コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
馨真。紫苑さんが序盤にだけ登場します。長いうえに駄文です。文字数控えなきゃって思うのに控えられない。もうこれは病気ですね。
初夜後のお話です。馨さんと紫苑さんの通話シーンから始まります。紫苑さんやけに察しが良いです。かっこいい真澄さんも馨さんもいません。馨さんずっとデレデレしてます。
「…もしもし、どうした?こんな時間に電話なんて。」
『いや。特になにも。寂しかったから手当たり次第に電話かけてただけ〜。』
「26人の彼女には構ってもらえないんだ?」
『そーなんだよね〜。みぃんな寝ちまってら。』
「まあもう2時回ってるしね。てか、なんでこんな時間に起きてんの。」
『ついさっきまでえっちしてたから。』
「…そうですか。」
『そういう馨はなんでこんな時間に起きてるわけ?お前が電話に出るとか予想外だったんだけど。』
「…昼間にコーヒーを飲んだから眠れなくなっただけだよ。」
『……へぇ…ふーん?』
「え、何」
『いや、何もぉ?お前も男なんだなぁって。』
「……怖。なんでわかるんだよ。」
『んー、勘?』
「いや意味不明だって。なんでこういう時だけ察しがいいんだよ。察すな。」
『はは。…最近どーよ。そっちは。』
「2週間前までは引き継ぎだの何だのの書類作業でごたごたしてたけど、今はだいぶ落ち着いてるよ。そっちはどう?」
『こっちもそんな感じ。まさか戦いが終わった後の方が忙しくなるなんてなぁ…。浮かれる余裕もなかったわ。』
「だね。未だに実感湧かないや。本当にすべてが終わったなんてさ。」
『実感湧かないわりには調子乗ってヤることヤったんだな。』
「もうその話は水に流してよ…。てか調子乗ってたわけじゃないし。」
『なあなあ、相手誰だよ。』
「話聞けって…言いません。」
『ケチくせぇなぁ。俺達の仲だろ?』
「教えてほしいんだったらいい加減お金返してくれない?」
『え?あー…ま、いつかな。で誰?』
「…わかってるんでしょ?」
『え、やっぱそうなん?ついに我慢ならなくて合意なしに手出しちまったか。』
「いやいや、流石にそんなことはしないよ。合意の上での行為だから。…紫苑だから言うけど、付き合ってるんだ。」
『…は?…まじ?』
「うん。」
『それはおめでとう…ってか、まじであの真澄先輩を落としたのか?』
「ありがとう。まじで落としたよ。落としたって言うより、僕の気持ちに応えてくれたって言ったほうがいいかな。」
『まじかよ…。すごいなお前。』
「まあね。頑張りましたから。」
その後も会話は続き、時刻が3時を回る頃に電話を切る。結構長い間話し込んでしまったな。いい加減寝ないと。
ベッドへと向かうと、ぐっすりと眠っている真澄さんの姿が目に入る。いつものようなポーカフェイスは今そこにはなく、普段は絶対に見ることができないあどけない表情で、すうすうと小さく寝息を立てていた。
彼との交際は、桃と鬼の戦いに終止符が打たれたあの日、僕が真澄隊長に想いを伝えたことから始まった。振られる前提の告白だったのだが、彼はそれを少し悩んだ末あっさり承諾した。あまりの衝撃展開に頭が追いつかず、今日の出来事は全て夢だったのかもしれないと何度も思った。まあ実際、そんなことはないわけで。
桃と鬼は平和協定を結び、鬼機関,桃機関は共に解散した。それでも鬼の暴走化による被害を抑えるために監視,時として攻撃や殺害をしなければならないことに変わりはない。しかし、先の戦いで多くの犠牲者が出たことで、桃もまた人手不足に陥っていた。そこで、それぞれの部隊から優秀な鬼を戦闘隊員,オペレーター,医療隊員として引き抜き、鬼と桃が共同して一般市民を守ることになった。真澄隊長と僕は練馬区のオペレーターとして選出され、結果として部隊解散の手続きに関する書類やらオペレーティング部隊への異動に関する書類やらに追われることとなった。あの時は桃との戦い以上の辛さを味わったような気がする。いつまで経っても終わらない書類作業に嫌気がさした。紫苑の話を聞く限り、どこも似たような感じだったのだろう。
