テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第9話:港町の甘い散策と、束縛の鎖
激闘と甘い夜を経て数日後。
『黒狼号』は補給と情報の収集のため、活気あふれる巨大な港町『港都レヴィア』へと寄港していた。
波止場に船が横付けされると、甲板には久しぶりの陸地に目を輝かせるシオンの姿があった。
シオン:「わぁ……! すごい、いっぱいお店があります! 船長さん、僕もお買い物に行っていいですか!?」
シオンが着ているのは、フェニがこの日のために仕立てさせた上質な白いタートルネックの服だ。首筋や鎖骨に刻まれた数々の「痕」を隠すためのものだが、ダボっとしたシルエットがかえって少年の華奢さと無垢さを際立たせていた。
レヴィ:「……一人で行かせるわけがないだろう」
レヴィが短く言い捨て、シオンの細い手首をぐっと掴む。
レヴィ:「お前は俺から離れるな。街にはお前のような無防備なガキを狙う不法者がいくらでもいる」
シオン:「はーい! 船長さんと一緒なら安心です!」
シオンが嬉しそうに微笑むと、隣から割って入る影があった。
ガルド:「おいおい、レヴィ。一人でシオンを独占する気か? 街の警護なら俺が一番適任だろ」
ガルドは大柄な体を割り込ませ、シオンの反対側の手を大きな手でしっかりと握りしめた。
シオン:「ガルドさんも来てくれるんですか? 嬉しいな!」
フェニ:「ふふ、二人とも強引ですねぇ。街の地理や珍しいお店に詳しいのは僕ですよ? シオンくん、僕と一緒においしいスイーツでも食べに行きませんか?」
フェニが優雅に歩み寄り、シオンの腰にすっと手を回して引き寄せる。
シオン:「スイーツ! 食べたいです! フェニさん、ありがとうございます!」
シオンは攻め三人から同時に手や腰を抱えられ、完全に囲まれた状態で街へと繰り出すことになった。
◇
賑やかな市場は、珍しい果物や装飾品で溢れていた。
シオン(心声):(すごいなぁ……! お外の世界って、こんなに広くて楽しいんだ!)
シオンは珍しそうに周囲を見渡し、目をキラキラと輝かせている。
しかし、シオン自身は気づいていなかった。
濡れた蒼海の髪、陶器のように白い肌、そしてどこか庇護欲をかき立てる可憐な雰囲気を纏った少年が街を歩けば、どれほど目立つかということに。
通行人貴族:「おや……あそこにいる少年、なんという美しさだ……」
街のならず者:「おい……あのガキ、どこかの金持ちの奴隷か? 売ったらいい金になりそうだな……」
すれ違う人々や、路地裏のならず者たちが、一斉に怪しい視線をシオンへと向け始める。
レヴィ:「……チッ」
レヴィの金色の瞳が冷たく光り、腰の刃の柄に手が伸びる。周囲に氷のような殺気が撒き散らされ、近寄ろうとした者が息を呑んで後退りした。
ガルド:「おいガキ、前だけ見てろ。余計な奴に愛想振りまくんじゃねぇ」
ガルドはシオンの頭を自分の胸に引き寄せ、周囲を威嚇するように睨みつける。
フェニ:「やれやれ……シオンくんの可愛さは、隠そうとしても隠しきれませんねぇ。……いっそのこと、僕の部屋に閉じ込めておけば良かったかな?」
フェニもまた、穏やかな笑みの裏で瞳に濃い嫉妬と執着を宿していた。
当のシオンは、男たちの殺気にも全く気づかず、屋台で売られている色鮮やかな飴細工に夢中になっていた。
シオン:「わぁ……お魚の形をしたお菓子です! 可愛い……!」
シオンが足を止めると、屋台の店主がシオンのあまりの愛らしさに顔を赤くした。
