俺は中原中也だ。今、太宰の野郎が溜まりに溜めた仕事を片している最中。太宰の野郎はその仕事を放ったらかしにしながら部下の構成員と楽しそうに会話をしかも俺の目の前でしてやがる。普通にそれだけでも腹が立つが、それよりも、、、あの構成員あまりにも下心が見えすぎている。
彼奴は俺のだってのに太宰に媚び売りやがって、ムカつく
太宰がそんな下心見え見えに気づいてないわけがねぇ、絶対あれ無視するの面倒いからだろ!
、、糞っ、気になって仕事もろくに進まねぇ。
できるだけ仕事に集中しようと資料を見るも耳に入ってくる話し声にどうしても聞き耳を立ててしまう。
「ところで太宰さん!今日の任務も素晴らしい指示でしたね!本当に尊敬します!」
「ん?嗚呼ありがとう。」
「どうやったらあんな風に的確に指示ができるんですか?良ければこの後教えて頂けませんか?」
「あー、ごめんねぇ。今日用事があってね」
「そうなんすかぁ、、じゃあ今教えてください!」
「んー、良いよー」
「取り敢えず外出ましょう!ここで話すのもあれなんで!」
「そーだねぇ。」
と言いながら太宰と其奴は執務室を出ていった。
俺はそのドアを見つめながらイライラとした気持ちをどうにかせんとデスクに向かって頭突きをする。
でもそれでも一向に収まらず取り敢えず溜まった仕事をしようと資料を見るが全く捗らない。
「くそっ、、、」
とデスクに突っ伏す。どうしようもないこの気持ち何処にぶつけようかと考えていると話が終わったのか太宰が戻ってきた。
怒りの原因でもある太宰をジッと睨むとそれに気づいた太宰は
「中也、どうしたの?」
と聞いてくる。
それに少しイラッとして
「あ?別になんでもねぇよ」
と怒りを込めて言う。それでもキョトンとした表情で俺を見つめる。
「なんで怒ってるの?僕、なんか悪いことした?」
その本気で分からないという態度に更にイライラし、俺は椅子から立ち上がり、執務室を出ていこうすると太宰も後を着いてくる。
「なんで着いてくんだよ」
「え?なんで?駄目なの?」
此奴っ、、、
ますますイライラが増した俺は
「着いてくんじゃねぇよ!」
と怒鳴り、腕に巻き付いていた手を振りほどいて執務室を出た。
バンッと派手な音が執務室に響く。
振りほどかれた行き場の無い手をそろそろと降ろし、傍にあるソファに腰掛け、はぁと息を吐く。
「中也は何をあんなに怒っていたんだろ、、、」
顎に手を当て、少し考えてみる。
ふと、さっきのあの鬱陶しい構成員のことを思い出した。
たしかここで話をしてて、その時中也は此処で僕が溜めた仕事を片していたときだったようなぁ、、、
「真逆、、、嫉妬?、、、」
確かにあの構成員やたらと僕に話しかけてくるし、前々から鬱陶しいとは思っていたけど、今日も話しかけて来て無視するのも面倒で適当に返答していたけどそれが気に食わなかったのかな?
「、、、いやでも、中也が嫉妬なんてするのかなぁ?」
考えれば考えるほど面倒になってきた。大体、悪いのはあの鬱陶しい構成員なんだから僕に逆ギレする方がおかしいのだ。それに、、何もあんな風に怒鳴らなくても良いじゃないか。なんだか、僕イライラしてきた。
「もうっ!なんなのさ!中也の莫ぁ迦っ!」
と誰も居ないこの執務室で思いっ切り叫び、ゴロンとソファの上に寝転がる。
「莫ぁ迦、莫ぁ迦」と連呼していると、ドアをノックする音が聞こえた。僕は「よっ」と起き上がって
「入っていいよー」
と言うと、ゆっくりとドアが開く。
「誰かと思ったら、姐さんじゃん。」
「お主の声が廊下まで聞こえておったからの、気になって来ちまったのさ。」
と言いながら向かいの1人用の椅子に腰掛ける。
「それで、中也と喧嘩でもしたのかえ?」
「僕は悪くないのだよ?!中也が勝手に怒ってるだけ!僕は悪くない!ちっともね!」
「ほぅ、それは本当かのぉ?なら何故中也は怒っておるのだ?」
「さぁねっ、僕はただ構成員と話をしていただけだよ。それで戻ってきたらいきなり睨まれて怒鳴られて、、意味がわからないよ全く、、」
