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<<とあるサバゲーフィールド>>
颯爽に林の中を駆け抜け、会敵すると同時に散開、間髪入れずにトリガーを引くとタタタタ、パパパ、軽快に響く電動ガン、ガスガンの音。ここはとある首都圏近郊にある野戦型サバゲー場。忙しない戦いに明け暮れる周囲とは別に、藪の中を低い姿勢でゆっくりと移動する迷彩服を纏った2人がいた。
男「・・・」
前を歩いていた男がスッと左手を上げ行軍を止める。なぜならその10m先には黄色い腕章をつけた黒い戦闘服の敵集団が見えるからだ。
敵1「この辺に潜んでいるかな」
敵2「この時間ならまだ来ないと思うよ、もう少し先に進もう」
見つからないように息を潜めじっとしていると、その集団は5m程先を話をしながら通り過ぎる。
男「・・・(我慢だ、ここは我慢だ」
ドドドと心拍数が急上昇すると全身に沸き立つような血が駆け巡り興奮と発見される恐怖感が入り混じり嫌でも緊張が高まる。冷静に確認すると相手は7人もいた。ここでトリガーを引くのは簡単だが絶対打ち負けてしまう。
「・・・・(黙」
今飛び出すのは悪手だ。要するに一斉に屠るチャンスを待たなければ駄目というか今はジッと我慢するしかない。そんな緊張感が高まる中、数十秒後、敵は男に気がつく事なく通り過ぎた。
「・・・(成功だ!」
男は後続がいない事を確認するとゆっくり方向を変え先程の敵を追い始める。すると少し開けたところにその敵はいた。パパパと発射音が響き渡りバリケードに身を隠し味方と撃ち合っているのでもちろん背後は全く警戒していない。いきなりのチャンスタイム到来だ。
「洋介行くぞ」
「うん」
2人組のうち大柄な男が敵の位置と獲物の振り分けを手話で伝え終えると銃を構え軽く頷く。そしてスルスルとまるで忍者の如く音を立てずに飛び出ていくとサイレンサーを装着しているVFC社製のSCARから”バスバスバス”と鈍い単連射が響き敵の背中にBB弾が吸い込まれていく。
敵1「イッ!ヒットー!ヒット―!」
敵2「痛たた、ヒットー!ヒットでーす」
いきなり背後を打たれた敵兵は着弾と同時にヒットコールを上げるが、まさかの背後からの襲撃だとは思ってなかったのか振り向くと驚愕な表情を浮かべていた。
洋介「ほれ!」
敵3「うわぁヒット!」
敵4「ヒット、ヒット」
そして同時に左に飛び出したもう1人は長いサイレンサーの付いたマルイ製HK416を構え、割り振られた敵の背中に目掛け”ポンポン”と間抜けな発射音と共に的確に敵を倒していく。あとは簡単だ走り抜けながら蹂躙するだけだ。
敵5「ヒット、クッソ背後かよ」
洋介「こっちを殺る」
敵6「いてて、ヒット、ヒット」
背後の急襲でみな対応が遅れていたが洋介は割り振られていない敵の銃口が男に向けようとしたため即座に獲物を変えBB弾を叩き込む。
「いいね、後は任せろ」
「俺も殺る」
敵7「うわぁ、いてて、ヒット、ヒットでーす!」
そして最前線、最後の1人を奪い合うように銃撃したため、最後に撃たれた敵が1番の貧乏くじを引くことになる。男は痛みを和らげるために咄嗟に腹部を狙い、洋介は確実にキルするためにヘッドショットを決めていたのだ。
男「おい、俺は味方だ!前衛は潰したぞ!」
友軍「サンキュー」
フレンドリーヒットは頂けないので男は腕章の色を見せつつ味方アピールすると、銃撃が止み2人で味方の防衛ラインに滑り込む。
洋介「はぁはぁ、やったね!」
男「流石だな4キルだぞ」
息の上がった2人はお互いゴーグル越しの目をみて”ニヤリ”と笑い、同時にガッツポーズを決める。
「ジー・・」
そんな楽しそうな2人の様子を複数のステルスシーカーが上空から静かに見守っていた。
ーー
<<探査船・艦橋>>
司令「今回の獲物は大柄だけど動きがいいな」
2人の戦いの様子をCICの大画面で確認している司令は男の動きを見てまんざらでもない様子だ。
「今回の選抜者の中では一番ですね、名前は古木翔太小さい方は息子の洋介です」
「是非ともあの親子共々が欲しい所だが、”星団法”で1人と決められているからな仕方ないか…」
「そうですよ2人共連れ帰ったら陛下に怒られますよ」
何やら拉致して連れて帰るのが当たり前だと語っているし、それに陛下というからには王国なのだろうか謎は深まるばかりだ。
「とりあえずシーカーをロックして追ってくれ、上層部の許可が取れ次第、家に戻った所で予定通り”自宅訪問”する」
「わかりました今から本国に打電します、強制転送はトラブルの元ですからね」
