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雨音は、夜になっても止まなかった。
お風呂上がりの目黒は、まだ少し濡れた髪を乾かしきらないまま岩本のベッドに潜り込んでいた。
ふわふわのブランケットの中、岩本の枕に頬を埋めるとほのかに彼の匂いがして胸がくすぐったくなる。
岩本「…れん、まだ髪濡れてる」
あとから寝室に入ってきた岩本が、タオルとドライヤーを持って座り込んだ。
目黒「もういいよ乾かさなくて。めんどくさい」
岩本「めんどくさくても風邪引くって」
朝もこんなやり取りをしたよな、と岩本は思ったがそんなことより今は目黒のことの方が大事だ。
目黒が無言でぷいっと顔を背けると、岩本はくすっと笑いながらその頬にそっと口を寄せた。
岩本「そういうわがまま、俺の前だけにしてくれるのほんと好き」
目黒の耳が赤くなる。
目黒「…ひかるくんうるさい」
岩本「うるさいって、褒めてんのに」
それでも岩本は、やさしく髪を撫でてドライヤーのスイッチを入れた。目黒はふにゃっと力を抜いて、されるがままになる。
しばらくして、ふたりはもう一度ベッドに潜った。さっきよりも距離は近い。いや、もうほとんどくっついていると言っていい。
目黒は岩本の胸に顔を押し当て、指先でシャツの裾をつまんだまま、何も言わない。
岩本「どした? 眠い?」
目黒「…ちがう」
ぽつりとした声。岩本が目を細めて見下ろすと、目黒はそっと目をそらしていた。
目黒「なんか、こうしてると泣きそうになる」
岩本「え?」
目黒「嬉しくて。落ち着くし安心するけど、ずっとこのままでいたくなる」
目黒の声が震えていた。
ふだん人に弱さを見せない目黒が、こんなにも素直に心を見せてくれること。
それがどれだけ尊いか、岩本はよく知っていた。
岩本「れん、」
岩本が名前を呼ぶと、目黒の睫毛が揺れる。
岩本はその目元に、そっと指を添えて微笑んだ。
岩本「大丈夫。明日も明後日も、ずっとこうしてたいならそうするよ」
目黒「…ほんと?」
岩本「うん。何回だって言うけど、俺はれんが好きで、愛してて…全部預けてくれていいって思ってる」
目黒の目から、ぽつりと涙が落ちた。
目黒「……ばか。やさしすぎて、ずるい」
岩本「れんが泣かせたんじゃん」
目黒「ひかるくんが好きすぎて、困る」
岩本は目黒を黙って抱きしめた。強く、でも壊さないようにやさしく。
目黒の肩が小さく震えたあと、静かに落ち着いていくのを感じた。
岩本「寝よっか。今日はいっぱい泣いたし、いっぱい甘えてくれたし」
目黒「うん。寝る。ずっとくっついてて」
岩本「もちろん」
こうしてふたりは、ぬくもりの中で目を閉じた。
雨音はまだ外にあったけれど、もう心の中には何ひとつ、寂しさなんて残っていなかった。
次の日のお話もあるみたいです、w