◇◇◇◇◇
いきなり、紅蓮頭の男がリンドウに仕掛けてきた。紅蓮頭の男の固有スキルは速攻。速攻は一般的な俊敏の上位互換スキル。
攻撃の速さが特徴の短剣二刀流だった。
一瞬でリンドウの前に移動して、リンドウの首元に攻撃を仕掛けた。
それをリンドウは簡単にバックステップで躱す。
まさか躱されると思っていなかった紅蓮頭の男は一瞬立ち止まり、ニヤリと笑った。
紅蓮頭:「ほう。面白いね。」
リンドウ:「これで速さ自慢なのかしら。滑稽ね。」
男はブチギレた様子で次の攻撃を仕掛けた。
次の攻撃も首元の急所を狙った正確な攻撃だが、それをリンドウは、今度は躱すことなく刀で弾き飛ばした。
男が一瞬のけ反った体勢になったところを、リンドウが腹に蹴りを入れて、男の体が後方にふっ飛び、仰向けに倒れた。
そこをリンドウも素早く追いつき、斬りつけると見せかけるが、これがフェイント。
男も防御に入ろうとするが、リンドウは男の心臓の位置に刀を突き刺した。
と同時に刀を引き抜き、バックステップで元の場所に戻っていた。
男が攻撃を開始してから数秒の出来事だった。
男の胸から血が垂直に噴き出る。
と同時に紅蓮頭の男は絶命していた。
リンドウはすでに刀についた血を払って鞘にしまっていた。ただし、体の部分には一滴の返り血も浴びていない。
圧倒的な力の差を見せつけて、紅蓮頭の男を殺してしまった。
これだけの差があれば、紅蓮頭の男を生かしたまま捕縛することも可能だったのだが、リンドウはそうしなかった。
理由は、ギルド領都での支部長との話に遡る。
前回の襲撃で捕縛したヘルサイズ黒兵の6名は、その後自ら命を絶っていた。
正確にいうと秘密を守るためにヘルサイズに命を絶たれたという表現が正しい。
ヘルサイズに送られてきた者は、まず、この呪術の様なものを受け入れて承諾することが条件になっている。半ば強引にではあるが。
そして顔を覆う専用のマスクが支給されて、ここで初めてヘルサイズの一員として活動を許されるのだ。
ここから、殺戮者としての訓練を経て、どこかしらの地域に配属される。
この呪術の様なものは、幹部になるまでは解呪されない。要するにマスクを被っているものは、生かして捕縛しても意味はなく、逆に苦しめるだけなのだと教えてくれた。
ヘルサイズの一員は、幹部になるというモチベーションのためだけに殺戮、犯罪を繰り返していくプログラムされた組織の中で成り立っている。捕縛は死を意味する。
紅蓮頭の男の死と共に、すでにヘルサイズ雑兵は独自の判断で散り散りに霧散していた。
またもや、リンドウ一人のせいで第二王子暗殺計画は失敗に終わった。
◇◇◇◇◇
ゼルダンが真っ先にリンドウに声をかけた。
ゼルダン:「まったく、凄まじい戦闘力だな。」
リンドウ:「これくらいはなんでもないわ。
あなたも王子の護衛なら精進することね。
すぐにリオに抜かれるわよ。」
ゼルダン:「うーん。言い返せねえな。」
これでゼルダンに火が付いたのは後日の話。
近衛兵団の訓練がいつも以上に厳しくなったとか。
リンドウは、疲れも一切見せずにゼータの上に戻ってきた。
シャビル:「リンドウ。ありがとう。また救われたね。」
リンドウ:「いいのよ。私も狙われているみたいだしね。」
リオ:「リンドウ。どういうこと?
紅蓮頭の男から受け取った紙に何が書いてあったの?」
リオに聞かれて、リンドウは懐から紙切れを出してリオに渡した。
リオ:「え!?手配書!」
その紙切れには、DEADorALIVEという文字、闇懸賞金の額、それにリンドウ・ササキと書かれた、リンドウの似顔絵付きの手配書だった。
シャビル:「リオ。私にも見せてくれるかい?」
リオはその手配書をシャビル王子に手渡す。
シャビル:「うーん。なるほど。
まさか、Eランクハンターに闇懸賞金がかかっているとはね。しかも、いきなりこの金額は聞いたことないくらい破格なんじゃないかな。
どういうことなんだろうね。」
リオ:「そうなんですか。リンドウが賞金首……。」
リンドウ:「そうなのね。この額ってどれくらいなの?」
シャビル:「そうだね。Aランクハンターと同じくらいじゃないかな。」
リンドウ:「へえ。安く見積もられたわね。」
リンドウは闇賞金首になったことには、まったく動じていない。むしろ、その金額が安いとまでいう始末。
リンドウに掛けられた闇懸賞金は、なんと1000万ペロ!
聞いた話だと、今までで闇賞金首になった最低ランクはCランクで、これもその人がやったことがヘルサイズ幹部の気に触ったとかで嫌がらせのために無理やりつけられた闇懸賞金で、その時は10万ペロだったらしいが……。
特例を除くと通常はBランク以上でしかお目にかかれないものらしく、最低100万ペロ〜最高500万ペロ辺りだという。
Aランクだと500万ペロを超えてくる。
Sランクだと1億を超えてくるらしい。
伯爵領都支部長バルカンさんの昔の闇懸賞金がたしか600万ペロだったと言っていた。
リンドウは闇懸賞金なら、すでにバルカンさんを超えているが、戦闘力的に考えるとたしかにリンドウの金額は比較して安いということになるだろう。
ただ、今回紅蓮の男を瞬殺したことが報告されれば、闇懸賞金は上がるかも知れない。
リンドウ:「とにかく、出発しましょうか。」
リオ:「そうだね。ゼータ!もう大丈夫かな?」
ゼータ:「ワオ!」
シャビル:「じゃあ、ゼルダン!出発しよう。」
ゼルダン:「承知です。殿下。」
王子御一行様は、再度王都に向けて出発。
最後の森に入っていった。
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