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リンクは、廊下を駆け抜けながら剣を振るい続けていた。
マスターソードが、
邪に触れるたび、
淡い光が走る。
斬っているのに、
血は流れない。
代わりに、
黒い靄のようなものが
ほどけ、
消えていく。
「───怨念───」
低く、
かすれた声。
それは言葉というより、
感情の残滓だった。
「生徒だったもの」が遺していた、
未練。
恐怖。
後悔。
斬られるたび、
それらが剥がれ落ち、
空気が軽くなる。
背後では、
バブルとエンゲルが
遅れずについてきていた。
「来る!」
リンクが声を上げるより早く、
横合いから
邪が跳ねた。
――不意打ち。
だが、
一瞬の迷いもなく。
バブルの古代の刃が閃く。
光が走り、
敵の存在そのものが
分解されるように消滅した。
「……よし」
リンクは振り返り、
二人を見る。
「二人とも、
慣れてきたな」
その言葉に、
バブルは一瞬きょとんとし、
次に小さく胸を張った。
「……当然です」
エンゲルも、
静かに頷く。
恐怖は消えていない。
だが、
恐怖に支配されてもいない。
それを確認して、
リンクは再び前を向いた。
次の邪を祓いながら、
リンクの意識に、
柔らかな感触が触れる。
《……リンク》
ウツシエからゼルダの声。
それは、もうチャット機能は必要ないことを示唆した。
耳を澄ませば、戦闘の最中でも、 はっきりと分かる。
《少し、落ち着きましたね》
「……ああ」
リンクは短く答え、
剣を振るう。
「怒りが、 消えたわけではない」
《でも、 今は“向ける先”を 見失っていません》
リンクは、
一瞬だけ目を伏せた。
「……さっきまでは、 危なかった」
《ええ》
ゼルダは否定しない。
《あなたは、 間違った怒り方を する人ではありません》
《ただ…… 抱えてきたものが あまりにも多い》
リンクは、
次の邪を祓いながら、
静かに息を吐く。
「……俺は… 救えなかった人が、
多すぎる」
廊下の奥で、
また一体、
怨念が消える。
《それでも》
ゼルダの声は、
はっきりしていた。
《あなたは、 “救えなかった”で 終わらせない》
《今も、 目の前の誰かを 救い続けている》
リンクは、
マスターソードを
強く握った。
「……剣が、
重い」
《それは……。 あなたが、 命を軽く扱っていない証です》
一瞬、
リンクの口元が
わずかに緩む。
「……ありがとう」
《こちらこそ》
リンクは、
バブルとエンゲルを確認し、
再び前進する。
マスターソードは、
変わらず光を放っていた。
怒りではなく、
使命として。
怨念を、
静かに、
確実に――
祓うために。