、、、、、、、、、 シーン
き、気まずいっ、、、、気まずすぎるっ、、、、
私、天音詩歌は頭を抱えていた。
その原因は、、、、
私はちらりと隣に目をやった。
きらきらと輝いている紅白色の髪。すっと整った顔立ち。
、、、、そう、轟焦凍くんだ、、、、。
「じゃあ、これからH Rを始める。」
淡々とした相澤先生の声は、耳を通り抜けていった。
だ、だって再会したんだよ?名前すら知らなかった人と、、、、
さっきからちらちら視線も感じるし、、、、
気、気まずいよお、、、、
「ん、、、、なんだ飯田。」
飯田くん、、、、という子が何か言ったらしい。
でも私は隣が気になってしょうがなく、全く頭に入ってこなかった。
どうしよう、、、、や、やっぱあとでなんか話す方が、、、、いや、でもなあ、、、、
「おい、天音。」
相澤先生の声で私は我に返った。
「は、はい!」
な、なんだろう、、、、
「飯田の提案で、H Rは天音の質問時間にすることになった。」
、、、、えっ!
「じゃああとは飯田に任せた。俺は寝る。」
えっ!
えええ!
ど、どうしよう、、、、ぜ、全然そういうのは考えてなかった、、、、‼️
し、しかも相澤先生はもう寝てるし、、、、
私が慌てふためいているうちに、眼鏡をかけたいかにも真面目そうな男子が教壇に立った。
「では、これから天音くんへの質問を始める!質問がある人は手をあげてくれ 」
「はいはいはーい!」
真っ先に手を挙げたのは、、、、金髪のチャラそうな男の子だった。
ま、待って、、、、まだ何も考えてない、、、、
「俺は雷!よろしく!天音、、、、ってか、詩歌って趣味なにー❓」
「えっと、、、、読書とお絵描き、、、、です、、、、」
「次はわたし!私は芦戸三奈!詩歌の好きな〇〇はー? 」
「す、好きな食べ物はお団子です、、、、」
「八百万百といいますわ。詩歌さんはどの教科が好きですの?」
「美、美術、、、、です」
「霧島だ!演歌は好きか!?」
「ふ、普通、、、、」
「蛙水梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで。詩歌ちゃんはどこ出身なの? 」
「北海道、、、、です」
「峰田実!何カッ、、、、」
「、、、、?つ、梅雨ちゃん?」
「気にしないで、続けて。」
な、なんか峰田くんが吊るされた気がするんだけど、、、、気のせいかな?
「じゃあ次は僕から、、、、」
クラスメイトからの質問が少し落ち着き、私は心の中で息を吐いた。
ふう、、、、なんとか乗り切れそう、、、、それにしても、いろんな子がいるんだなあ、、、、
私が一息ついていると、おとなしそうな男の子がおずおずと私に質問した。
「緑谷出久って言います。えっと、、、、天音さんの個性は?」
どくん。
個性、という言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく音をたてた。
ーー「気持ちが悪い個性、、、、生まれてこなきゃよかったのに」
父の汚いものを見るような目つき。母が吐き捨てた言葉。
一気に頭にフラッシュバックして、呼吸が浅くなった気がした。
「えっと、、、、天音さん?」
緑谷くんが困惑した表情を浮かべて、こちらを見ている。
みんなもどうかしたのかと様子を伺っている。
声が、出ない。
だめだ。だめだ。
その質問だけはーーー。
「緑谷。」
凛とした声が、耳に響いた。
「俺が、質問していいか。」
轟、くんだ。
轟焦凍くんの声だ。
「あ、うん、、、、いいよ。」
緑谷くんは戸惑いながらもOKした。
「天音のーー中学校は 」
なんてことない質問だった。
これなら、答えられる。
私は、少し困惑しながらも答えた。
「日田南中学校、、、、です。」
轟くんは眉ひとつ動かさず、そうかとだけ言った。
だけど、何か少し、考えているような表情だった。
それから何事もなく質問は続き、緑谷くんの質問はうやむやになった。
幸いなことにヒーロー科の授業はないままお昼休みになった。
みんなは楽しそうに話しながら教室を出ていく。
私は、一人食堂に向かう中で考えた。
轟くんは、なんであんな質問をしたんだろう。
中学校なんて、普通どうでもいいのに。
悶々と考える私の頭の中で、段々ひとつの可能性が浮かんだ。
もしかしたら、もしかしてだけど。
轟くんは、私が緑谷くんの質問に答えられないのを見かねて、別の質問をしたのかもしれない。
いや、、、、冷静に考えてそれはない、、と思うけど、、、、
でも、、、、お礼は言っておこう。
私はしっかりとした足取りで食堂に入ると、轟くんを探した。
うーん、、、、いないのかな?
