鬼の体が紙細工のようにバラバラになって崩壊する。
 「…○○は?」
 甘露寺さんに向ってそう問いかけ、それに続く言葉を待った。
 「……」
 だけど欲しかった言葉はいくら待っても耳に入り込んではくれなかった。
甘露寺さんは鮮やかな黄緑に染まった瞳を涙で包み、溢れ出そうになっている嗚咽を水平に結んだ唇に必死に留めようとしている。
僕は全てを悟ってしまった。
 
 ○○を助けることが出来なかった。
 ○○だけじゃない。村の人も。
 
 そんな事実が体に沁み込んでいき、深い穴に沈むように自分を見失ってしまう。
 
 ─…『あら、もしかしてわたくし口説かれてる?』
 
 そう言って笑った○○の体温も、髪の柔らかさも、頬の綺麗さも、手に残っていた○○のすべてが消えていく。
 
 ─…『わたくし、神の許嫁ですわよ。もっと丁寧に扱ってほしいわ。』
 
 聴覚も、視覚も、触覚も、味覚も、嗅覚も。
 
 ─…『…一緒に添い寝します?』
 
 切り傷が風に触れるように頭に軋んだ痛みが走った。その瞬間、脳内に漂っていた霞の色が段々と濃くなっていき、油が切れたみたいに少し表情が強張っていく。
 
 
 ○○は死んだ。
 
 僕を置いて。
 
 愛憎という呪いを残したまま。
 
 
 大好きな君の匂いさえもが記憶から消えていって。
僕の名前を呼ぶときや笑い声は、どんな音をしていたかというのも薄れていって。
照れて赤くなった顔を隠すときの動作や身に沁みついた笑顔のあの複雑なあの強張り方が、が曖昧になって。
それで最期に残って縋るしかないのは、自身が作り出したただの想像でしかないんだ。
その中に“○○”という存在はいないのに。
 
 そう気づいたのは記憶が戻ってから──君が死んでからだった。
 
 体中が痛い。肺の空気はもう底をついており、傷ついた体からは血が時間とともにだらだらと流れ出てくる。きっともう助からないだろう。
 「死なせない!貴方はまだ両腕で刀が振れる!」
 片手を失った自身の腕で必死に不死川さんを抱え込みながら辺りで飛び回る鋭い斬撃の音に負けないようそう叫ぶ。もう体は限界を超えていた。
奇跡的に攻撃を交わせたと安心しても、月の痣のような暗い模様が体に刻まれた鬼──上弦の壱がまた刀を振る。死が纏わりついたその斬撃の欠片を捉えた瞬間、ドンッという重い衝撃とともに自身の腰から下の感覚が一瞬で消えた。
口から血が零れ落ちる。意識が遠のいて行ってしまう。
 
 ごめん、ごめんね。○○。
 救えなくてごめん。
 “あの時”、一緒に居てあげれなくてごめん。
 あんな暗いところで死が近づいてくる恐怖に怯えさすことになってごめん。
 忘れてごめん。
 “貰ってあげる”って約束も守れなくごめん。
 
 消えかかった意識の中で必死に謝罪の言葉を零す。目尻に湧き出た涙を拭う力すら出てこなかった。死への恐怖心が意識とともに段々と消えていく。
 
 だめだ、まだ無惨が残っているんだ。
兄さんの仇も、○○の仇だって取れていない。
まだ死ねない。死にたくない。
 
 その願いとは逆に段々意識が薄れていく。
 「……ぅ、ぁ」
 もうだめだ。
そう思った時にはもう遅く、冷たい床が体温を奪っていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 もしもまた人間に産まれることが出来るのならば君の恋人になりたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「…○○?」
 
 『無一郎くん?』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 今度こそ一生を添い遂げるって決めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 愛して、憎んで、呪って。
 
 
 
 
 
 
 完結しました!“愛して、憎んだ、呪って。”❕
ストコン参加したはいいものの終了日がまさかの明日でビビリちらかしました。ラスト、すごく雑さに磨きがかかっていますが気にしないでください。泣きますので。
初めての鬼滅夢の完結、どうでしょうか❔
 めっちゃ話変わりますが 3月1日に無限城編の公開日が発表されるらしいですね❕
見たくてでも見たくないという謎の心境をシャトルランしています。多分あたしと同じ人多いと思う。
 ここまで見てくれてありがとうございました😿
また次の作品で❕
コメント
4件
めっちゃ好きです!!!普通に小説書くの上手すぎる😭😭😭
めっちゃよかったです‼︎😭