とソファの背凭れにドカッと凭れ、はぁと溜息をつく。
仮に、中也が構成員に対して嫉妬心を抱いていたとしても、僕があんな風に怒鳴られる理由がない。
「だから僕は悪くないの」
とまた同じ言葉を姐さんに向けて言った。
「ふむ、なるほどのぉ、何となくじゃが中也が怒った原因が分かった気がするのぉ。」
と何故かニコニコと嬉しそうにしている。
「原因って?」
「んふふ、ヤキモチを焼いておるのだよ。嫉妬じゃ嫉妬。」
と心底嬉しそうにいやどちらかというと面白いものを見たみたいにニヤニヤとしながら言う。
「えぇ〜、あの中也がぁ?嫉妬なんてする??」
「そりゃするじゃろ。何せ好きな人が他の人と楽しそうに話をしていたら嫉妬くらいするに決まっておる。」
「、、、そうゆうものなの?」
「そうゆうものじゃよ。恋人というものはのぉ。」
「ふーん、、、。」
もし本当に嫉妬していたのであれば、僕のさっきの態度ものすごく悪かったのでは?なんだか不安になってきた。
と少し前の僕を思い出して、罪悪感を感じる。
「この後中也に会いに行ったらどうじゃ?それとも、会うのは嫌なのかえ?」
と姐さんが優しく微笑んで聞いてきた。
「でも、僕、、、会ってどうやって仲直りすれば良いのか分かんない。」
「なんじゃそんなことか、そんなの決まっておるだろ?
━━━━━━━━━━━じゃ。」
「本当に?それで本当に仲直り出来るの?なんか不安なんだけど」
「大丈夫じゃ、大丈夫じゃ」
そう言う姐さんを見て更に不安気になってきた。
まぁ、でも一応試してみるか。
やってしまった。
ついイライラして太宰に逆ギレをしてしまった。
絶対嫌われた。
手を振りほどいた時の太宰の顔をはっきりと見てはいなかったが絶対傷ついた顔をしていたはず。
俺の人生ジ・エンド。
太宰の手を振りほどいて執務室を出て廊下の突き当りまで歩いた後物凄い罪悪感に見舞われ、肩を落としてとぼとぼと歩いている。
偶にすれ違う構成員達が俺の顔を見て心配そうにこちらを見る。今の俺は水を何日も飲まなかったようにやつれた顔をしているのだろう。
とぼとぼとやけに長い廊下ずっと歩いているが、何処に行こうとしているのか自分でも分からない。
取り敢えず何処かに行こう。何処か、何処か
「あ、」
と立ち止まった場所は医務室。
「ここなら、いいか」
どうせ、誰も居ねぇし
といつもは重くない医務室をドアを開ける。
「あれ、中也君、どうしたんだい?怪我でもしたのかい?ていうか、珍しいね君が医務室に来るなんて」
そこに居たのはこの組織の首領、とエリス嬢
「あっ、すいません首領。」
「良いよ別に、それで、どうしたんだい?なんだか太宰君と喧嘩でもしたかのようだね?」
「えっ、何故?」
「あれ、真逆当たってた?」
と勘で言ったらしい首領は心底面白そうににっこりと笑う。
俺からしたらもう太宰に嫌われたかもという不安もある何も面白くは無いのだ。
「いや、まぁ今回は俺が全体的に悪いんです。」
「ふぅん、珍しいこともあるんだねぇ。で、太宰君はどうしたんだい?」
「あ、いやその太宰は執務室に」
「なるほどね、、、でも君のその不安な気持ちは気にしなくて大丈夫だよ」
「な、何故です?」
「何故って、、、其れは帰ってからのお楽しみだよ?」
とバチッとウインクをする首領を見ながら
余計に不安になってきた
と思った。
結局太宰と1度も会わずに帰宅してしまった。
本当に嫌われたのでは?連絡も無いし、ましてや1度もすれ違わないことなんてあるのか?態と避けられているという可能性もある。
「俺の莫迦野郎っ、、、。」
と1人頭を抱えていると、誰かがドアをノックする音が聞こえた。
「、、、誰だ?」
インターホンの所からそっと覗く
『開けて』
ドアをノックしたのは太宰だった。
急いでドアを開けに急ぐ。
「太宰っ、、、!」
ドアを開ければ目の前には今日ずっと会いたいと思っていた太宰が居た。
服は部屋着だろうかショートパンツにオーバーサイズのTシャツを着ていた。くそかわ。そんな細い足出して他のやつに襲われたらどうすんだよ!
