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花火大会当日、

俺はいつもよりご機嫌で三十分以上前に会場についてしまった。クソ先輩に言えば笑いものにされるから秘密だけど。

kn「んー?あれ!ショッピやん!」

そう言って肩を叩くクソ先輩。

syp「なんだ、クソ先輩っすか」

kn「なんだとはなんや」

syp「…最近どうしたんすか?妙に早起きだったり十五分前行動したり…あなたらしくない」

kn「…あのな、ゾm

zm「あれっ?皆先きてたん?」

syp「あっ!ゾムさん!」

kn「…」

zm「ふふっ、2人とも最高に似合っとるなぁ」

その言葉そのままお返ししますと言えば、「ありがとうな」と真っ直ぐなその目で見つめられ、若干戸惑う。すると、彼も距離感が可笑しいことに気づいたのか、ピャッと顔を赤くさせ、コネシマの後に瞬足で隠れ、何やら呪文のように早口で言い訳を繰り返していた。

kn「…はは、ゾム。もうそろそろ慣れろや。」

zm「うぅ…だってぇ…」

syp「いいっすよ、これから沢山一緒に遊べばいいだけですし、」

zm「!!っ…」

急に顔を顰めるゾムさん

syp「あ…嫌……でした…?」

zm「…嫌……じゃない…けど…」

kn「…………ゾム…」

zm「……せやな、そうだよな!分かった!一緒に沢山遊んでいこうな!!」

張り付いたような笑顔で俺の手を引いて屋台へと向かうゾムさん。クソ先輩は俯いたまま黙り込んでいたが、しばらくすれば俺たちの後を追いかけるように早足でついてきた


それからは色々な所を回った。手に沢山の食べ物と景品を抱え、先程の空気を忘れるほどワイワイ喋っていた

zm「そんでなー!そいつが…」

syp「へぇ…そんなことが…」

kn「お!あそこ金魚すくいやってるで!」

zm「まじか!」

syp「あー…やってみます?」

zm「ええん!?やったぁ!!」

kn「ふふっ、ゾムご機嫌やなぁ」

zm「当たり前やん!人生で初めてなんやし!」

そう言って無邪気に笑う彼。しかし

syp「あの…初めてなんですか?」

引っかかる言葉に思わず質問すると、

zm「…!あのな…実h」

kn「あー!いや、ゾムは昔海外いたらしくて、日本のお祭りは初めてなんや!!」

クソ先輩のぎこちない顔に、俺は眉間を寄せながらも飲み込む事にした。


kn(…やっぱり……ショッピには秘密にしといた方がいいよな…)


zm(…言おう。言わなきゃ…だって…この目に…興味をもってくれた…大切な…トモダチ…)


zm「ああっ!?また破れた!もー…どーしたらショッピくん見たいに上手くとれんねん…」

syp「ふふっ、これにはコツがあるんですよ。例えば、陰をつくることによって金魚が集まりやすくなったり…他には…」

zm「はぇ、ショッピくんって頭いいんやな」

そうはにかむゾムさん。勿論、俺の体は嬉しさMAXな訳で、ペラペラと次から次へと言葉が出てきた。

zm「お…?お、お?」

そのおかげで頑張って覚えようとしたゾムさんの脳みそはキャパオーバーしたらしく、頭から煙をだしてシャットダウンしていた

kn「んじゃ、そろそろ花火始まるで。」

syp「りょーかいです。じゃ、そろそろ行きましょうか」

zm「…!あ、俺兄に聞いた穴場知ってるで!」

kn「よし!じゃあそこに向かうで!!」

zm・syp「「ラジャー!」」


薄暗い森を抜け、少し開けた場所についた。

kn「あ、やべっ!財布っ…!」

そう言ってUターンするクソ先輩。「バーーカ!!」と内心思いっきり煽ったあと、近くにあったベンチにゾムさんと腰掛ける。綺麗な横顔は脳裏に焼き付くくらい美しい。

zm「なぁ…ショッピくん」

syp「はい…」

zm「もし自分がもうすぐ死ぬってなったらどうする?」

syp「…いっ…いきなりどうしたんすか?」

zm「なんとなく…な。」

syp「…」

syp「そう…っすね…。俺は…いつも通り過ごします」

syp「ゼイタクとか…しないで…あ、でもいつもより皆と話したりしたいっすね!友達皆にお別れの言葉かけて…。穏やかな気持ちのまま…」

zm「そうか…」

そう言うと彼はチラリとこちらを覗いた。相変わらず綺麗な目をしている。夏の妖精のようだなんて詩のような思想に若干自分自身引きながらぼーっとそれを見つめる。


zm「なぁ…もし俺が三日後死んじゃうって言ったら…信じてくれる?」


時が止まったような感覚。

痺れたように動かなくなった指先。

いつぞやの感覚を思い出して目を見開く。

死ぬ?ゾムさんが?

syp「な、なんで…」

zm「実は────。」

ゾムさんの後でひとつ、大きな花火が夜空を彩り、ゾムさんの声をかき消した。爆発音の後に隠れた言葉。彼は笑っていた。

syp「…」

聞こえない言葉。届かなかった言葉。俺はもう一度聞き返す気にもなれなくて静かに息をついた。


あぁ、綺麗だ。


そんな言葉しか出てこなくて思考が働かない。

zm「ごめん…本当に…」























「この目が俺を殺すんだ。」

『さいご』の三月。

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