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『パラレル』― One Way ―

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『パラレル』― One Way ―

5 - 第5話 11 ◇    12 ◇    13 ◇

2024年12月07日

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毎日顔を見なくても平気なんだ。

私とまだ幼い子供たちを置き去りにして平気なんだ。



私が他の誰かのモノになるなんて1mmも危惧しないんだ。



何年にも及ぶかもしれない単身赴任で、果たして……

夫はきれいな身体で帰って来るだろうか。



遠く離れた地で、そんな心配をして暮らすのなんて真っ平だ。


夫の強い希望で今まで築き上げてきた穏やかで健やかな1つの家庭が

離ればなれの不安定なモノに変わろうとしている。


今の幸せが壊れようとしている、そんな考え方しかできない私。


夫は単身赴任で家を離れ、そして単身赴任を終えまたこちらに

帰ってきてからも、今と同じ家庭があると本気で考えているのだろうか?



それとも家庭が壊れるかもしれないというリスクを認識しながらも

家庭と仕事を天秤にかけて


それでも仕事が……

自分の遣り甲斐が……


大切で行くというのだろうか。



私は2~3年であっても離れて暮らすなんて耐えられない。


もしかすると、5年も6年も離れて暮らすことになる可能性もある。



それなのに、単身赴任したいという夫。

ステップupのほうが私たちより大事。


私はどんどん惨めな気持ちになっていくのをめられなかった。


11-2


妻からは結局最後まで積極的な意見を聞くことは出来なかったが

さりとて地団太踏んで反対とまではされなかったことで、

俺はそれを無理やり暗黙の肯定と受け取り、妻から保険として

求められた緑の紙に淡々と記入して渡し、単身先へ行くことにした。




俺の父親もその昔まだ自分が小学生だった頃に3年間単身赴任

していたことがあった。


母は専業主婦だったにも関わらず、自分と子供だけだといろいろと

手抜きが出来て亭主留守で元気がいい~と何かのCMで流行った台詞を

のたまい、3年間家事の手抜きをしまくり自由な時間を自分の為に

謳歌していた。



そんな母親の姿を見てきた俺にしてみれば、妻のドヨォ~ンと

した顔を見ると、何をそんなに拘るのかと不思議でしようがなかった。






仕事をしながらの子育ては大変だろうけれど、今だって、激務で

俺はなかなか家事育児は手伝えてない。


深夜帰宅することもあるから考えようによっては、今の状況の

ほうが逆に大変だと思うのだが。


朝食に夕飯、洗濯等1人分なくなると随分楽になるんじゃないのか?




妻の仕事は義父の経営する事務所で、実家の義母も近くに居て

子供たちのことは今まで通り頼めるし。



浮気のことを何やら言ってたけれど、本気でそんなこと気に

してるのか?


自分で言うのもなんなんだが、据え膳も喰わない男なんだ。


そこは心配しなくていいんだよって妻を説得したいところだが

あまり言うと薮蛇になって逆に心配させてもいけないから

言わなかったが。



どうして妻は積極的に賛成して応援してくれないのか、寂しい

限りだ。


案ずるより産むが易しというじゃないか。

2~3年で帰って来れたら出世して年収だってものすごく増えるんだ。



まぁ、そうは言っても猛烈に反対されないだけでも良しとしないと

いけないのかもしれないな。


そんな風にあれこれ考えているうちに、赴任する前日を迎えていた。


◇ ◇ ◇ ◇



気持ちが高ぶったせいか、久し振りに妻とSEXしたいと思ったので

それとなく彼女を誘ってみた。



12-2



「いいわよ、今更。

変な気を遣わないで。

家族とはその気にならないんでしょ?」


と、どこかで聞いたような台詞で妻から軽くかわされてしまった。




えっ?


俺、由宇子にそんなこと言ったことあったかな?



だけど、いつだったかもう覚えてはいないが、どこかでそんなことを

自分が言ったことがあった……かもしれないと、言われて初めて

思い出した。



しかしその相手が妻でないことだけは間違いない……と思う。


まさか幾らなんでも直截本人に話すような事柄ではないからだ。




いつ、どこで俺はそんな意味深な話題を持ち出していたのだろう。


しばらく思い出そうとしたが、結局思い出すことは出来なかった。




確かにそのような考えを持ってはいるが、久し振りに

その気になって愛する妻から素っ気なく断られたのにはかなり凹んだ。



それと共に、俺が放った言葉として妻がどこかから俺の気持ちを

聞いて知っていたとしたら……考えるだけで、どっと汗が

吹き出る思いだった。



この件で上がっていたテンションがぐっと下がった。



◇ ◇ ◇ ◇



そんな中、俺は家族に見送られ単身先へと向かった。





昨夜は口から心臓が飛び出すンじゃないかと思うほど驚いた。


離れることになったとはいえ、約1年と数か月ぶりに誘ってきたからだ。


動画の中で放たれた夫の言葉を聞いていなければ

私はきっと戸惑いながらも喜んで夫の誘いを受け入れただろうと思う。


だけど、もう遅いのよ将康。

遅いの……。



私は気がつくと、ぴしゃりと拒絶の言葉を放っていた。

何も考えていなかった。



口が勝手に答えていたのだ。

どうしようもなかった。



良かったのか悪かったのか。


ただ、昨夜の件が今後の私たちの行く末を大きく暗示している

のではないか?


そんな風に思えて仕方なかった。



悲しい夜だった。


翌朝、子供たちは母に預けて私1人で夫を見送った。

最高の笑顔で。



夫は新幹線の中から電話するねって私にジェスチャーで伝えてきた。


私はそれに対して頷かなかった。

ううん、頷けなかった……ノカナ。


ただ微笑んで手を振った。

『さ・よ・なら』……と届かないであろう言葉を呟いて。


◇ ◇ ◇ ◇



今日は夫を見送った。

……寂しい日だった。


朝、母に子供たちを預けに行ったら一日子守してあげるから

今日は久し振りにゆっくりしなさいと言ってもらったので

甘えて家で久し振りにひとりで自由な時間を過ごした。



暇な時間が出来ると、洪水のように頭の中にいろいろなことが

浮かんでくる。


いいことなら良いのだけれど、大抵つまらないことがやってくる。


気がつくと……男性側拒否のレスについてあれこれ考え始めていた。



まぁ、レスについては男性であっても女性であっても

拒否られる側はすごく傷つくんじゃないかな。



そういえば、朝の番組にそういう特集があったっけ!


確か夫に何年も拒否られている妻達がお面をつけて

出演してたっけ。

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