とくだらない事を考えていると
「中也」
と呼ばれ、ハッとする。
早く謝らなければ、、、
「俺今日、、!」
「そんなことより中入れて?」
「あっ、お、おう。」
太宰の言う通りに中に入れる。
正直、物凄く怖い。何を言われるのか、もし太宰の口から「別れよ」なんて言葉が出てきたら俺は、どうすれば、、、。
リビングに着くと太宰は真っ先にソファに座り、真っ直ぐ俺を見つめる。しかも真剣な顔で
あ、終わった。
「中也、、、」
「あ、、、ちょっと待て!俺はまだ、手前と別れたくねぇ!」
それ以上何も喋るなと手を前にして太宰の次の言葉を遮った。すると太宰はキョトンとして
「なんの事?」
と言った。
「は?、、え?」
「え?」
「手前は、、、俺と、別れたいんじゃねぇの?」
「、、は?なんで僕が中也と別れなきゃいけないの?」
とムッとした表情で予想外の言葉が返ってきた。
その言葉にホッとした俺は
「じゃあ、なんで家来たんだ?」
と聞くと、太宰は俯きモジモジしながらボソボソと喋りだした。
「僕今日、中也に酷いことをしたんじゃないかと思って」
「いや、其れは、こっちのセリフで、、、」
「だからね、今日ね、中也が帰ってきたら、、、い、いっぱい甘やかしてあげようかと、思ったの。」
と顔を真っ赤にしながら俺の事を真っ直ぐに見据えて言った。
てっきり、凄く嫌われていると思っていた。それどころかもう顔も合わせてくれないと、俺が帰ってくるのを待ってた?じゃあ会えなかったのも先に帰ってて、心の準備をしてたってことか?なんだそれ、、、天使かよ。
「、、、怒ってねぇの?」
「別に、怒ってないよ、、、。」
「なぁ、、、甘やかしてくれるって、なんでもお願い聞いてくれたりするってことだよな?」
「え、、、う、うん」
「じゃあ、膝枕して」
「え、そんなのでいいの?、、、」
「嗚呼」
「じゃあ、」
と太ももの上をトントンと叩く。
その柔らかそうな太ももに顔を沈めると吃驚したのか太宰が肩を揺らす。
「えっ、、あ、そういう感じ?」
しばらく無言でそうしてると、ふわっと太宰が頭を撫でてきた。ゆっくりゆっくりと撫でてくれる、それがとても心地よかった。体制を変え、太宰の方に顔を向けそのまま腰に手を回しぎゅっとする。
「今日、太宰が構成員と、楽しそうに話してて、、ムカついた。」
「うん。」
「彼奴、絶対、手前に下心あるし、、、。太宰も、気づいてただろ、なのに普通に接してて、ムカついた。」
「、、だって、無駄に無視すると余計面倒くさくなると思ったから、、。」
「それがダメなんだろ?、、、そういうところだぞ」
「、、分かった、、、でもあんな風に怒鳴らなくても、、、」
「それは、ごめん。あと手、無理やり振りほどいて」
「、、うん」
と太宰が呟くとまた無言が続く、ゆっくりと顔を上げると太宰は今にも泣きそうな顔をしていた。
そっと頬に手を伸ばす。
「泣くなよ、、、悪かった」
「、、、〜〜っ泣いてないもんっ!」
と言いながらポロポロと涙を流す。
その姿に少し可愛いとも思ってしまった。
太宰の膝から起き上がり、太宰の頭を撫で慰める。
「、、、なぁ、これってまだ、お願い聞いてくれるんだよな?」
「ぐすっ、、、え?ま、まぁ、、、中也の気が済むまでなら、、」
「じゃあ、抱かせろ」
「え?」
ドサッと太宰を押し倒す。驚きで涙が完全に引っ込んだ太宰は俺を見る。
「じゃ、いただきます。」
「えっ!ちょ、、待っ、あっ、んっ、、、せめてベットでぇ〜!」
と叫ぶ太宰唇を奪い、黙らせた。
「今夜は寝かせねぇぞ?」
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「おや?太宰じゃないか。どうしたのじゃ?疲れた顔をして」
「あ、、姐さん。」
「どうやら、昨日は上手くいったようじゃな。さっき中也とすれ違ったが、随分ご機嫌だったぞ?」
「、、あはは、まぁ、、、。ねぇ、姐さん。」
「?なんじゃ」
「僕、甘やかすの得意じゃないや、、、。」
と言い、太宰は不気味な笑みを浮かべながら去っていた。
「、、、中也に少し話を聞いてみるとするかのぉ」
終
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