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私には悩みがある。
それは…
中也がなかなか私に手を出してこないことである。手を出してこないというのは性行為の事。
そう、全くもって手を出してこないのである。付き合ってかれこれ3ヶ月を経とうとしているというのにだよ
然も!もう私達も18という充分な年齢に達しているというのに!
もちろん私は中也にアピールをしまくっている。でも中也は其れを軽々と躱すのだ。
何故?と考えても行き着くのは嫌な思考。
若しや私には魅力が無いのでは?それとも、たんに私とそういう事をしたくないのかもしれない。
そうとならば、私とそういう事をしたくなるような魅力を身に付ける必要があるのだ。また、仕掛けるしかない。
何を仕掛けようかと考えていると、ある方法を思いついた。これなら、中也もその気になってくれるはず。
「よし!」
その方法を成功させる為に私はスマホを片手にある物を調べるのだった。
5…4…3…
と心の中で数える。最後の0という声と共にガチャと目の前のドアから鍵が開けられる音がし、ドアが開く。
待っていたと言わんばかり私は
「おかえりっ!!!」
と大きな声で云う。目の前の人物はさぞ鬱陶しそうに耳を塞ぐ。
「っうるっせぇ!!デケェ声出すなぁ!てゆうか来るなら連絡しろって何度も..言っ…て」
私と同じくらいの声量で喋っていたのにも関わらず、私の格好を見て吃驚したのか最後の方は途切れ途切れになっていた。
そう、今私の格好は所謂メイド服というものであった。
私はその格好でぶりっ子ポーズをしてみせる。
「どうだい?通販でいい物があったから買って着てみたのだけど」
と聞くが、中也は何も言わない。
おや?結構効果があったのでは?
と思い、若干顔がニヤつく。
しばらくの間動かなかった中也がいきなり動き出し、体をビクッとさせる。
靴を脱ぎ、此方に向かってくる。其れを見て瞬時に理解し
体を硬直させて目を瞑る。
だが……何も起こらなかった。
中也は何も言わずに私の横を素通りして洗面所に向かった。
「…」
そこで分かった。私は…拒絶されたのだ。と
その事実を知った瞬間駄目なことをしたなと思った。
最初から中也は私に伝えていたじゃないか。ずっと、私のアピールを態と無視してまで拒絶していたのに。其れに気づきもしなかったなんて…。
「っぅ……ぅぅ…」
自然と涙を流してしまった。何度も何度も拭ってもポロポロと出続ける涙は床にポタポタと落ちていく。
洗面所の方から何やら物音がし、慌てて目を擦り涙を引っ込めた。
「太宰?…」
と私の名前を呼びながら出てきた中也は風呂に入ったのか髪の毛が濡れていた。
「あ、中也お風呂入ってたの?」
「…あ、嗚呼」
と目を逸らしぎこちなく返事をする。
そんなに嫌なのか私の格好が。
私は俯きながら
「ごめん、今日やっぱり帰るね」
と無理やり笑顔を作って見せた。
「は?おい」
と言う中也を無視して、足早に玄関に向かいドアノブに手をかけるが、その手を中也に握られる。
「待てよ」
「……なんで?私、今日用事があって」
「こんな夜に用事なんてあるかよ」
中也にしてはまともな事を言うなと関係の無いことを考えてしまう。付け足すかのように中也はまた口を開く。
「其れに手前…泣いてただろ。」
「…そ、其れが何?」
「目赤くなってた。……泣いてたの俺の所為、だよな」
「っ!、違う!中也の所為じゃないよ…」
と思わず振り返る。そこには苦虫を噛み潰したような顔をした中也が居た。
「否、俺の所為だ」
「違うよ!中也じゃない。私が悪いから…」
「其れこそ違うだろ、俺の所為だ。」
「だから、違うって!」
「否、俺の所為だ!」
とどちらとも譲らず、どんどんエスカレートしていく。
「だから私の所為だってばっ!中也じゃないのっ!」
「俺の所為だよ!!手前じゃねぇ!!」
「〜っ、莫迦じゃないのっ!」
「はぁ?!手前こそ莫迦だろぉが!」
とそこで2人は言い合うのを辞め、息を整える。
「はぁ、てゆうか手前はなんで泣いてたんだよ。」
と中也に確認するように聞かれる。思わずビクッと体を揺らす。
「そ、其れは…」
