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12件
モブリットの話もそこまで変えたところはないので割愛します。 私の友達の実体験を元にしています。
ハンジの話の元ネタについて、このコメントの返信欄に書いておきます
ニファの話はほとんど同じなので書きません。 私の母の実体験を元にしています。
私達は、徹夜で書類の山の相手をしていた。
ニファが眠りそうになったあたりで、ハンジ分隊長がある提案をする。
『みんなで怖い話をして、眠気を紛らわせよう!』
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Vol.1 アーベルの話
【馬術訓練にて】
オレはその日、新兵に馬術訓練をする手伝いをしていた。
どこかで落馬している兵士がいないか、馬でそこらへんを見回る役だ。
新兵とはいえ、落馬するやつはあまりいなかった。
暇を持て余していると、地面に座り込んでいる少女を見つけた。
調査兵団のジャケットを着ていたので、落馬した兵士だろうと思い、
オレはすぐに馬で近付き声をかけた。
「君、大丈夫か?馬は?」
「…」
「名前は?」
そう聞いた後に、思い出した。
馬術訓練の班に金髪の女性兵士はいなかった。
なら、コイツは誰だ?
そう思った時には、もう遅かった。
抉れて原型もない顔で、女性兵士はオレを見つめてくる。
「ぅ、ま。馬、どこか、ィっちゃッた」
「…!」
人は、本当に驚いた時には声も出せないものだ。
すぐ後ろで聞こえた馬のいななきで、現実に引き戻される。
気付いた時には、もう女性兵士はいなかった。
今思うと、訓練兵団のジャケットではなく
調査兵団のジャケットを着ている時点で、異変に気付くべきだった。
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視界の端で、ものすごい速度で震えているニファが見えた。
あまり怯えさせてはいけないと、私は彼女に話しかける。
「どうせ嘘だよ、こいつ嘘しか言わないからな」
「はぁ!?マジなんだって!やばかったよ、顔がグッチャァってなってて…」
「ひ、ひぃぃ…」
「おい、だからあまりニファを怖がらせるな…」
分隊長といえば、初っ端から面白い!とか言いながら上機嫌で紅茶を飲んでいる。
紅茶を飲む暇があるなら、是非手を動かしてほしいと思うのだが。
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Vol.2 ケイジの話
【買い出しにて】
その日、おれはハンジ分隊長に頼まれ買い出しに行っていた。
なんの変哲もない、いつもの街。
あんなものを見なければ、多分いつも通りに過ごせていた。
風が冷たくて、早く戻りたいという一心で足早に歩いていた。
ふと、ある家の物置小屋に尋常じゃない数のカラスがいるのを見つける。
「(何かあったのだろうか…)」
そう思い、歩きながら横目で物置小屋を見る。
首を吊っている死体があった。
もうカラスに大部分を食い散らかされており、原型はない。
近くの駐屯兵に伝えに行こう。
そう思った瞬間、死体がゆらゆら揺れながら顔をこちらに向ける。
目が合った。
その死体の目は、死人のものとは思えないほど生き生きとしていた。
おれは気味が悪くなり、さっきよりも速く歩いた。
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、やっと研究室に戻れた。
部屋は全員出払っているらしく、しんと静まりかえっている。
だが、おれにとって安心出来る場所であることに変わりはない。
すっかり疲れ、ソファに倒れ込むように眠った。
「目、ァったょね」
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「あー、あの日か!ケイジが妙に疲れてた日!」
「お言葉ですが分隊長、ケイジはいつも疲れてますよ」
「あんたのせいですね」
納得したようにそう言った分隊長に、私とアーベルがすかさずツッコむ。
ケイジが妙に疲れてた日、分隊長がどの日のことを指しているのかは分からないが
彼は大体いつも疲れている。
「つ、次…私、いいですか?」
そう、震えながらニファが手を挙げた。
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Vol.3 ニファの話
【兵舎にて】
私はまだ、訓練兵だった。
慣れない対人格闘訓練で体力を擦り減らし、
私 はすぐに自室で死んだように眠った。
真夜中、草木も眠る丑三つ時。
窓を、爪で引っ掻くような音で目が覚めた。
「(なんだろう…)」
窓を見ると、裸の少女が窓を引っ掻いている。
その少女は、私に気付くと嬉しそうな顔で話す。
「わぁ!可愛い女の子!ねぇ、服を貸してくれない?」
可愛い女の子と言われたことは嬉しかったが、
あいにく今は私服を全て洗濯に出してしまっていた。
「ごめんね、今全部洗濯に出しちゃってて…あ、知り合いのを持ってこようか?」
「ふぅん、それならいいわ。じゃあね」
そう言って、少女は目の前で消えてしまった。
あまりに人間らしすぎて気づかなかったが、少女は恐らく幽霊だった。
だって、ここは三階だ。足場も無い。
窓なんて、引っ掻けるわけがない。
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ニファは嘘をつかないだろうという信頼がある分、
彼女の話は恐ろしく感じられた。
「幽霊って人間味ある方が怖いよな。なんか強そう」
「感想が小並すぎるだろ」
ふと、首元に悪寒が走る。
やはり、怖い話など面白半分でやるものではない。
「(来た、な…)」
そんなこともつゆ知らず、分隊長が意気揚々と話し始める。
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Vol.4 ハンジの話
【何回も何回も】
私は、よく殺される夢を見る。
兵士という職業柄、よくあることではあるが。
だがその夢の内容がなんとも不愉快なのだ。
殺されても、また何事もなかったかのように
夢の続きが始まる。
まるで、何回も繰り返しているようだ。
殺されることに変わりはない。
何回も繰り返して、何回も殺される。
今日もそんな夢を見て、じっとりとした変な汗に
不快感を覚えながら私は上半身を起こす。
すると、扉をノックする音が聞こえた。
「分隊長?扉を開けてくれませんか?」
モブリットの声だ。何かあったのだろうか?