けど、なにせこの人の量だ。
多分、簡単には見つからない。
私は轟くんを探しながら、メニューをしげしげと見つめた。
おお〜どれも美味しそう、、、、!
うーんそうだなあ、、、、今日はこの天ぷらそばにしよう、、、、!
私は注文しようと口を開いた。
「「天ぷらそばください」」
、、、、え?
声が二つ聞こえた、、、、ような?
私が恐る恐る前を見ると、そこには私と同じように戸惑った表情を浮かべているーー轟焦凍くんがいた。
「「、、、、。」」
どうしよう、、お礼、、、、言った方がいいもんね、、、、
私があの、と声をかけようとすると、先に轟くんが言った。
「よければ、、、、一緒にたべないか?」
ーーというわけで、私はいま轟くんと一緒に天ぷらそばを食べている、、、、
、、、、まだ、お互い一言もしゃべってないけれど、、、、
お、お礼言わなくちゃ、、、、
「天音、、、、俺のこと、、、、知ってるか? 」
轟くんがポツリと言った。
「う、うん、、、、轟焦凍くんだよね、、、、?」
「いや、、、、そう言うことじゃなくて、、、、」
私が答えると、轟くんは歯がゆいような表情を浮かべた。
、、、、どういうことだろう?
「まあ、、、、なんでもない。」
轟くんは言葉を濁して、そのまま黙りこくった。
、、、、その横顔が、少し寂しそうだったのは気のせいかな、、、、?
あっ、、、、いま言わなくちゃ!
「轟くん、、、、あの、質問時間のとき、助けてくれてありがとう、、、、」
私はにこりと笑った。
轟くんは驚いたように、目を見開いて、頬を少し赤く染めた。
「いや、、、、全然良い。それに、、、、よければ仲良くしてくれ。」
轟くんは照れくさそうにしながらそう言った。
、、、、!友達、、、、できるかも、、、、
私は嬉しくなりながら返事をした。
「うん!よろ、、、、しく!」
轟くんはふっと笑った。
「俺のことは焦凍で良い。、、、、詩歌って呼んでいいか?」
「し、詩歌はいいけど、、、、焦凍は、ハードルが高いっ、、、、!轟くんにするよ、、、、!」
「そうか、、、、」
「そ、そんなしゅんとしないでよ、、、、」
そう話していると、声をかけられた。
「轟くんに、、、、詩歌ちゃんだ〜」
「奇遇ね。一緒に食べましょう。」
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんだった。
「、、、、え!い、いいの!」
私は緑谷くんの質問の後から、なんとなくみんなと話しにくかった。
個性の話になるかもと思うと、怖くなったし、変な奴と思われたかもしれなかったからだ。
けど、みんなは全然そんなことなかったんだ。
「詩歌ちゃん、可愛かったし!気になってさ〜」
お茶子ちゃんはにこにこと笑いながらいう。
「轟くんと一緒とは思わなかったけど〜みんなで話そー!」
「、、、、!」
「轟くんはそばが好きなのね。」
「ああ、特に天ぷらがな。 」
「うちも好きだ!」
「わ、私も!」
「詩歌も好きなのか、、、、!」
「うん、、、、!」
「そうなんだ〜、、、、っていうか、いま轟くん詩歌ちゃんのこと詩歌って言ったよね!?」
「ああ」
「なんでかしら?」
「ええと、それは、、、、」
わいわい。ガヤガヤ。
ーー私はそんな会話をしながら、ちらりと思った。
ここでの学校生活、、、、楽しくなるかもしれないな、、、、と。
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