いざ聞かれると言葉に詰まってしまう。
だって、言えるわけないじゃないか。手を出してくれなかったからなんて恥ずかしい事言えない。
「…言えねぇのか。」
そう言うと、中也はため息を付く。
どうしよう。怒らせてしまったかもしれない。私が余りにも我儘だから、中也には嫌われたくないのに。
そう考えるとまた、涙が溢れてきた。
「…ふぅぅ…ぐすっ」
「な?!太宰?どうしたんだよ!」
突然泣き出した私を見て中也はあたふたと戸惑っていた。
とりあえず落ち着かせるためになのか背中を撫でてくれた。そうすると、余計に泣きたくなる。
「うぅっ…ひっくぅ……」
「……あー、取り敢えずここじゃあれだしよ、座ろうぜ?な?」
と優しく声を掛けてくれる。私は其の言葉に頷き、ゆっくりと2人でソファに座る。中也は未だ泣き止まない私を心配そうに見てくる。
早く涙を引っ込めないと、嫌われちゃう。
と思い、ゴシゴシと目を擦る。
「あ、おい…!そんなに目擦んな、目が赤くなんだろ?」
と擦っていた手を取られる。それでも未だ涙は収まらない。
「怒ってねぇから、なんで泣いてたかくらい教えてくれよ。」
その声に反応して顔を上げる。そこにはとても優しい顔をした中也が私を見つめていた。その表情に思わず顔を赤くする。
「照れてんのか?」
「なっ!て、照れてないし…」
赤い顔を見られたくなくて顔を下に向ければ
「太宰、こっち向けよ」
優しく言われ、少し恥ずかしがりながら顔を上げる。
「泣いてた理由、聞かせてくれ。怒らないし、嫌いにならねぇから」
「…分かった。……あ、あのね」
「おう」
「ま、先ず、この格好してたのはね、中也にね、手を出して欲しかったから、なの……。そ、それで、泣いてたのは、中也にこの格好してたの、無視された、って思ったから、、なの。」
と一通り言い終わると同時にゴキっと、鈍い音が鳴った。
見ると、中也が後ろに首が折れそうな程にのけぞっていた。
「ちゅ、中也?」
「…あ、悪ぃ。てゆうかまじかよ、ほんと無理。俺の恋人可愛すぎる。まじでやべぇよ、破壊力やべぇよ。てか、抑俺のせいじゃねぇか。やべぇ、これは抱かなきゃ許されないやつだ。ほんとごめん太宰。」
と何やら訳の分からないことを言ったあと最後に謝ってきた。
「ご、ごめんね。中也はこんな私とそういうことなんかなしたくないはずなのに。」
「…はぁ?俺がいつそんなこと言ったんだよ。」
「え?だ、だって中也私が何かアピールしたら軽々と躱してたから。…だからしたくないのかと」
と言うと、「あ」と思い出したのか眉間に皺が寄る。
「否、あれは、うんまじでごめん。したくないなんて思うわけねぇだろ?」
「じゃあ、なんで態と躱したの?」
と聞けば、気まずそうに目を逸らす。ムッとして脇腹をつつけば「やめろやめろ」と手を退かされる。
「私は全部言ったのに、なんで中也は言ってくれないの!」
そう言えば観念したのかはぁ、とため息をつく。
「…違ぇんだよ。したくないわけじゃねぇんだよ。寧ろヤリたいくらいなんだよ。けど、そしたら自分で歯止めが効かなくなって優しくなんて到底無理だし、手前可愛いし。
だから、態と躱してた。…悪かった。」
「そ、そうだったの?」
その理由を聞いてホッとする。
「良かった。…嫌われてなくて。」
中也はちゃんと私とそういう事をしたかったんだ。其れがわかって私は嬉しくなりふふっと笑っていると突然中也が私の肩を掴んできた。
「ど、どうしたの?」
「そんなことよりさっきから思ってたんだけよ、…その格好、まじでクる。」
「え?」
自分の身に付けている服を見て、顔が真っ赤になる。
忘れていた。中也をその気にさせるために買ったメイド服を着ていたことを。中也の顔を見れば、獲物を捉えたかのような目をしていた。今すぐに食べ尽くすとでも言うばかりに、その目を見て一気に血の気が引く。
「あー、私お風呂入ってこよーかなっ!?!!」
言い終わる前に中也に思いっきり押し倒される。
「手前が仕掛けたんだからな」
とギラギラとした目を向けられ、思わず怯む。
足を撫でられ、ビクッと体を震わせる。
「存分に可愛がってやるからな?」
私の腰無事死亡のお知らせが届いた。
おしまい。