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fu view___________
遡ること2時間ほど…いや、もう少しだけ前
かざねとしゅうとはいきなり呼び出したものだから、泊まれるような着替えがなくて。
学校で必要なものも含めて持ってくるために、一度自身の家へ戻った。
荷物をまとめてきた2人と一緒に、今日作るご飯の話をしながらスーパーまで行って、
家に帰って、
“くつ”のない玄関を見て、ここ最近で1番と言えるくらい大きな絶望感を抱いた。
1人にするべきじゃなかった、絶対に。
たとえ彼が寝ていようと、だれかが家にいるべきだった。
いつから?いつからだ?いつからいないんだ。
どこへいった?
即座に2人に留守番を頼んで、傘を片手に俺だけ家を飛び出した。
もうどうしようもなかった。走るしかなかった。
傘も意味がないくらいにはブレながら走った。
fu「りもこん!!」
彼からの返事なんてない。
fu「りもこん!!おい!!…りもこん!」
泣きそうだった。もし間に合わなかったら?
もし、もう______
fu(…いやだ、嫌だ絶対に!!)
わからないなりに走った。あいつが行きそうな場所、行かなさそうな場所。
所々通りすがりに変な目を向けられても、見つけるために走り続けた。
その先に、彼はいてくれた。
濡れた後ろ姿、傘もささずに。
抱きしめた瞬間、服の下の体温が異常に冷たいのがわかった。
雨の中、びしょ濡れで、震えてて。
息は浅くて、唇の色が悪い。
怖かった。
fu(…お前、何考えてんの、)
傘をどこかに投げた記憶もない。
でも手に持ってない、多分どこかで投げ捨てた。
ただ走って、掴んで、もう離せないって思った。
fu「……なに考えてんだよ。外、こんなに降ってんのに」
言葉は叱るみたいになった。
でも声が震えてた。
りもこんはそのまま、ふらりと首を傾けて、ふうはやを見上げた。
俺を確かめるように目を向けて、柔らかな幼子のように笑う。
rm「……ふうはやだぁ〜」
fu「っ、りも、こん、?」
その笑い方が、本当に、壊れそうな笑顔だった。
泣いてるのか笑ってるのかわからない顔。
でも、確かに笑っていた。
ふうはやの喉が詰まった。
fu「……バカ……っ」
その一言で、全部が込み上げた。
りもこんの頬を両手で包んで、濡れた髪をかき上げて、強く抱きしめる。
rm「ふふ、みて、ふーはや、あめ」
fu「ぁ、あめ…うん、雨だ、」
fu「……帰ろ。な?寒い、もう、帰ろ」
rm「……ん〜……でも、雨……」
rm「ぁれ、ふーはや、濡れてるよ」
fu「いいよ、濡れても。お前が風邪ひく方がよっぽど困る」
りもこんが小さく笑って、そのままふうはやの胸に額を押しつけた。
rm「ふうはや、あったかい」
無邪気だ、その無邪気さが、凄く痛い。耐えられない。
違う、俺があったかいんじゃない。
fu「お前が冷たいんだ……」
ふうはやは傘を拾い直すこともやめて、そのまま、雨の中を歩き出した。
重たい雨粒がふたりを叩いて、アスファルトが水に揺れて、
りもこんの小さな足音が、隣でかすかに鳴っていた。
fu「……怖かったろ」
rm「……?」
fu「わかんなくてもいい。もう俺がわかってるから」
返事はなかった。
繋がれた手は前後に振られて、本当に子供と手を繋いでいるみたいだった。
その力は弱くて、でも、確かに“生きてる”力だった。
rm「あのね、雨がね」
rm「いろんなところ連れてってくれる気がして」
rm「……ぁめが、」
言葉が止まる。きっと彼も、心の中で闘っている。
でも、その先はダメだ。今は理解するべきじゃない。
ふうはやは息を吸って、そのまま静かに微笑んだ。
fu「帰ろう、りもこん。……お前の居場所、ちゃんとあんだから」
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帰り着いたのは、どれくらい歩いたあとだったか、もう覚えてない。
玄関を開けると、その音で気づいたらしいかざねとしゅうとがリビングから飛び出した。
shu「……りもこん!」
kz「どこ行ってたんだよ、心配したんだぞ!」
声が重なって、リビングの空気が一気に動いた。
でも、りもこんは髪から水を滴らせながらふにゃりと笑った。
それでも異常だとわかるのに、隣にいる俺を見て、さらに2人は困惑したようだった。
そんなことも気にせず、りもこんだけが、楽しそうな声色で話し出す。
rm「かざねぇー!ねぇねぇ、聞いて〜……雨が降っててね〜、」
kz「っ、うん」
rm「汚れが落ちる感じがしてさぁ、」
shu「………」
rm「なんかね〜……なんかわかんないけど、楽しかったぁ〜」
rm「ほら〜っ!綺麗になったんじゃない?」
rm「みんなに触れるかな?」
ふうはやの喉の奥が、ギュッと痛くなった。
かざねは口を開きかけたけど、何も言えず、代わりにタオルを取って、静かにりもこんの頭を拭いた。
