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花崎望を殺した日から数日後、東本と紅上は残りの
11人について話していた。
「次は誰にする?」
「そうだな、じゃあ医学部のやつにするか」
「…前も思ったんだが、こんなノリで決めていいのか?一応殺人なんだぞ?」
「自分の手を汚してないお前には言われたくないな」
「まあ…そう言われたら何も言えないけど」
*
医学部に所属する中山静香は、名前の通りもの静かで
端から見ればザ・優等生といった人物であった。
その評価を覆すことなく、彼女は必死に勉強し夢だった医学部に入ることが出来たのだ。
しかし、どんな人間でも娯楽を求めてしまうものだ。
静香は、それが恋愛に向いてしまった。それだけだった。
彼女は本がとても好きで、特に恋愛小説が好きだった。
現実ではありえないような甘い甘い口説き文句が、静香の周りを包み込む。
その時間だけは、静香は優等生の仮面を外せたのだ。
そんな静香に転機が訪れる。
東本に出会った。彼は恋愛小説のような甘い甘い言葉で静香を誘惑してきた。
優等生が嫌いになっていた静香は、ただの女として自分を見てくれている東本のことが好きになってしまっていた。
やがて東本と恋人になった静香はつかの間の幸せを感じていたが、ある日突然東本に別れを切り出された。
そのことがショックすぎて理由なんて覚えていない。
ただ、きっと静香に非があるのだろうと、心の内で思っている。
私みたいな暗い女には、キラキラした東本くんはお似合いじゃなかったのだろうと。
*
「はぁ…」
静香は、大学近くのベンチに座り恋愛小説を読んでいた。
しかし、内容がどうも頭に入ってこない。
東本と別れてからずっとそうだ。
現実を知ってしまっては、フィクションの作り物の幸せでは満足出来ないのだろうか。
「……!?」
酸素が減った気がする。
いや、確実に息が出来づらくなっている。
声も出せない。苦しい。肺の辺りが痛い。
この時、静香は初めて自分の状況を理解した。
首を絞められている。
更に、口にタオルのような物を押し当てられている。
それが分かると、やっと逃げないといけないと理解し、手足をバタバタ動かし必死に抵抗した。
しかし、あまりにも抵抗するのが遅すぎた。
段々と肺の中の酸素がなくなっていくのが分かり、次第に静香は抵抗をやめた。
どうして私は殺されかけているのだろう。自分の命がもう消えかけているというのに、静香はそれだけを考えていた。
恨みを買うようなことはしていないと思うが、やはり東本くん関連だろうか。
「私の方が東本くんにお似合い」?
「私の東本くんを汚すな」?
静香は女性の中でも力が弱く身長も低い。
女性でも難なく殺せるだろう。
しかしまあ、不思議なことに東本くんの取り合いになると、何故だか勝ちたくなってくるのだ。
負けることは目に見えているのに。静香より話が面白い人も、顔が可愛い人も、スタイルがいい人も沢山いる。
でも東本くんは私を選んでくれた。私が東本くんの一番だから…
やっと理解した。
静香は結局、東本のことがとても好きなのだ。
諦めきれないのだ。
これが恋愛小説なら、ここから恋が始まるのかな…
持っていた恋愛小説を落とし、静香は命を絶たれた。
*
「お、紅上…あれは成功したのか?」
静香殺害から翌日、東本と紅上は大学にて再開した。
「ああ。あと10人だな」
「先が長いな…でも、案外楽勝じゃね?」
紅上は軽くかぶりを振った。
「そんなことはない。難易度が易しいやつから順番に殺していってるからな」
「難易度…そんなんも考えてるのか」
「当たり前だ。順番も重要だからな」
「へぇ…」
「今までの二人をレベル1とすると、ここからレベル2くらいにはなるな。一人でいる時間が前二人と比べ少なくなる」
「一人でいる時間すらも調べれるのか?それも…金持ちパワー?」
「…まあ、そういうことにしておこう」