テラーノベル
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「今日、泊まっていい?」
若井が、永いキスの後、そう訊いた。僕が返答に困っていると、若井が、ふっ、と笑う、
「一緒に寝るだけ、だめ?」
若井が上目遣いで見てくる。あ、甘えんボーイだ、と僕は思った。
「…わかった、泊まってって。」
「やった!」
若井は、ぎゅーっと、僕を抱きしめた。
順番にお風呂に入って、歯磨きを済ませる。
寝室に行くと、若井が僕があげた新しいパンツと、僕のパジャマを着て、ニコニコして、両手を広げて待っていた。
僕は、この急展開にまだついていけず、おずおずとベッドに上がる。
若井は、僕をそっと抱きしめると、背中をポンポンと叩く。
「別に、いきなり付き合って、なんて言わないから。」
若井が、優しく呟く。僕は、ふと、一番最初に出逢った時の若井を思い出した。僕を拒絶の目で見ていた、前髪長めの男の子。
「…あんなに睨んでたのに、いつの間にこんなに優しくなったんだろ…。」
「ん?」
「ううん、こっちの話。」
「なに。気になる。」
「ん…?いや…若井、最初僕のこと嫌いだったのになぁ、と思って。」
「あー…。」
若井が、懐かしそうに声を出す。
「…だって、涼ちゃん最初キョーレツだったじゃん。」
「えー?そんなことないよ。」
「あるよ、あんなトンチキな格好して。」
「トンチキって!」
「なんだっけ、鯉に白スキニーに赤ベルトだ!」
「もー、覚えてないよ。」
「忘れんな!あんなすげーかっこ!」
「うるさいな!」
二人で、懐かしい、とクスクス笑った。
「…やっぱ、一緒に住んでからかなー、涼ちゃんのホントの良さがわかったの。」
若井が、同居の頃を思い出しているようだ。
「うん、楽しかったね。でも、最初はあんまり乗り気じゃなかったでしょ。」
「そりゃ、どんなに仲良くても、一緒に暮らすのは厳しいでしょ。」
「ホントにね。よく暮らしたね、僕たち。」
若井が、ぎゅっと力を込める。
「また、一緒に暮らしてもいいけど?」
僕が、固まって返事に困ると、若井は力を緩めて笑った。
「うーそ。」
そうして、僕の頭を撫でて、おやすみ、とキスをした。
若井は優しい。このまま、この優しさに甘えてしまって、良いのだろうか。
僕は、モヤモヤとしたものを心に抱えたまま、若井の暖かさの中で眠りについた。
あれから、若井がよく僕を誘ってくれる。僕たちは去年末からFCツアーを回っていて、かなり忙しい期間を過ごしていた。
それでも、時間を見つけては、ご飯を食べに行ったり、休みが重なった日は、ゲームをしたり、楽器を練習したり。
僕たちが自分で考えた、ギターとキーボードの掛け合いのところ、そこを一緒に弾いて、笑い合う。
「俺ここ好きなんだよね〜。」
「僕も。ライブでやると最高に気持ちいいよね。」
「ちょっと、他の掛け合いもやろーよ。」
若井は、いつも笑顔を僕に向けてくれる。僕も、ずっと笑っている。若井と過ごす日々は穏やかで、とても楽しかった。
今日は、ライブの合間を縫って、若井の家に泊まる約束をしていた。お泊まりセットの用意をしている時、ふと、昔、元貴と実家でお泊まりした時を思い出した。新しいパンツで揉めたっけ…と緩く笑う。この前は、若井に新しいパンツあげたしなぁ…。なんか、パンツの思い出ばっかだな、と可笑しくなる。自分の替えの パンツをちゃんと用意して、若井の部屋へ行った。
「いらっしゃい。」
若井が、玄関でハグをする。僕も素直に受け止めて、そのまま、キスをする。
若井は、決して無理強いすることなく、そこまでで止めてくれる。手を引かれて、ソファーに座った。
「何観てたの?」
「ん?お笑い。」
若井が、テレビを消そうとするので、一緒に観ようよ、と止めた。僕たちは、手を繋いだまま、並んでテレビを観て、一緒に笑い合った。
僕は、ふと、ああこれだ、と思った。これが、僕が欲しかった、『普通のお付き合い』なんだ。何気ない日常を、好きな人と過ごす。それが、僕の理想の『恋人同士』ってやつだったんだ。
僕は、横で笑ってる若井を、まじまじと見つめた。僕の視線に気づき、若井もこちらを見る。
「ん?」
優しい笑顔。僕は、なんだか無性に泣きたくなるような、切ないような、そんな愛しさで心がいっぱいになった。
「若井…すき…。」
僕の口から、言葉が零れ落ちる。若井は目を丸くして、固まった。
「ちょ…ちょっと待ってね。」
若井が慌てて、テレビを消す。
「…もっかい言って?」
「…若井が…すき…。」