しゅうとも、タオルケットを持ってきて、小さく笑いながら「風邪ひくよ」って言った。
rm「ふふっくすぐった〜い」
rm「あのね、ゴミと一緒にね、俺の汚いのも雨が流してくれてねっ」
shu「…っ、…ぅん」
rm「すごかったんだよっ!ざぁーって!」
りもこんは、まるで子供みたいにその言葉に頷いて腕を上げ、自分の濡れた指先を見つめた。
……そのとき。
部屋の蛍光灯に照らされてできた影、そこから覗く包帯から、じんわりと赤が滲んでいた。
りもこんの瞳がそれを捉えた瞬間、ふわふわした表情が、ゆっくりと、現実に引き戻されていく。
rm「……ぁ」
kz「りもこん?」
rm「……ぁ、れ、…血、?」
戸惑いの声。それがいけない合図だって、誰もがわかった。
fu「っりもこんッッ」
rm「ぁか、…ぇ、なん、………ぁぇ、」
ゆっくり、けれど確実に、りもこんの顔が強張って、意識が戻ってくるのがわかった。
rm「……ぇ、ぁ、え? ……あ、ごめ、」
焦ったように手を隠して、後ずさる。
顔が急に青ざめて、肩が震えた。
rm「ち、ちがっ……こんな、つもりじゃ……」
fu「りもこん」
ふうはやが、迷わず抱き寄せた。
その腕の中で、りもこんが小さく息を呑んだ。
fu「大丈夫。……もういい。大丈夫だから」
しゅうとも反対側からりもこんの手を包んで、かざねが濡れた頬をタオルで押さえる。
誰も責めなかった。
誰も言葉を詰まらせなかった。
ただ、抱きしめて、温めた。
それだけが、今できる“答え”だった。
しばらくして、りもこんが小さく「……さむい」って呟いた。
その声を聞いて、ふうはやはほんの一瞬、目を閉じた。
――ああ、生きてる。
そう思った。
痛みも、震えも、呼吸も、全部、生きてる証拠だった。
ふうはやは、濡れた髪をそっと撫でながら言った。
fu「もう、無理しなくていい。……お前がここにいるだけで十分だよ」
りもこんは返事をしなかった。
でも、掴んだ手を離さなかった。
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時計の針が、また夜を跨いでいた。
リビングの照明は落とされて、テーブルの上に置かれたスタンドだけが、弱く、黄色い光を投げていた。
ソファでは、りもこんが眠っている。
濡れた服は着替えさせて、包帯も新しく巻いた。
息は静かで、でも時々苦しそうに喉が震える。
かざねが小さな毛布をもう一枚かけながら、低く呟いた。
kz「……泣き疲れた、って感じだね」
しゅうとが、マグカップを両手で包んで頷く。
shu「……楽しかったって」
shu「……あの言葉、…怖かった」
shu「笑ってるのに、ぜんぜん嬉しそうじゃなかった」
fu「……」
ふうはやはテーブルの端に肘をついて、指で眉間を押さえた。
fu「心臓、止まるかと思った」
shu「見つけてくれて、ほんとに良かった」
fu「……見つけられなかったら、もう……」
言葉が途切れる。
喉の奥が詰まる音が、かすかに響いた。
かざねが、そんなふうはやをちらりと見て、柔らかく息を吐いた。
kz「責めるなよ、自分のこと」
kz「ふうはやだって、今、ここにいるじゃん。りもこんも」
fu「……でも、俺らは毎回…後からなんだ」
fu「りもこんが壊れそうになってから、やっと気づいて、慌てて」
fu「……守るって、もっと早くできるもんなんじゃねぇのか」
静寂。
その言葉は重く、でも優しかった。
しゅうとが少し俯きながら、マグカップの中を見つめて言った。
shu「今回は、間に合わなかった」
shu「誰も、気付けなかった」
fu「?」
shu「でも、悪化を防ぐことはできるんじゃないかな」
shu「これ以上、りもこんが何かに壊されるのを、…これからは、守れたら、」
shu「……」
kz「…元凶を、…潰す、か」
shu「………うん」
ふうはやは少しの間黙って、それから小さく笑った。
fu「……難しいな。けど、できそうな気もする」
fu「俺らなら」
kz「当たり前じゃん。りもこんの友達だもん」
その一言に、空気がほんの少しだけ軽くなった。
誰かが息を吐いた。
カーテンの隙間から、夜の街灯がちらりと見える。
ふうはやは立ち上がって、りもこんのそばに寄る。
寝顔を見下ろして、小さく呟いた。
fu「……帰ってきてくれて、ありがとな」
りもこんは眠ったまま、ほんの少しだけ眉を動かした。
その微かな反応に、3人とも息を止めて、また笑った。
そして、ふうはやが小さく提案した。
fu「なぁ、明日さ。みんなで“広場”行こうぜ。……雨なら、今度は、傘持って」
しゅうとが目を丸くして、かざねが笑いながら「賛成」と答えた。
どんよりとした灰色の雲から、途切れそうな光が差している
コメント
3件
コメント失礼します🙌🏻 最初から最後まで描写がとても伝わってすごく感動しました! 神作品をありがとうございます🙌🏻💘
初めから全て読ませていただいたのですが本当に感動しました、 素敵な作品をありがとうございます😌🍀