無数の鎖が瞬時にアノマリーを取り囲み、闇に溶ける前にその動きを封じた。
とき「今よ、みこ!」
みこ「……っ!」
みこは力を込め、ステッキを振るう。
みこ「《クリムゾン・バースト》!」
紅い光の魔法がアノマリーを貫き、爆発が起こる。
みこ「……消えた?」
みこが息を切らしながら呟くと、ときは静かに頷いた。
とき「……まあ、こんなものね」
その冷静な態度に、みこは改めてときの実力を思い知る。
みこ「……とき、あんた何者なの?」
みこ「それを知って、どうするの?」
ときは少し微笑んだ。
とき「ただ、少しだけあなたたちより経験があるだけよ」
そう言い残し、ときは夕闇の中へと歩き出した。
その背中を見つめながら、みこは強く思った。
——私はまだ、何も知らない。
《Magica Order》の本当の目的も。
魔法少女としての戦いの意味も。
みこ「……もっと、強くならなきゃ」
みこは、静かに拳を握りしめた——。