hrfw
不破ちょい病み
約3000字
『晴、今から海いこ』
恋人から突然言われた言葉。
深夜0時、こんな時間の真冬の海に行きたいなんて⋯
「これからですか?危ないし暗いし寒いし、行かない方がいいですよ」
『行きたい』
焦点のはっきりしない目は僕の足元だけをボーッと見つめている。
彼はたまに限界を迎えると、僕に海へ連れて行ってくれ、とお願いしてくる。
その上彼はこのお願いをするとき絶対に譲らない。僕が「行く」と立ち上がるまで何度でも『行きたい』と言い続ける。
それがわかっているから、無視はできなかった。
風が強く冷たくて、マフラーもコートも着てきたのに全く意味を成していない程に僕の体温を下げていく。
彼も同じように風を浴びているはずなのに、全く気にしていない、というより、全く感じていないように見える。
ぴちゃ、ぴちゃと押し寄せる海の波を踏む彼は、そのまま奥へと行ってしまいそうに思える。
『⋯晴、』
「なんですか?」
『晴は、どうすればよかったと思う?』
「⋯何をですか?」
『俺は間違ってなかったと思ったのに⋯⋯違ったんかな』
「⋯⋯」
『俺がいけなかったんかな⋯』
そう言って、波に並行に歩いていた彼は突然向きを変え、奥へ奥へ入っていく。
危なくなったら止めに行こう、と構えつつ、まだ足は動かさない。
『別に死んで欲しくてあんなことしてた訳じゃない⋯』
その一言が全てを物語っていた。
以前、不破さんに依存していた一人の女性の話を愚痴として彼から聞いた。毎回とんでもない高額な品ばかり頼んで不破さんは喜んでいたが、他のホストやお客さんに暴行を加えたりしたこともあり、出禁にさせられたという。
しかし話の内容的に、その子が不破さんのお客さんの中でいちばん彼への依存度は高かった。
おそらくだが、命を絶つレベルまでくれば、あの子だと容易に察しがついた。
『そんなに苦しかったんなら⋯来てくれたって良かったのに⋯』
「でも出禁になったんですよね?」
『⋯そうやけど』
不破さんは、僕が誰のことを言っているのかわかったことに気づいていない。
そこまで頭が回らないほど、傷ついたんだろう。
でも僕はその子を知らないからその子を庇う理由がない。だから、せめて不破さんを慰めてあげたい。
「僕も気持ちわかります⋯桜魔でも、毎日死人が出ます⋯僕らが助けられるのはほんの一部だけだから」
『⋯⋯』
不破さんは太ももあたりまで浸かったところで振り返り、彼と目が合う。
月の光が海に反射して、顔がはっきり見える。人間味を感じさせない、冷ややかな表情だった。
頬を伝う涙も美しくきらめいている。
『晴は⋯、辛くないん』
「辛いです。 でも毎回苦しんでいてはキリがないんです⋯そんな気持ちを引き摺っていては、仕事にも影響が出てきて研究は進みませんし」
『仕事なんか、、手が付けられねぇよ⋯』
「⋯これはあくまで僕の考え方ですが、大事なのは、
誰かの死を悲しむこと
より、
次の誰かを死なせないこと
じゃないですか?」
『⋯っ』
彼の隣まで歩くと、波は遠ざけたがるように強く僕を浜辺へ戻そうとする。
でもその力より、不破さんに近づきたい僕の気持ちの方が強い。
太ももの高さまで来ると、そのまま波に飲み込まれてしまいそうなほど水流が強い。踏ん張っていないと流されそうだ。
でも不破さんはどうってことないように立っている。
「不破さん、帰りましょう。風邪引いちゃいますから」
『⋯⋯晴』
「⋯はい」
『⋯⋯俺は、まだ生きてていいのか?⋯あの子みたいな子を出さないために、、、この世で生きてていいのかな⋯?』
僕を見上げる顔は絶望していて、でもどこか期待するような眼差しだった。
水の幕を張ったアメジストの瞳は美しく、そして何よりも儚い。
手を掴み自分の方に引き寄せ、ギュッと抱きしめる。
僕よりも一回り小さく細い体は、本当に海に溶けていってしまうんじゃないかと疑うぐらい華奢だ。 腕の中で震えながら泣く姿に胸が締め付けられる。
『⋯ッはる、グスッ⋯、んう゛⋯』
「大丈夫だよ、誰も不破さんを咎めたりしないから⋯何より、僕が守ってあげるから」
頭を支えながら上を向かせ、血色のいい唇にキスをする。
彼は欲しがるように舌を絡ませてきて、唾液が混ざり合う。苦しそうに肩で息をする様子が可愛くて、頭を支える手とは逆の手で背中をなぞり、腰あたりを撫でる。
『んッ♡はるぅ♡⋯俺、晴の隣で生きたい⋯ずっと隣おりたいよぉ⋯♡』
「もちろん、ずっと支えてあげるよ」
『⋯また、苦しくなったら⋯たすけてくえる⋯?♡』
上目遣いやら舌っ足らずな喋り方やら、媚びまくる不破さんがあまりにも可愛くて、この深い深い海に沈めたくなる。
彼が苦しむ顔はいくら見ても飽きない。嫌がるくせに結局は僕を求めてくるところも、行き場がなくなった末路でカッコ悪くて好き。
キュートアグレッション、とはこういう事なのだろうか。
だったら、彼はその対象にもってこいだ。ただまぁ、僕以外には絶対に触らせないけど。
「⋯助けてあげる」
下のモノが猛烈に痛みを訴えることを必死に隠しながら、不破さんを強く抱き締め持ち上げる。
お姫様抱っこを、不破さんはいつしか嫌がらなくなった。
『んへへ、はるぅ〜♡』
「なんですか?」
不破さんはニヤニヤしながら下を指さした。
生憎、隠しきれていなかったようだ。
『バレバレやで、勃ってんの♡』
ちょんちょんと頬をつつく彼は腹立つほどにメスガキで、ほんとに沈めてやろうかと一瞬悩んだが思いとどまった。
あれだけ絶望していたから慰めてやったのに、今となっては形勢逆転。
ふざけるな、手加減とか絶対しない。
そう心に誓い、プルプルな唇にキスをする。
「じゃあ⋯相手、してくれますよね?♡」
『⋯しゃーないな〜、励ましてくれたから、頑張ったげる♡♡』
海から出ると、水に慣れて暖かく感じていた足を風が冷やす。ものすごく冷たくて寒くて死にそうだ。
「さっっっっっっむすぎる!!!!」
『はる、こんなんが寒いとか雑魚すぎるやろ、まぁどうせ⋯この後動いて暑くなるしええか♡』
「はっ⋯あんた、それ無自覚で言ってんのか?!////」
『⋯ふふ⋯♡』
『無自覚なわけないやろ♡♡』
色気たっぷりの目線に、体は電気が走ったようにビリビリと震えた。ゾクゾクした高揚感も後からじんわりきいてきて、車に颯爽と乗り込む彼を憎らしく思う。
はぁ⋯また誘導された⋯
でも期待する彼はどこまでも可愛い。いっその事車で解放してしまいたいけど、とりあえず我慢だ⋯。
帰ってからのお楽しみにしとこう⋯
続きを書くのをとても迷っています
Hの流れ書くべきかいらないか⋯どちらか教えて貰えたら嬉しいです!
読んでくださりありがとうございました!
コメント
3件
最近テラー開いてなかったから久しぶりに見た...最高😇続き気になります是非お願いします🥹
やばい。。すき。。😭見たすぎる