そんな過酷な日々を乗り越え平穏な日常を取り戻し、今日、僕は真澄さんとセックスをした。正直、ここまで早く関係が進むとは思っていなかった。ゆっくり進展していけばいいやぐらいのつもりでいたが、待つことが嫌いな真澄さんは寧ろ早く進んでしまいたかったようだ。セックスしようと誘ってきたのは彼だった。真澄さんが僕の家に泊まることになり、お互い入浴を済ませた後の出来事だった。突然のことで困惑したが、平然を装って「どっちがどっちをやるか決めてない」だの「なんの準備もなしにそういうことはできない」だのと言い断ろうとした。しかし真澄さんは「俺が下でお前が上だ。準備ならさっきしてきた。道具は一式揃えてある。つべこべ言ってねぇでとっととやんぞ。」なんて捲し立ててきた。ポジションに特にこだわりはなかったけど、あわよくば抱かせてくれたりしないだろうか、とはちょっと思っていた。それがバレていたんだろうか。あっさりと上を譲ってくれたことに驚いた。いや、そんなことはどうだっていい。準備してきたって言っているけど、それでもやっぱり辛いものは辛いだろう。無理はさせたくない。断りたかったが、こういう時の真澄さんは頑固で相手の返事など聞かないので、なるべく痛い思いをさせないようにしようと決心して行為に及んだ。
終わった頃には二人ともぐったりしていた。真澄さんは完全に疲れ切っておりうつらうつらとしているようだった。ちょっとやりすぎたな、と反省する。そんな状態でも起き上がろうとする恋人に、なるべく優しい口調で「身体は僕が拭くんで、真澄さんは寝ておいてください。」と言って横になってもらうと、もう限界だったのだろう、ぐっすりと眠ってしまった。普段浮かべている薄らな笑みはそこにはなく、それだけでなんだかいつもより幼く見える。愛おしさから思わず頬が緩んだ。
体を拭いていると、くすぐったいのか時々小さく声を漏らしてもぞもぞと動き出すものだから危うく変な気をおこしてしまいそうになった。行為中に色んなところに触れたしたくさん達してしまったから、身体中の感覚が鋭敏になって些細な刺激すらも快楽として拾うようになってしまったのだろう。ふと首元に目をやると、そこには自分が付けたであろう赤い跡がたくさん見受けられた。頬は未だにかすかに紅潮しており、目元には涙が跡として残っていた。情事を連想させる様子に、昨晩のことが色々と思い出された。あの光景は自分には刺激的すぎた。頬や耳や首筋を真っ赤に染めあげ、目に薄っすらと涙をため、時に上ずったような時に声にもならないような甘い嬌声をあげて過ぎた快楽をなんとか逃そうと身悶える姿なんて。目にも耳にも毒だった。いっぱいいっぱいになった時に自分を追い詰めている張本人に縋り付き舌っ足らずに名前を何度も呼ぶのは、可愛すぎてもはやわざとやっているのではないかと思った。
思い出しながら着替えていると、突如としてスマホのバイブレーションの音が響き渡った。紫苑からの電話だ。こんな時間にどうしたんだろうと思い電話に出ると、いかにも紫苑らしい返事が返ってきた。練馬,杉並や仲間の現状、最近の出来事などとりとめのない話をして電話を切る。時刻はすでに3時を回ろうとしていた。
流石にもう寝ないと。明日は非番とはいえ、用事もないのにこれ以上起きているのは良くない。ベッドは真澄さんが使っているのでリビングにあるソファで寝ようと思いドアを開けると、背後から名前を呼ばれる。
「……かおる…?」
どうやら起こしてしまったらしい。眠そうに目元を擦っている。寝癖が大胆にはねていて思わず吹き出しそうになってしまう。
「すみません。起こしてしまいましたね。まだ寝ててください。」
「…どこ行く気だ。」
「リビングです。」
「あんなクソ硬てぇソファで寝るつもりか?」
「そうですね。寝れなくはないし。」
「………。」
「…真澄さん…?」
気を遣わせてしまったかな、と思ったけど、真澄さんの様子を見るとそれだけではなさそうだ。俯いてしまって見えにくくなった顔を覗き込んで優しく問いかける。
