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「マッチング完了! うぅ、緊張する……!」
A帯に足を踏み入れたハルカは、今までにないプレッシャーを感じていた。
敵も味方も、動きが速い。考える暇もなくインクが飛び交い、バトルがあっという間に決まってしまう。
(まって、みんなレベル高すぎ……!)
2戦、3戦と連敗。リザルトには「1k6d」など、心が痛くなる数字ばかり。
そのとき——
味方1:「ローラー下手すぎ」
味方2:「戦犯やめてくれ」
画面に流れるチャットの文字が、ハルカの心を冷たく締めつけた。
(……わたしが、足引っ張ってる……)
たった数行の言葉で、画面がにじむ。
思わずゲームを中断して、布団に顔を埋めた。
「……わたし、スプラ、やめたほうがいいのかな……」
気づけば、スマホでレイのYouTube配信を開いていた。
レイ:「今日は“初心者の頃の話”をちょっとしようかなって思ってて……」
珍しく雑談メインの配信。ハルカはイヤホンをぎゅっと耳に押し込んだ。
レイ:「味方に怒られたこと、いっぱいあるよ。『お前チャージャーやめろ』って、何度言われたか(笑)」
レイ:「でも……うまくなるって、そういうとこ乗り越えることだから」
レイ:「“向いてない”って、他人が決めることじゃないよ。自分で決めるんだ」
——あの言葉が、また心に響いた。
(……そうだよね。レイちゃんも、最初から上手かったわけじゃない)
「はぁ……また負けた。でも、もうちょっとだけやろう……」
何気なく参加したリグマで、マッチングした味方のひとりが、VCで声をかけてきた。
「ローラーの子、もしよかったら連携取らない?」
その声は、ハルカと同じくらいの年齢っぽい女の子だった。
名前:ミオ(使用武器:ボールドマーカー)
性格:前向きで明るく、戦術もよく考えるタイプ
最初はぎこちなかったけど、2人で通話しながらリグマをするうちに、自然と笑い合えるようになっていた。
「ナイスカバー!ミオちゃん、やっぱ上手いね!」
「いやいや、ハルカちゃんのローラー、決まると超気持ちいいじゃん!」
2人の息はピッタリ。連携で勝ち続け、ハルカのリザルトもだんだん安定してきた。
試合の後、ミオがぽつりとつぶやく。
「ねえ、ハルカちゃん。来週の草大会、出てみない?」
「えっ!? 大会!? わたしなんて無理だよ、まだA-だし!」
「大丈夫大丈夫。初心者歓迎のやつだし、なんとゲストにあのレイ選手が来るんだって!」
「……!? レイちゃんが!?」
思わず身を乗り出すハルカ。
「配信の解説らしいけど、もしかしたら会場にも来るかもって!」
ハルカの胸が高鳴った。
(また会える……!?)
その夜。ベランダから夜空を見上げるハルカ。
(レイちゃん……わたし、今度こそちゃんと、自分の力で前に進んで、胸を張って会いたい)
心の中に、静かに火が灯った。
「やってやる……!大会、絶対出る!!」
「初めての大会、そして会場で——」
憧れのレイがゲスト解説!?
ミオと挑む“ビギナー大会”で、ハルカはどんなバトルを見せるのか——
そして、会場の片隅に現れたあの人の背中に、ハルカの心が震える!?
次回「ヒーローの眼差し」お楽しみに!