書類に不備があった、などとなれば早く直さなければならない。
そう思い、私はすぐに扉を開ける。
「分隊長、ありがとうございます。死んでください」
「…え?」
気付いた時には、私の腹には包丁が深く突き刺さっている。
なぜ。なぜ彼がこんなことを。
いや違う。これはモブリットじゃない。
これは…
「分隊長、まだ生きてるんですか?」
先程まで包丁が刺さっていたとは思えない、何事もなかったような腹を
もう一度刺される。
やはりこれは夢だ。だが、普段のものよりタチが悪い。
知人の、私の大切な部下の顔を使うだなんて。
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「それで、夜が明けるまで延々とモブリットに殺されて続けたよ…」
「そりゃ私には、日頃の恨みがありますからね」
「ごめんモブリット…」
いよいよ、次は私が話さなければならない番だ。
このまま怪談語りを続けたらどうなるのか。
正直ここでやめておいた方がいいのかもしれない。
だが、私は他の奴らの期待の眼差しにあてられ
渋々とっておきの話をすることにした。
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Vol.5 モブリットの話
【身体を貸して】
昔、廊下で自分とそっくりな女性兵士と会った。
他人の空似とは思えないほどに、私とその兵士は似ていた。
だが、その兵士はすぐに死んでしまった。
彼女が私の夢に出てくるようになったのも、そこからだ。
毎晩私の枕元を徘徊し、囁いてくる。
「身体、貸して?」
最初は丁寧に断っていたが、流石に毎晩となると
次第に返事をする気も失せて、最終的には無視するようになった。
だが彼女はめげることもなく毎晩やってくる。
「身体、貸しテ?」
…何か妙だ。こいつの首はこんなに曲がっていただろうか。
不自然なほどに、首が曲がっている。
それでも断り続けると、段々とその違和感は大きくなっていった。
首は折れ曲がったようになり、膝の骨は剥き出しになり、
不自然な笑みを浮かべている。
「かラだ、かシテ?」
「いやダよ、ドんどん、わタしが、ワたしじゃ、なくなッて」
そこで、彼女が身体を貸してほしいと言った意味が分かった。
日を重ねるごとに、どんどん 悍ましい姿になっていく自分が怖かったのだ。
可哀想だとは思うが、それが身体を貸す理由にはならない。
「すまないが、身体は貸せない」
「…ゴ、めんネ」
その日を境に、彼女は来なくなった。
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私が話し終わった瞬間、足首を掴まれる。
驚いて下を見ると、白い手が私の足首を掴んでいるのが見えた。
「モブリット?どうした?」
アーベルが私の顔を覗き込んでそう言う。
こいつは、私の変化にはとても鋭い。
そう思っている間にも、足首を掴む力は強くなっていく。
「…っ!」
ついに堪えきれなくなり、私は声を出してしまう。
その瞬間、白い手は消えていった。
「…モブリット?どうしたの?」
「……あの…さっき白い手に足首を掴まれていた、とか言ったら。どうしますか?」
「やっぱりそうなんだ」
分隊長たちが、一斉に顔を見合わせる。
「モブリットの周りに、なんか見えるんだよ。
金髪で顔の原型が無い女性兵士と、死体とは思えない目をした男と、
裸の少女と…首が変な方向に曲がっててずっと笑ってる、モブリットそっくりの女性兵士」
やはり、怖い話なんてするべきではない。
気温がすっかり下がった室内で、うるさい耳鳴りを聞きながらそう思った。