若井が、泣きそうな顔になって、僕の肩に手を乗せる。
「もっかい…。」
「…若井、すき。」
僕の頬に手を添えて、顔を近づける。
「…もっかい。」
「…若井…す」
最後の言葉は、若井の唇で塞がれた。若井が両手で僕の顔を触って、何度も何度も口付ける。僕も、若井の袖をぎゅっと握って、深くなっていくキスに応えていく。
はぁ、とお互いに熱い息を吐いて、顔を少し離す。
「ホント…?すき…?」
「うん…すき…。」
若井が、ぎゅうっと抱きしめてきた。僕も、腕を背中に回して、ぎゅっと抱きしめ返す。
「…待たせてごめんね。」
「ううん、ううん。」
若井が、何度も首を振る。
「…ありがとう、すっげー嬉しい。」
「…ほんとに、僕でいいの?」
若井は、元々は女の子が恋愛対象のはず。新しい相手が男の僕で本当にいいのだろうか。そこだけが、気になった。
若井が、怒ったような顔で、僕の頬を両手で挟む。
「あのね、今さら。怒るよ。」
「でも…。」
「涼架が、いいの。」
真っ直ぐに見つめて、そう言ってくれた。僕は、泣きそうになりながら、頷く。
「じゃあ、俺と、付き合ってくれる?」
「うん…。よろしくお願いします。」
「〜っ、よっしゃー!!」
若井は大声で喜びながら、首に抱きついてきた。こういうところ、可愛いな、と思う。若井は、僕なんかよりもずっと、素直で。
「かわいい。」
「ん?俺はカッコいい担当だよ?」
「でも、僕の前では甘えんボーイなんでしょ?」
「えへ、うん。」
抱き合いながら、クスクスと笑い合った。若井の優しい温もりを感じる、すごく幸せだ。
「…涼ちゃんは…。」
「ん?」
「…えっちは…苦手なんだよね?」
「えっ…。」
顔が一気に赤くなる。心臓がドキドキして、何も言えない。
「いや、待ちますよ。どこまでも、待ちます。涼ちゃんが、いいよってなるまで。 」
「………嫌じゃ、ない………。」
「…ん?」
若井が身体を離して、顔を覗き込んでくる。僕は俯いたまま、小さい声で言う。
「あの…それだけ、っていうのが、嫌なだけで…ちゃんと気持ちが通じてる…えっちは…嫌じゃない…よ。」
「…俺ら、気持ち、通じてる…?」
若井が、期待の目で僕を見つめる。僕は、小さく頷く。若井の、僕の肩を掴む手に力が込められる。
「…俺、涼ちゃんと、えっちしたい、です。」
「…はい。」
「ずっと、ずっと、したかった。」
「…うん。」
「涼架、抱きます。」
「もういいって!」
顔を真っ赤にしながら、若井の胸を叩く。イタズラな笑顔を浮かべて、僕の手を取る。
「一緒にお風呂入ろ。」
その言葉に、胸がズキッと痛んだ。あの時の、元貴と同じ…。そんなことを思い出してしまう自分がイヤだ。
僕は、過去の思い出を払拭するように、若井を見つめて、頷いた。忘れるんだ、忘れなきゃ。
「涼ちゃん、脱がせて。」
若井が、甘えんボーイ全開で、脱衣所でそう言って待つ。僕は、ドキドキしながら、若井の服のボタンを外す。肩から腕にスルッと下ろすと、ストライプのシャツがパサッと下に落ちる。次は、Tシャツの番だ。
「バンザイして。」
「ばんざーい。」
僕は笑いながら、Tシャツを上へあげる。若井の鍛えた身体が露わになって、僕は視線の向けどころに困った。少し引っかかりながらも頭からスポッと外すと、紅潮して、色気のあるカッコ良さの若井の顔とバッチリ目が合う。つい、恥ずかしくて、下を向いてしまった。
「次、涼ちゃんも。」
「ぼ、僕は自分でやるから良いよ。」
くるっと後ろを向いて、シャツの裾に手を伸ばすと、後ろから若井の手が伸びてきた。
「だーめ。俺がやるの。」
裾から、スル、と若井の手が入ってきて、僕のお腹から胸に向かって滑らせる。
「あっ…。」
「涼ちゃん、肌すべすべー。」
そう言いながら、左手は右腰に、右手は左胸あたりをスリスリと触る。
「ん…ちょ、ちょっと…。」
「…涼ちゃん、やっぱちょっと痩せたね。」
耳元で囁く。僕は首をくねらせて、若井の吐息から耳を遠ざける。若井はそれでも追いかけて、耳や首の後ろにちゅ、ちゅ、と口付ける。胸の突起も指で弄られ、腰のあたりがゾクゾクして、立っていられなくなりそうだった。
「ちょ、と、ホントにストップ…。」
「刺激強すぎ?」
「強すぎ…。」
僕が若井の方を向いて見つめると、若井がいきなりキスをしてきた。何度も角度を変えて、舌も入ってくる。手加減なしの若井の愛が、容赦なく僕に降り注ぐ。
はぁ、と顔を離すと、若井がたまらないと言った表情で僕の頬を手で挟み込む。
「涼ちゃん、エロすぎる〜…。 」
「え、な、なにが…?」
「その顔。めっちゃそそるやん。」
