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「父にも君のことをもっと早く話せば良かったし、彩葉にもキチンと経緯を話しておくべきだった。そうすれば、こんなにも君を苦しめずに済んだ。君が妊娠してどんなに悩んだかと思うと……自分のしたことが許せない。全て曖昧にした俺の責任だ」
「そんなこと……そんなこと決してありません。お願いですからご自分を責めないで下さい。断っていたとはいえ、麗華とのお見合いがはっきり解消になっていない時に、私にどう話せばいいか悩んでくれたんだってわかります。麗華や父の気持ちも大事にしてくれたんだって。それに、私が妊娠するなんて……そんなことわかるはずないですから」
九条さんは首を横に振った。
「俺は情けない。今さら何を言っても言い訳にしかならないとわかってる。だけど、あの時、ちゃんと全てを話して、君を一緒に連れていくべきだった」
お願い、そんな悲しい顔、しないで……
「向こうに行って、仕事を理由にようやく父にも一堂社長にも見合いの話を破談にしてもらえた。でも、その時、何も知らない君は1人で……たった1人で……悔やんでも悔やみきれない」
九条グループの御曹司という重圧に日々向き合ってるだけでも苦しいはずなのに、こんなにも自分を責め続けて……
本当にごめんなさい、私のために……
でも、普段はとても冷静な人が、ここまで自分の苦しい思いを吐露してくれた。
きっと誰にも見せない弱さを、私には見せてくれたんだと思う。
この人の本質的な性格を知ることができた気がして、とても嬉しかった。
九条さんは間違いなく素晴らしい人格者で、見た目だけじゃなく、中身もとても優しくて素敵な人なんだって心から確信した。
「嬉しいです、全て知ることができて。でも、私はあの子を1人で育てると決めました。九条さんには、九条さんに相応しい女性がきっといると思います。私は一堂家の人間であり、一堂家の人間ではないんです。元々は、普通の……」
「そんなことは何も問題じゃない。一堂社長が君のお母さんを選んだように、俺も絶対に家柄なんかで結婚相手を選ばない。好きになったのが、たまたま君……一堂 彩葉だっただけのことだ」
九条さん……
本当にズルいよ、何度も何度も私の胸を熱くさせて。
「俺はずっと長い間、誰も好きになれなかった。恋愛ができなかったという方が正しいのか。なのに、こんなにも誰かを想えるようになれたのは彩葉のおかげだから」
「恋愛が……できなかった?」
「ああ。でも、今はこうして君を……」
恋愛できない……それにはきっと何か深い理由があるに違いないと思った。
もちろん、それがどういうことなのか聞く勇気なんてないけど。
「九条さんが私を想ってくれてるなんて、正直、まだ信じられないです」
「信じてもらわないと困る。これは紛れもない真実なんだから。そうだ、名前聞いていいか?」
「え?」
「俺達の子どもの名前」
俺達……
雪都は、九条さんと私の子ども。
改めてそう言われると、さらにそのことを実感できた。
いいのかな、私、どんどん九条さんのペースに乗せられてる気がする。
「ゆ、雪都……っていいます」
「雪都か。すごく良い名前だ」