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#いんく
華一
608
꒰ঌソラ໒꒱
1,006
むあ 🐻❄️🍀︎

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翌朝、冷たい粥を運んで来た古参武士の岡崎助十郎が、信長からの使者であることを告げた。
「今日午後、明智様とご一緒に再訪されます」
昼過ぎ、まず現れたのは明智光秀だ。彼はいつも通り冷静沈着で、初老とも思える落ち着きを持っていたが、眼光は鋭かった。
「貴公が俊之助殿か。噂は聞いておりますぞ」
彼は挨拶代わりに切り出す。
「『未来を見る者』とは誠ですか?」
「己でもわかりませぬ」
僕は謙虚に答えた。
「ただ時折、幻のように見えることがございます」
光秀は深く頷く。
「私にも似たような経験が……いや」
彼は途中で話を止め、本題に入った。
「今川軍二万五千人に対し我が方は三千。常識的には打つ手なしと思われるが、ご主君は奇襲作戦を選択されました」
やはり史実通りの構想だ。だが彼が次に提示した内容は違っていた。
「ところが問題がありましてな。斥候報告によると、敵は四方を完全に警戒しており、通常の迂回路は封鎖されているとのこと」
光秀は地図を広げた。ここまでの地形把握は俊之助の予知通りだ。
「そこで質問だ」
彼は鋭い眼差しでこちらを見た。
「お前の言う湿地帯の『秘密経路』はどういうものです?」
僕は呼吸を整える。
「御覧ください」
指で地図上の一点を示す。
「ここから南東へ進むと深い葦原があります。漁師たちはここを『幽鬼の沼』と呼び忌み嫌いますが、実は中央部だけが乾燥しています」
僕は頭の中のイメージを辿りながら説明を続ける。
「敵の目を欺くために、あえて敵主力の北側を大きく回り込むふりをして、突如南東へ向かい湿地帯へ潜入。葦原の中央を通って今川本陣の西側背後に出ます」
光秀の眉が僅かに動いた。
「ほう、なるほど……だが兵力はどうする?この湿地帯は騎馬は困難だし、歩兵も少なくないと動けまい」
「最大二百五十人が限度でしょう」
僕は躊躇なく言った。
「精鋭のみ、しかも夜間に移動するのが肝要です」
これは史実上も記録されている最小限の動員規模と同じだ。信長が実際に投入したとされる五百万人は、地形を考えると多すぎる可能性がある。
「興味深い仮説ですな」
光秀はさらに踏み込んでくる。
「その道を行く場合の潜在的危険性は何です?」
核心を突かれ、心臓が高鳴る。これは致命的な質問だ。僕は目を逸らさず答えた。
「第一に落石や崖崩れです。あの地域は岩盤が脆いですから、雨による増水が起きれば特に危険。第二に敵の遊撃隊による捕捉リスク。第三に……」
僕は一度息を吸い込む。
「帰還手段が極めて制約されます。戦果を得ても敵包囲網を突破できねば全滅は必至」
光秀はしばらく沈黙し、その後微笑んだ。
「よく見抜きましたな。そこまで言えば十分です」
すると扉が開き、信長本人が現れた。今回は黒田官兵衛と石田三成も随伴している。なんという豪華な布陣だ!
信長は無言で僕の前に立ち、両腕を組んだ。官兵衛は好奇心旺盛な表情でこちらを見つめ、三成はまだ若いが眉一つ動かさない厳格な態度を示している。
「聴いたぞ俊之助。お前の意見は正しい。光秀も納得した」
信長が宣言すると、一同の視線が集中した。
「よって今日よりお前を仮釈放とする。桶狭間作戦における特別密偵として働け」
「かしこまりました!」
僕は即座に座ってあぐらをかく。信長は次の指示を素早く与えた。
「今晩より偵察隊を編成する。まずは黒田官兵衛と協力し、最適な兵の選定と武器・糧食の準備を整えよ。三成は補給経路の確保だ」
官兵衛が近づいてくる。
「密偵殿、早速で悪いのですが」
彼の声は妙に高く陽気だ。
「本当にあんな場所を通れますか?正直言って、私も半信半疑ですよ」
「可能にするのが我々の務めです」
僕は努めて平然と答えた。
「この道を使えば今川義元の本陣に最も接近できます。それに……」
言いかけたところで言葉を飲み込む。僕だけが知る未来では、この戦いで義元は討たれる。もし変えてしまえば歴史全体が混乱するかもしれないのだ。
三成が静かに口を開いた。
「糧食に関しては特殊な携行保存食が必要になりますな。湿地での長時間行動を考慮すれば……」
彼ら三人が技術的な議論を始めた隙に、僕は信長と二人きりになる。主君は壁に寄りかかり、低い声で尋ねた。
「本当のところを聞きたい」
緊迫した空気が漂う。
「お前の予見は正確なのか?あるいは単なる希望的推測か?」
僕は迷わず答えた。
「自信はあります。しかしそれ以上に大切なお伝えしたいことがあります」
「なんだ?」
「この作戦、成功するだけでなく、歴史を塗り替える可能性があります。必ずご期待以上の結果をお出ししましょう」
信長は怪訝な表情を浮かべたが、すぐに不敵な笑みを返した。
「面白くなってきたな。見せてもらうぞ、俊之助!」
こうして運命の歯車は回り始める。俊之助――いや、僕は今、歴史上最大の決戦に挑む特等席に立っている。転生した責任を自覚し、この圧倒的なプレッシャーの中で僕は決意を新たにした。
コメント
1件
うわああ第2話も熱すぎた!!😭🔥 信長様たちとの会話の臨場感がやばくて、特に光秀さんの「核心を突かれた」シーンで心臓バクバクしたよ…! それでいて俊之助の「歴史を塗り替える可能性」って台詞に未来を知る転生者としての覚悟が滲んでて、もう推さずにはいられない…! 次回どうなるの早く読みたい!!✨