そ、そうなのかな、自分じゃわかんないけど…。
「早く入ろ、我慢できなくなってきた。」
若井が自分のズボンに手をかける。僕は、ハッとした。
「あ、と、トイレ行かないと…。」
「え?」
「その…色々と、準備があるので、こちらには…。」
若井は、察したようで、あ、先に入ってます、と顔を赤くして小さく言った。
「もう俺全部洗ったよ。」
浴室に入ると、髪まで濡れた若井が、湯船に入っていた。僕は、洗い場の椅子に座り、シャワーで頭から洗い始める。
目を瞑って洗っていると、ザバ、と湯船から上がる音がして、いきなり背中を触られた。
「ん?」
「背中洗ったげる。」
「ありがとー。」
僕が頭の泡を流していると、背中を洗う手が、前に移動してきた。
胸をなぞり、おなかを触り、脚まで洗う。
「そ、そこまではいいよぉ、自分で…。」
ヌル、と僕のモノに暖かさを感じた。
「あ、ちょ…!」
「キレイキレイしないとね。」
後ろから若井の楽しそうな声が聞こえる。若井が丁寧に洗うので、僕がその動きに反応してしまう。
「ん…。」
「涼ちゃん…。」
若井が、僕の顔を自分に向けさせて、後ろからキスをする。舌を絡め合い、僕のモノを触り続けた。
「っはぁ…涼ちゃん、見て。」
若井が、目を瞑って応えていた僕に言うので、目を開けると、立っている若井が、自分のモノを僕の目の前に見せていた。それは、大きく反応をして、硬く熱くなっていた。
「めっちゃビンビン。」
「…うん…。」
僕は、男の身体でもこんなに反応してくれるのが、すごく嬉しかった。本当に、僕を好きなんだ、若井は。よかった…。
僕はそのまま、立ち上がっている若井のモノに口を近づけた。
「ん…。」
「ぅわぁー…。きもちー…。」
僕の濡れた髪を撫でながら、若井が少し腰を動かす。じゅぷじゅぷと、水音が響く。僕は吸い上げながら、舌を中で動かす。
「っ…ん…。」
若井から、可愛い声が漏れる。チラッと顔を見ると、頬が上気して、トロンとした目で僕を見ていた。若井が僕の頭を持って、引き離す。ちゅば、と音が鳴って、口から若井のモノが抜かれた。
「あー、めっちゃ気持ちい。ありがと、涼ちゃん。」
「うん、嬉しい。」
「嬉しい?」
「僕で、おっきくなってくれてるのが、嬉しい…。」
若井が、ギュッと抱きつく。
「身体冷た!お風呂入ろ。」
手を繋いで、湯船で背中越しにピッタリくっつく。
「はぁ…あったかい…。」
「ごめんね、身体冷たくなっちゃってたね。」
若井が、僕の肩に顎を乗せて謝る。
「ううん、大丈夫。僕がしたかっただけだから。」
「ん〜、えっち〜♡」
「じゃあもうしない。」
「嘘です嘘です。」
二人でクスクス笑って、若井が耳や首筋にまたキスをくり返す。僕が顔を後ろへ回して、唇を重ねる。若井の手が、僕の胸の突起を摘む。
「ん…っ。」
同時に、下も握られ、お湯の中でゆっくり扱かれる。僕も、若井のを手で触って、二人でお湯が揺れる中、熱い息を交わした。
「あー熱っつ…出よか。」
若井が、興奮冷めやらぬ表情で、僕に促す。
「先に上がっといて。」
若井を先に上がらせ、僕は洗い場で、ボディーソープを使って少し孔を綺麗にしつつ、解しておいた。若井と、これから、するのか…。初めてじゃ無いのに、すごく緊張する。
不意に、頭の中を、僕の孔を時間をかけて少しずつ解してくれていた時の、元貴との幸せな時間が過ぎった。僕はブンブンと頭を強く振って、最後に熱いシャワーを浴びて、外へ出た。
コメント
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ホワンジだよなー…と思いを馳せつつ🤤 想いが通じ合っていちゃラブ回なのに、私はずっと切なく感じてしまいました💦 💙さん💛ちゃんを信じたい気持ちと心のどこかて本当はわかってるから早く自分のモノにしたくなったのかなって私が思ってしまうからかなと…(私は知っている。人間臭い人に惹かれた人は最終的にスパダリに本気で惹かれないことを笑) あ、お口で躊躇いたくできるのはオトナになったなと思いました🤣
初コメ失礼致します🙇♀️ イチャイチャの中に切ない感じが混ざってて、にやにやハラハラしながら読ませて頂きました🫣 甘えんボーイの無邪気な感じが、えぇですね…経験済みなのに初心な💛さんの反応が好きです✨️ 続き、正座してまってます!
手加減なしの💙の愛情、良すぎます🤭✨ でも所々で♥️くんを思い出す💛ちゃんもいて🥲 幸せで、ちょっと切なくて、でも甘々で💕 満たされました〜🙏✨続き、楽しみにしてます!いつも素敵なお話ありがとうございます🍏