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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。キッド一派を無事に始末して、彼らの保有していた腕輪を回収。冒険者ギルドへ届けました。これで『エルダス・ファミリー』にも彼らの死が伝わる筈。ダンジョンに挑んで死んだとね。

これにより『エルダス・ファミリー』がどんな動きを見せるか分かりませんが、少しは時間に余裕がある筈。私は夜の私室でベッドに座って愛読書『帝国の未来』を読み返していました。更なる新兵器の開発或いは新戦術の考案、そのヒントがないものかと読み進めます。

また私個人の武装強化を行いたいところ。剣やナイフはありますが、折角魔石を強化できたのでこれを使えないかと思うのですが……。

「ん……ライトセーバー?」

『帝国の未来』の最後の方に、空想に近いと注意書されて遥か未来に実現するかもしれない武器として、ライトセーバーなるものが描かれていました。剣の柄から飛び出す光の剣。確かにこんなもの今の帝国では……ん?

「これ、魔石で再現できないかな……?」

魔石によって炎の剣を産み出すことは出来ます。ですがあれは自分も火傷を負う危険なもの。十二歳の頃、ルミと戦って以来使っていませんが……剣の柄だけ作ってそこに魔石を埋め込めば或いは。

「明日ドルマンさんに依頼してみますか」

「なんだ、まだ起きてたのか?」

おっと、ルイを起こしてしまいました。

「今から休みますよ、ルイ」

「あんまり夜更かしすんなよ、今日は疲れてるだろ」

「別に疲れてはいませんが……」

ルイが当たり前のように部屋で眠っていることは気にしないでください。今更ですね。

その日はそのまま休み、翌朝。私は身支度を整えて工房へ顔を出します。

「ドルマンさんは居ますか?」

複数人のドワーフの皆さんが今日も鍛治仕事に精を出しています。熱いですね。

「なんだ?嬢ちゃん。また何か思い付いたか?」

奥からひょっこり顔を出したドルマンさんに、昨晩思い付いたことを話します。

「柄を作るだけなら簡単だが、それだけで良いのか?」

「魔石を埋め込めるスペースを確保してください。そして可能なら頑丈にしてくれると有り難いです」

「魔石を埋め込むなら空洞を作らなきゃな。強度を上げるには少し手間がかかるが、任せとけ。手の空いてる奴がいるから、明日の朝までには仕上げる」

「いつもお仕事が早くて助かります」

「嬢ちゃんからの要望は最優先にしてるからな。別に媚びてる訳じゃねぇぞ。面白いことになるからだ」

「それは期待してください」

よし、柄については目処がつきました。次は魔石そのものです。

私はそのままダンジョンへ入りマスターを訪ねます。

「マスター、昨日はありがとうございました」

『構わぬ、我も楽しめた。して、勇敢なる少女よ。来訪の理由は?』

私は計画をマスターに話しました。

「どうでしょうか?」

『それならば自らを傷付けることもあるまいな。しかし、魔法を剣の形状にするなど至難の技である。まして魔力を持たぬそなた達人間にとっては尚更に』

「そうですか?」

簡単に出来た覚えがありますが。

『実に興味深い。いや、古の勇者は魔法剣を使っていたな』

「そのお話も興味深いのですが」

『ふむ、そなたは魔石を媒介としてそれを成そうとしている』

「有効だと思いますか?」

『人間は魔法障壁など持たぬであろう?なればそなたの炎の刃を防ぐ手立ては存在せぬ。火力、刃の長さも魔力を込めれば自在に操れる』

「つまり攻撃範囲を広げられると」

『そして重さも柄の重さのみよ。そなたに適した武器となろうな』

小柄で非力な私にピッタリでした!?

『であるならば、今少し魔石の扱いを熟達させねばなるまいな。来なさい、陽が落ちるまで相手をしよう。安心しなさい、怪我をしても我が癒す』

「はい!」

なんだか稽古の時間になってしまいました。

マスター曰く、魔法とは魔力を糧とする精霊の力を借りることで行使できる。精霊にも好む魔力の質があり、それが属性となって現れると。

魔石は好みの魔力を詰め込んだものですから、属性は固定されていますが魔力を持たない人間でも扱えるのだとか。

『魔法とはすなわち願いの力である。願いの強さは魔力と反応してより強い魔法を産み出す』

「願いの力」

『難しく考えるでない。想像力を働かせるのだ。それに精霊は答える。これが魔法行使の基本である』

「ふむふむ」

つまり、具体的にイメージする力。

『時に、魔法剣は如何程維持できたのであるか?』

「当時は三十秒が限界でした」

『当時十二歳の幼子がそれだけ維持できたことを驚くべきであるな』

「マスターの言う通りでしたら、私にとって剣は幼い頃から慣れ親しんだものです。だから、イメージも簡単でした」

『なれば、成長した今はより具体的なイメージを持てよう。我が癒す。魔法剣を産み出してみよ』

「はい」

熱いのは嫌ですが、今の私にどれだけ出来るか気になりますし。

魔石を強く握り、眼を閉じて頭に剣をイメージします。

「炎よ!」

ゴウッッ!!と言う音と共に燃え盛る炎の剣が生み出されました。十二歳の頃よりずっと洗練された形で。細部まで自分の剣そっくり。そして熱い!?

『ふむ、剣そのものの形であるな。ショートソードであるか』

「私の愛用している剣ですっ!」

熱い!痛い!手が焼けてるっ!

『もう良いぞ』

マスターの言葉でイメージを断ち切ると魔法剣は消えましたが。

「ううぅ……!」

両手が焼け爛れてしまいました!

『見せなさい』

近寄ってきたマスターは私の両手に掌を向けました。

『聖魔法は苦手なのであるが、この程度なれば容易い。癒しの光よ、彼の者の傷を癒し苦しみから解き放て』

マスターの掌から暖かい光が現れると、私の火傷が凄い早さで癒えていきました!

「っ!マスター、これは?」

『治癒魔法である。それも初歩であるな。我はワイトキング、聖魔法とは相性が悪くこれ以上の魔法は学んでも使えぬ』

「初歩でこれなんですか!?」

傷を一瞬で癒すなんて、まるで奇跡です!

『神の御業に見えよう?これが魔法である。精霊の力は万物の力。魔力と適性さえあれば余程の事で無い限り実現されるものである』

「魔法を使える皆さんが羨ましいです」

それを考えたら人間は非力なものですね。

『人間は魔法を使えぬ。が、代わりに魔石を使う。この地域では普及しておらぬようだが、そなたの話を聞く限り南の大国は魔石を文明に適応させておるとか』

「その通りです」

市民の生活にも魔石が根付いてるみたいですし。

『その知恵こそが人間の強みである。終わることの無い創意工夫、探求心がそなた達を覇者とした』

「探求心……」

『そなたの未知を知ろうとする姿勢は過ちではない。以後も精進せよ』

「はい!」

なんだろう、皆には変人扱いされているのに、ワイトキングのマスターから誉められるなんて不思議な気分です。

『では、繰り返し魔法剣の生成を行う。どれだけ継続できるか時間を計らねばならぬ。安心せよ、すぐに我が癒す』

「!?」

あっ、これずっと痛い奴だ。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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