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「Are you here for business or just visiting?」 (仕事ですか、それとも観光ですか?)
「We are here for a vacation. 」
(休暇で来ました。)
「Great! Where are you staying? Oh Downtown San Francisco? You should go to ── 」
(いいね。 何処に滞在するの?え、ダウンタウン? それならあそこへ行ったら ── )
私と桐生さんはサンフランシスコの入国審査で審査官の質問に答えている。
私達は日本を月曜日の夕方に成田空港から出発して時差の関係で同日の月曜日の朝にサンフランシスコに着いた。
入国審査と彼の長い世間話を聞き終わると、荷物を受け取り予約していたレンタカーを借りて桐生さんの運転でホテルに向かう。アメリカは日本とは運転する車線が逆なので違和感があるものの、彼は慣れているのか何の問題もなく運転していく。
「わぁ、私サンフランシスコに来るの初めてです!」
ニューヨークとは全く違う景色に思わず食い入る様に見つめた。
「まずホテルに今チェックインできるか聞いてみよう。できなかったら荷物だけ預けて、ホテルの駐車場に車をとめてそこからホテルの周りを歩いても良いし、それかこのまま運転してサンフランシスコを観光してもいい」
桐生さんはそう言いながら車を走らせた。
「もし颯人さんが疲れてなかったら、少しだけサンフランシスコの街を見てみたいです」
窓の外を見ながら答えると、彼は「了解」と言って高速道路に乗りダウンタウンの方へと車を走らせた。
しばらく高速を走っていると、遠くにダウンタウンが見えて来た。流石にマンハッタンや東京と比べるとかなり小さいが、それでも大きな街だ。
その後、ダウンタウンを横目に見ながら車を海岸沿いに走らせた。「Fisherman’s Warf」という所で駐車場を見つけると、そこで車を駐めた。
「少し歩こうか?」
二人で手を繋ぎながらお店などを散策する。ここにはシーフードのお店が沢山あり、その一つに入って食事をする。
その後二人でお土産屋さんやスイーツのお店に入ってウィンドーショッピングしたり、ちょっとした食べ物を買って二人で分け合って食べた。
午後五時過ぎ、時差ボケもあり疲れた私達は、ダウンタウンにあるホテルに向かった。そこでチェックインを済ませ、部屋でシャワーを浴びると夕食も食べずに寝てしまった。
明け方、なぜか彼に抱かれている夢を見る。彼の唇や指が敏感なところを執拗に愛撫して、声を抑えられなくて思わず甘い声を上げてしまう。
「やっ……あ…ぁんっ……」
突然ぐっと下腹部に圧迫感があり、それと同時に体中に痺れるような快感が走り一気に目を覚ました。その途端、桐生さんが私の胸の頂を甘噛みしながら奥まで腰を突き上げた。
「ああっ……!!」
目の前が快感で真っ白に弾ける。私は体を弓なりにしながら、その激しい快感に耐えた。
桐生さんは私の腰を持ち上げると、波打つよう腰を大きく動かしながら私に深くキスをした。
「……颯人さん……待って……!」
あまりの気持ち良さに、体が意思とは関係なくビクビクと反応してしまう。
「……十分待った。蒼がなかなか起きないのが悪い」
桐生さんはそう言うと、カーテンの隙間から朝日が徐々に差し込む中私を何度も抱いた。
その後私と桐生さんはホテルで一緒に朝食を摂ると、まず始めに予約をしていたアルカトラズの刑務所のツアーに向かった。
アルカトラズは湾の中にポツンと浮かんでいる小さな島でフェリーに乗っていく。ここはかつて凶悪犯が収容された脱出不可能と言われていた刑務所があり、映画の舞台にもなっていてとても有名な観光地になっている。フェリーでその島に着くと桐生さんと一緒に刑務所の中を見てまわった。
「こんな所に収容されてたんですね。でも本当に何とか脱走しようとした人もいるんですね」
私は薄暗く古びて狭い牢屋を見ながら呟いた。脱走しようと試みた話などもあり、ふと先ほどフェリーで来た時の距離を思い浮かべる。
「でも泳げる人だったら対岸まで泳げない距離でもないですよね。颯人さんなら泳げるんじゃないですか?」
からかってそう言うと、桐生さんは声をあげて笑った。
「俺を殺す気か。ここ周辺の海水は流れが早いし水温も低いらしい。それにサメが泳いでるって噂もあるからな」