「どうかしましたか?」
「…俺一人で寝てもスペース余るだけだから、お前もここで寝りゃいいだろ。」
「え…?」
いいんですか?ていうか僕がリビングに行くのを嫌がっていたのは、一緒に寝たかったからなんですか?そう言いかけて、機嫌を損ねてしまいそうだったので止めておいた。もしそうなんだとしたら、どうしよう、すごく嬉しい。告白したのは僕からだし、その日から昨日までは愛情表現のようなことをされたことがなかったから、真澄さんがそういう人だというのはわかっていたけど、彼は本当に僕を好いてくれているのかと時々不安になった。行為中に名前を呼んで縋っていたのも、ただ単に気持ちが良すぎて怖くなったからなのではないかとも思っていた。そんなことはなかったんだな。心のなかに居座り続けていた不安があっという間に消える。真澄さんもちゃんと僕のことを想ってくれている。それを実感するだけで胸がじわじわと温かくなる。
「…その顔やめろ。」
「え、変な顔してました?」
「あぁ。超マヌケな顔。」
「えぇ、そんなに…?」
思いっきり顔に出てしまっていたらしい。偵察部隊として働いていた頃は、敵に考えていることを悟られないために感情を表に出さないようにしていた。しかし一度桃と鬼の争いが終わってしまえばそんな意識もなくなるわけで。随分と直情的になってしまったものだ。元とは言え副隊長失格だななんて考えていると、真澄さんは再びベッドの中へもぞもぞと入って壁側を向いてしまった。きっと先程言ったことが今になって恥ずかしくなってきたのだろう。僕もだけど、この人も随分わかりやすくなった。相変わらずポーカーフェイスは崩さないが、驚いた時は目を少し見開くようになったし、恥ずかしい時は目を合わせようとしなくなった。はたから見れば些細な変化なのだろうが、長年真澄さんに付き添ってきた僕がそれに気づかないわけがない。表情の管理はできなくなったが、観察眼と洞察力だけは衰えさせられない。多くを語らない真澄さんのことをもっと知りたいし、見たいから。
「んで、どうすんだ?」
「そりゃあもちろん、恋人が勇気を出して誘ってくれたんですから、一緒に寝ます。」
「…随分生意気になったじゃねえか。調子のんじゃねえ。」
「真澄さんが調子に乗らせてくれているんですよ。」
「……うるせぇ。ちょっと黙れ。」
そう呟く真澄さんの耳は赤くなっている。おそらく僕が小っ恥ずかしくなるようなことを言いまくったから我慢ならなくなったんだろう。可愛すぎる。何だこの愛くるしい生き物は。今目の前にいる存在にこの激情を無性にぶつけてやりたくなった。ベットに入り、僕より一回り小さい体を苦しくない程度にぎゅっと抱きしめる。
「真澄さん。」
「んだよ。」
「好きです。大好き。」
「……俺も」
予想していなかった返事に少し驚く。てっきりうざがられるか流されると思っていたのに。気持ちを落ち着かせたかったのに、これじゃあ落ち着くどころか余計に愛おしく感じてしまうじゃないか。調子に乗るなって言っていたくせに、調子に乗らせているのはやっぱりそっちじゃないか。抱きしめている腕に自然と力が入る。苦しくなってきたのだろう、真澄さんは僕の腕をぺちぺちと叩き、「やめろ」と抗議してきた。そこでふと疑問に思っていたことを思い出し、真澄さんに質問する。
「そういえば、なんで急にセックスしようなんて言い出したんですか?」
「…どっかのバカが変な勘違いをしてたから」
「…僕のためってことですか?」
「……」
肯定されないが否定もされないので、僕の考えていることは正しいということだろう。流石、元偵察部隊隊長だ。僕の不安に気づいて対処してくれた。自分から受け入れる側を買って出てまでして。
「ありがとうございます。」
「……」
「…真澄さん?」
見ると、再び穏やかに寝息を立てて眠っていた。よほど疲れていたんだろう。僕もいい加減寝ないと。
「おやすみなさい」
最愛の人の頭にキスを落とす。なんだか愛おしくて幸せな夜だったな、と噛み締めながら目を瞑った。