テラーノベル
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吉田仁人side
翌日から俺は探偵になった。
……何を言ってるんだ俺は。正しくはメンバーの行動をよく観察するようになったことでちょっとずつわかってきたことがある。
1つ目。この目線を向けるのはみんな俺にだけ。他のメンバーが違う人と話してる時にその目線を向ける人はいない。なぜ?
2つ目。メンバーと話してる時はまた違う視線になる。ディレクターやマネージャーと話してる時は目の奥がギラギラ燃えているようだが、メンバーと話してる時はどこか寂しそうな顔をする。全員だ。なぜ?
わかったことはあっても疑問は増えるばかり。今はYouTubeの撮影を終え、次の仕事まで楽屋で休憩中だ。俺以外のメンバーは他に仕事があるらしく、今楽屋には俺一人だ。みんなといるといつも騒がしい楽屋がひとりだと余計に静かに感じ、少し寂しさを覚える。
いやいや、なんで寂しくなってるんだ俺は。
よく寂しがり屋やら言われるが俺だってもう立派な大人の男だ。一人でいるくらい余裕だ。
そんなことより今はみんなの視線の疑問を解くのが最優先だ。今はまだMILKとしての仕事が多いのだから、メンバー同士でギクシャクしている暇はない。
もんもんと考えていると柔太朗が映画のインタビューから帰ってきた。
「あれ、じんちゃんだけ?」
「うん、みんな仕事行ってる」
「そっか」
そういうと柔太朗は何故かこの広い楽屋で俺の隣に座った。柔太朗の甘い香水の香りがふわりと俺を包む。
「え?」
「ん?なに?隣座っちゃだめだった?」
「いや、いいけど…」
いつもなら少し離れたところで雑誌を読むかスマホを触っているはずだ。それが今日は隣でスマホを見てSNSをチェックしている。
あ、今チャンスなのでは?あの疑問を晴らすチャンスだ。
「柔太朗、聞きたいことがあるんだけど」
「うん?どうしたの?」
「最近さ、みんなから向けられる視線がちょっと怖くて、何か知らない?」
柔太朗もその視線を向けてくるひとりではあるが、それを言うと誤魔化されてしまうと思ったので、あくまで他の人から向けられて困っているという相談のていでいくことにする。
「うーん、やっぱりそこまでは気付いてないんだね」
「……?なんのこと」
「ううん、ごめんじんちゃん。視線のことは気にしないでいいと思うよ」
なんの事だ。さっぱりわからない。疑問が増えたじゃないか。これじゃ意味が無い!
「その感じ柔太朗何か知ってるでしょ。教えて。」
「えーー、まぁいつかわかるよ」
「いいから教えて。」
柔太朗があまりにも教える様子でないので詰めていると楽屋の扉が空いた。
「おなかすいたー!!!」
舜太が元気よく入ってくる。ドラマの打ち合わせ終わったのか。まだ11時前だぞ。お昼には早い。もうお腹すいたのか、成長期か?いや、これ以上成長されたら困る。
「……じゅうちゃんとじんちゃん2人でいたの?」
そんなことを考えていたらまた舜太があの寂しそうな顔をして聞いてきた。ちょっと目が細くなって口角が下がる。多分他の人なら気付かないだろう。ここ最近俺はずっとメンバーを観察していたからわかるのだ。
「うん、そうだよ。二人でいた。」
柔太朗がはっきりと言う。俺の肩に腕を回し、ふふんと鼻を鳴らしながら舜太を見る。するとさらに舜太の顔が曇る。眉毛が下がり、口角も完全に下がる。なんでそんな顔をするんだ。そんなに辛そうな顔を。
「舜太…」
「ん!!?なにじんちゃん!」
「え?あ、いや、なんでも」
あまりにも可哀想な顔をするので思わず名前を呼んでしまったが特に用事があった訳ではない。ていうかなんだあの切り替えは?俺が名前を呼んだ瞬間太陽のような眩しい笑顔になったぞ。なにか辛いことがあった訳ではないのか?もう分からないことが多すぎる。
俺ははてなマークを頭の上に浮かべながら楽屋で柔太朗と舜太の会話を聞きながら次のバラエティ番組の台本をチェックしていた。
「「ただいまーー」」
すると残りのふたりが帰ってきた。手には紙袋。紙袋には俺のお気に入りのケーキ屋のロゴが入っている。
「お!おかえり2人とも!何持ってるの?」
「ふふん、これお土産ー!たまたまロケ帰りにはやちゃんと会ってさ、買ってこうってなったから!」
「えー!ありがとう!」
「じんちゃんここのケーキ屋さん好きだったよね?」
柔太朗がそう聞いてきた。そうだ。そこは俺のお気に入りのケーキ屋だ。でも今までそこが好きなことは1回言ったか言ってないかくらいだ。どうしてそんなこと覚えてるんだ?
……ダメだ、最近みんなのことを勘繰りすぎてこんなことまで疑ってしまう。みんな優しいから覚えててくれただけだ。そうだそうに違いない。
「うん、好き」
そういった瞬間。みんなの時が止まったように思えた。というかみんな一瞬だけ体が固まった。1番に動き出したのは勇斗だった。紙袋からこれまた俺の好物のエクレアを取り出し俺の手のひらにぽんと乗せてくれた。
「最近みんな忙しいからな!たまにはご褒美も必要だろ?」
「そうだね、ありがとう勇斗」
そういうと勇斗はエクレアやプリンをメンバーに配り始めた。俺は不思議そうにエクレアを見つめていて、勇斗の耳が赤く染まっているのに気付かなかった。
コメント
3件
うわ、読んだ読んだ!この第三話、めっちゃ気になる展開ですね! じんちゃん(主人公)の「探偵になった」って宣言からしてワクワクするんですが、メンバー全員が自分にだけ向ける異質な視線、そして柔太朗の「やっぱりそこまでは気付いてないんだね」って意味深なセリフ…ここ、完全にゾクッと来ました。もはやミステリーですね。 そして一番グッときたのは、じんちゃんの好物のケーキ屋を覚えてた柔太朗と、その瞬間に「時が止まった」ようなメンバー全員の反応。一瞬固まった描写、すごく不気味で引き込まれました。勇斗の耳が赤かったとか、もう細かい演出が上手すぎます。次話が待ち遠しいです!
#ふるっぱー
夜月🍼💙
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