フェリーから海に落ちないよう桐生さんにしがみつきながら対岸に戻ると、私達は海岸沿いを歩き有名なチョコレート屋さんに行ったりケーブルカーに乗ってあちこち見てまわった。
その次の日は朝から「California Academy of Science」と言う場所に行き、植物園や水族館などを見てまわる。その後桐生さんはゴールデンゲートブリッジを運転して渡り、時々車を駐めて景色を眺めたりお店に寄ったりしながら、半日かけてサンフランシスコの湾をぐるりと一周する。途中、桐生さんが通った大学にも寄って夕方ホテルまで戻って来た。
「サンフランシスコのことどう思う?」
その夜、桐生さんは一緒にベッドに入りながら私に尋ねた。
「すごく好きです。思ってたよりも見るところがたくさんあるし、それに日本やニューヨークに比べると温暖で気候も良くとても過ごしやすいです」
この三日間、桐生さんと一緒に見てまわった場所を色々と思い浮かべた。美味しい物も沢山あるし、気候もいいしとても住みやすいと思う。
彼はそんな私を見て微笑むと、手を伸ばし頬を撫でた。彼は日本にいた時とうって変わってリラックスしていて、とても楽しそうにしている。そんな彼を見て私もつい嬉しくなる。
そうして迎えた木曜日の感謝祭の日、私達は彼の友達だと言うお宅にお邪魔した。
ちょっとした丘の上にある閑静な住宅地の中にある一軒家で、ドアベルを鳴らす。すると何と以前桐生さんと付き合う前に一緒に行った会議で会った、現在サンフランシスコに本社のある会社『Meliora』のCEOで桐生さんの学生時代の友達、ケイラブがドアを開けた。
「Hey, Hayato. Good to see you.」
(颯人、会えて嬉しいよ)
彼は桐生さんと握手をすると、私に向き直りハグをしながら笑顔で私を迎えてくれた。
「Aoi! Welcome to San Francisco!」
(蒼、サンフランシスコにようこそ!)
彼が私を覚えていた事に嬉しくなり、思わずハグを返した。
「Hi Caleb, it’s so nice to see you again!」
(ケイラブ、また会えて嬉しいです!)
「Please come in!」
(どうぞ入って!)
そう言って私達を家の中に招き入れると、彼は家族を紹介してくれた。まず奥さんのオリビアと長女で五歳のエバ、そして去年生まれたばかりの女の子リラ、それからオリビアのご両親サラとディーン、そして何とケイラブと共に起業したCo-FounderでCTOのリアムが私達を出迎えた。
ケイラブとリアムは元々小さい頃からの幼馴染で、ケイラブはこのベイエリアの大学へ、そしてリアムはマサチューセッツにある有名な工科大学へ行った。二人は学生時代に何かのアプリを共同で開発し小さな会社を立ち上げ、後にそれを売ってその資金を元に現在の会社を立ち上げた。
この会社は現在AIを使ったデータ処理技術で、疫病などに対してより適切な薬を開発するデータを提案したり、個人データを元に個々に合った治療薬を提案したりしている。医療関係施設や製薬会社などを主に事業を展開し、アメリカだけでなくヨーロッパそしてアジアにもオフィスを構えている。去年日本にもオフィスを構え、現在従業員約2千人を抱える急成長のスタートアップ会社だ。
彼らに出迎えられ挨拶を終えると、早速桐生さんは男性達と共に裏庭に出てビールを飲みながら野外に設置されたテレビでスポーツ番組を見たり何か楽しそうに話したりしている。
そんな楽しそうにしている彼を眺めながら、奥さんのオリビアと一緒に感謝祭のディナーの用意を手伝った。私が以前ニューヨークに住んでいたと言うと、わざわざテレビでメイシーズの感謝祭パレードの中継を見せてくれる。それを見ながら前菜の用意をしているとエバが何か封筒の様な物を持って私の所へやって来た。
「The tooth fairy came last night.」
(歯の妖精が昨夜来たの)
そう言いながら口を開けぽっかり空いた乳歯の抜けあとを見せてくれた。歯の妖精は、抜けた乳歯を夜枕の下に置いておくと、お金に交換してくれる。
「Nice. How much did you get?」
(良かったわね。いくら貰ったの?)
ふわふわの金髪で人懐こいエバは、先程から私に色々と彼女のお気に入りの物を見せに来てとても可愛い。彼女は「$20」と嬉しそうに言って封筒の中身を見せると、また私に何か見せようと次の物を取りに消えた。
20ドル=約二千円……。なぜ私にも乳歯が抜ける度に妖精が来なかったのだろう……と思っているとオリビアが私のところへやって来た。