屋台の店主:「お、坊ちゃん! 可愛いなぁ。よかったらこれ、おじさんからのサービスだ! 食べてみな!」
店主から差し出された飴細工を受け取り、シオンはパッと顔を輝かせた。
シオン:「本当ですか!? ありがとうございます! おじさん、とっても優しいですね!」
シオンは天使のような満面の笑みを浮かべ、店主の手を両手でぎゅっと握りしめた。
屋台の店主:「うぐっ……!? か、可愛すぎる……!」
店主がノックアウトされた瞬間、後ろから三つの巨大な陰影が迫った。
レヴィ:「……おい。その汚い手を退けろ」
ガルド:「俺たちのシオンに気安く触ってんじゃねぇぞ、オヤジ」
フェニ:「ふふ、このお店ごと買い取って潰されたいのですか?」
圧倒的な圧迫感と殺気を放つ海賊トリオに挟まれ、店主は「ひぃぃっ! ご、ごめんなさいぃ!」と悲鳴を上げて逃げ出してしまった。
シオン:「あ……おじさん、行っちゃった……。みんな、どうして急におこってるんですか?」
シオンが不思議そうに首を傾げると、レヴィがシオンの前に屈み込み、その頬を強く抓った。
シオン:「ひゃいっ……!? 痛いです、船長さん……!」
レヴィ:「お前というガキは……誰にでも無防備に微笑むなと言ったはずだ。お前のその顔も、手も、すべて俺たちのものだと言っただろう」
ガルド:「そうだぞ。お前が誰にでも甘い顔をするから、周りの害虫が寄ってくるんだよ」
フェニ:「まったく……これでは街を歩くのも一苦労ですね。シオンくん、少しお仕置きが必要ですか?」
男たちの熱く重い視線が一斉にシオンに注がれる。
シオン:「うぅ……ごめんなさい。僕はただ、お菓子をくれて嬉しかっただけで……」
シオンが眉を八の字にしてしゅんとなると、あまりの可憐さに男たちの理性が再び揺らぐ。
レヴィ:「……ハァ。反省しているならいい」
レヴィはため息をつくと、懐から小さな革袋を取り出し、シオンの首元へ付けた。
それは、黒い革に美しい蒼い宝石があしらわれた、まるで首輪のようなチョーカーだった。
シオン:「わぁ……きれいな首飾り! 船長さん、これ僕にくれるんですか!?」
レヴィ:「あぁ。……それには俺たちの刻印が入っている。お前が俺たちの『所有物』であることを示す鎖だ」
フェニ:「ふふ、これで誰が見ても、シオンくんが誰のものか一目瞭然ですね」
ガルド:「これで余計な虫も寄ってこねぇだろ」
シオンは自分が「所有の印(首輪)」をつけられたとも知らず、嬉しそうに指先で宝石を撫でた。
シオン:「船長さん、ガルドさん、フェニさん! ありがとうございます! 僕、一生大事にしますね!」
シオンが無邪気に笑いながら三人に抱きつくと、男たちは愛おしさに胸を締め付けられ、その細い体を強く抱き返した。
逃げ場のない海の上だけでなく、陸の上にいても変わらない。
少年は男たちの狂おしいほどの愛と独占欲の中に囲われながら、今日も無自覚に男たちを狂わせ続けていくのだった。
コメント
1件
うわあ、第9話読み終えたよ。港町の散策、甘い雰囲気と束縛の鎖が絶妙に絡み合ってて面白かったなあ。シオンくんの無自覚な可愛さが周囲を振り回す構図がもうお見事で、特にあの首輪……というかチョーカーを「綺麗な首飾り!」って喜んじゃう純真さにやられたよ。三人の独占欲がギラギラしてるのに対抗できず、まるで子犬みたいに囲まれてる様子がなんとも愛らしくて。陸に出ても逃げ場がないってのがもうね……次の話が楽しみだよ、雫さん!
30
74
桃 姫@フォロバ
48