「………」
「……久しぶりやな、らっだぁ」
相変わらず、目が痛くなりそうなほどの金色だ。彼は静止した人々を避けながら俺の方へ近づき、1歩手前で足を止める。
あれほど恐れていた事態だというのに、意外にも俺の頭は冷静で、目の前の彼から目をそらすことも無くただそこに佇んでいる。もっとも彼にかける言葉など持ち合わせていない俺から話しかけるわけもなく、彼も何故か俺を見つめるだけで動こうとしない。不思議な時間が流れ、どのくらい経った頃だろうか、彼の口から息が漏れた。
「…何か、言うことは無いんか」
「………」
それは傲慢じゃないか?きょーさん。だって俺は何も悪くない、そんな叱るような態度でこられても無意味だ。
「俺らは確かにお前の期待を裏切ったかもしれん。でも、それがお前の為だってことくらいわかるやろ?」
「………」
頼んでもないのにお前の為だって、そんなの自己満足だろうに。まるで俺が指示してお前らにそうさせたとでも言いたげだ。これだから、力を持つやつは他人の気持ちを理解できなくて困る。
「俺とは、話す価値もないってか?」
「………」
「オイ、何か言えや。昔みたいに、俺の事をからかってみろや。馬鹿みたいに、笑えや…」
「…………」
突如パキンというガラスの割れるような音がなり、世界が動き出す。目の前の天使は黄金の瞳を見開いて唖然としていた。そりゃあそうだ、だって他でもない俺がきょーさんの魔術を解除したのだから。
「…お前、俺の魔術を……」
正直成功するかは賭けだったが、やはりと言うべきか世界はなんの問題もなく機能し始めた。
魔術の解除は術者が自分よりも格下でなければ行うことができない。つまり今の俺はきょーさんよりも魔術に関しては上だということ。まぁきょーさんより上だと言っても、彼は魔術だけを取れば4人の中で1番弱い。まどろっこしい魔術よりも拳の方が得意なのだ、総合力でいえばきっと俺は彼の膝くらいなんだろうな。受け止めきれていないのかきょーさんは1歩もそこから動こうとしない。
「はは…解除だけじゃなく、俺に透明化までかける余裕あるんか。そりゃあこの姿で人間の前に現れたら場が騒然どころやないな…」
……
視界の端に、串焼きを咥えたぺいんととしにがみくんが見える。タイムリミットだな。俺はきょーさんを背中にぺいんと達の方へ足を進める。
「…ッ次はみどりもコンちゃんも全員連れてくるからな!!簡単に逃げられると思うなよ!!」
次なんかねえよ、ばど。だって出たらお前らが来るってわかったんだから。
■■■
「───でさ、去年は───」
「あ〜ありましたねそんなの。他にも───とか、」
「…………」
「…らっだぁ?」
「……ぇ、あ。何?」
「疲れた?どっかで休む?」
「うぅん〜平気、大丈夫よ」
なんだか、噴水から離れたあたりかららっだぁがボーッとしている気がする。何かあったかというほどの変化ではないが、何もないと言うにはおかしい。しにがみくんもらっだぁのことを心配している。シンプルに城内で新しい刺激を受けすぎて疲れたというのもあるのだろうが……悩ましいところだ。はっ!もしかして俺が無理やり連れ出しただけで、本当は来たくなかったとか…!?えっ、そうだったらどうしよう…楽しんで欲しくて連れてきたのに、逆に嫌な思いさせてたら無意味じゃないか。
「ぺいんと?どした?」
「……えっと…ううん!何でもない!」
「…ぺいんと、」
「ん?」
「俺のこと、連れて来てくれてありがとね。疲れたけど楽しかった」
「!」
「あともう一個、ラタミへのお土産も一緒に考えてくれん?」
そう照れたように笑いながら言う彼に、心が暖かくなってくる。悩んでいたのがバカみたいだ。もちろん!と自覚のある満面の笑みで返せば、らっだぁも安心したように笑った。
「ラタミ…?って何ですか?」
「あ〜、そういやしにがみくん知らないっけか」
「俺のペット。今度会わせてあげるね」
「えっ!良いんですか…!?やったぁ!」
「お土産どんなのが良いの?置物?食べ物?」
「ん〜…置物、かな。俺が思い出見える物で残しておきたいし、多分アイツらも喜ぶ」
「置物なら僕目付けてたのがありますよー!そこ行きましょう!」
「おっ、ナイス〜!そうと決まれば早く行こうぜ!」
「ちょっ、引っ張るなって!」
コメント
7件
すぐ運営のこと敵サイドにするな私
いやっ!だめよっ!!ラタミには私の貯金で全員分のリンゴ飴を買ってあげるんだぁぁぁ!!🫨 きょーさん......これまたすごい魔術使ってんなぁ......
( ºロº)...kyoさんだと...!!また、楽しみになってきたじゃないか...!!