シーカーとは言葉とおりSEEKと同じ中を浮く監視装置のことで、転送とは物質を電波に乗せて運ぶ技術で軍事国家アメリカでさえ未だ実用化どころか設計図も無いような代物だ。という事はコイツらは凄く進んだ文明を持つ地球外生命体と言うことなのだろう。しかし見た目の特徴はガッツリ西洋人だったりする・・。
「同意を得ずに誘拐みたいなことをすれば入念に下調べをした努力が水の泡になるどころか、そもそも我々に協力などしないよ」
士官の話し振りからすると時間を掛けて選定していたようだし、いきなり拉致などはせず話し合いの場を設けるらしい。先ずは一安心といったところだろうか。
Ai「索敵用レーダー波確認」
レーダー手)「司令!索敵レーダーを検知しました」
一応の流れが決まり後は男が帰宅するまで動きが無くなったが、沈黙を打ち破るかのようにビーといきなり警告音が鳴り響いた。
副官「クリス司令”あの国”に動きがあり、こちらのシーカーの背後にやつらのシーカーが追従しています」
クリス「チッ、アイツら」
レーダー手「クリス司令、あれ転送用シーカーなのでロック信号発砲すると間違いなく横取りしますよ」
どうやら一人の男を巡って分捕り合いが始まろうとしていた。しかしクリスの口ぶりからすると横取りだと分かる。何はともあれ嫌な雰囲気が艦橋内に流れ始める。
「わかった、見失わない程度に離れて対象者の監視を続けてくれ、まいったな~このまま追尾したら特定される強制転送するしか無いか….」
そして指揮官兼艦長のクリスは頭を抱え込み考え込んでしまう。
副長「横取りですか
クリス「ああ全く・・・」
クリスは口には出さないが追従する国のことを詳しく知っている。なので心の中では「まったくあの国は余計なことをしやがる大した努力もせず盗むにかけては天才的だ。だから基礎技術が弱く全てにおいてハリボテで自分たちのステルス技術はバレないと思い込んで出港後ずっと追尾だよ」とまあ酷評中だったりする。
副長「クリス司令、どうしますか」
クリス「なんかさー、ムカつくから最後にガツンとやってやるかー」
「恐ろしいこと言わないでください」
どうやら今回の1件だけではないようだ。過去にも同じような事例を経験しているらしく腹に据えかねているらしい。なのでチャンスが有れば何かしらの方法でガツンと報復を考えているようだ。
「馬鹿には躾しつけが大事なんだよ!もし横取りされたら強襲して奪い返すぞ」
「は、はい」
そしてクリスは横取りする連中に対して細かい指示を出す。その内容とは機甲歩兵という名のロボットユニットを強襲艇に待機させ奴らの船の真後ろに配置するとともに、奪われた時にそれを使い奪還する考えだ。
「超長距離転送を使うと一時的にジャンプ用のエネルギーが足りなくなるその時が強襲のチャンスだぞ、修理できる程度にエンジンコアを攻撃しろ」
「了解です」
例え横取りされ連れ戻して警告するだけでは腹の虫が治まらないらしいクリスは、一時的に航行不能にしろとの命令を下す。どんだけ嫌っているのかこの態度を見てもよく分かる。
「どの道、帰還するときに悪戯してやろうと思ってたからちょうどいいか、フフフ」
「うわぁ怒らせたぁ〜あいつらとは言えどもご愁傷様だね」
そして1人の男を巡った争いが始まろうとしていた・・。
ーー
<<とあるサバゲーフィールド>>
ピーー!ピー!とけたたましい笛の音が響き渡る。これは大概ゲーム終了のお知らせだ。
スタッフ「しゅうりょ〜〜う ゲーーム終了〜!」
運営スタッフの大きな声がゲーム終了を告げる。どうやら男の友軍が速攻で敵フラッグを獲ったようだ。
洋介「ねえパパ、僕らが前線を崩したから早かったね」
翔太「そうだね敵の後続が少なかったし仲間の足も早かったよ、それにしても洋介いい動きしてたな」
敵の前衛を潰した後は苦戦している味方のフォローに入りある程度敵の数を減らすと、自軍のフラッグを守る為に後方に下がり戦場を俯瞰見できる場所でのんびりしていた。
「ははは、最後の同時銃撃が面白かったよ混乱して踊ってたね」
「そうだね混乱してたね、じゃそろそろベースに戻るか喉が渇いたよ」
敵陣から味方がゾロゾロと歩いてくる。という事は休憩時間なのでフィールドを離れ自席に戻るタイミングだ。
「そだね、あれ?パパ透けてるよ?」
「はい?うぉ!」
歩きはじめようとした瞬間、洋介に指摘され自身の身体をみると”マジ透けてる”と思った瞬間ブラックアウトしてしまうパパ。その様子を洋介はまるでSF映画のワンシーンを見ているかのように茫然と見ていた。
洋介「うわーマジィ?消えっちったよ戻ってくるかな〜まあ大丈夫かあの豪胆なオヤジだし・・・・」
そこにはパパのエアガンがポツンと置いてありそれを眺めて語る息子も同じくらい豪胆だった・・。