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「ベットはどちらが良いとか希望はありますか?実は私マットレスが苦手で床で寝ることが多いと思うので、ミーア様選んでしまってください」
前職では各地のホテルで色々なベットに遭遇した。
私は柔らかすぎるベットが苦手なので、朝、確実に体が痛くならないのは床だった。
「では、廊下側でお願いします」
この寮は個室を選べばお手洗いとお風呂がついているが、2人部屋の人間は共用のお手洗いとシャワーを使わなければならない。
廊下側を選ぶということは、彼女は夜にお手洗いに行く可能性が高い。
「夜、電気つけて寝たいタイプですか?私はどちらでも気にならない人です。ミーア様の希望を聞かせてください」
お手洗いも電気がついていた方が良いだろうが、まれに宗教的に電気をつけて寝なければいけない人もいる。
ミーア様は事前調査ではそう言ったことはなさそうだが彼女の希望を聞いて彼女にあわせることにした。
「実は電気つけたままが良いです。良いのですか? 眠れなくなったりしませんか?」
暗くなければ眠れない繊細だった私はもういない。
前職で私はベットの上でひたすらにノートに、嫌なやつの名前を書いた。
人にムカついたりすることはあってもそれを外に出さないのが珠子だった。
悪口は言わない、同調しないのが女子の中で長く生きていく一番大切なルールだ。
しかし、人を悪く思うことは当然あるのでノートに名前を書いても何も起こらないが名前を書き続け気がついたら寝ていた。
「全く気にならない人なんです、私は。貴族令嬢としてはとても粗野なところもありますが、外ではしっかりと品位を保つべきでした。気がつけば周りに嫌われていました」
ミーア様はイザベラの我儘の被害の当事者ではない。
周りからの噂を聞いてイザベラを警戒しているだけなので、彼女を落とす難易度は低い。
「このような気さくで素敵な方なのに、みなさま誤解されているだけですわ」
ミーア様の言葉にもう少しで完全に彼女を落とせると確信した。
「ミーア様、ピンを選んでください」
私は2種類のピンを出した。
これはレナード・アーデン侯爵から購入したピンクサファイアのネックレスと、ピンクルビーのネックレスをバラして作ったものだ。
入寮予定の新入生62人分を作成している。
イザベラの瞳の色は黄金で、この世界では瞳の色に合わせたドレスを着るのが基本のオシャレらしい。
非常識人認定されているイザベラが髪色に合わせたピンクのドレスを着たら、基本のオシャレさえ知らないと思われるだけだ。
だから、レナード・アーデン侯爵のお店で購入したピンクの宝石は自分用には使わないことにした。
「すごい可愛いピンですね。これはピンクルビーですか?」
私は彼女がピンクルビーを見極めたことに驚いた。
ピンクルビーとピンクサファイアの見分けは実はついていなかった。
それでもレナード様の前では見分けられたと主張した上で購入してしまった。
「ミーア姫は本物を見抜く力がありますね。こちらはピンクルビーのもので、こちらはピンクサファイアのものです。区別のつきづらい2つの宝石です、ミーア姫。可愛らしいあなたの瞳に合うと思い用意しました」
私はレナード様の真似をしながら、ミーア様の髪を編み込みセットした上で仕上げにピンを刺した。
「ミーア姫?」
ミーア様が目を丸くして私を見ている。
「実はこのピンはレオハード帝国で、レナード・アーデン侯爵から購入したネックレスをバラして私が作ったものなのです。仲良くなった記念に受け取ってください」
私が笑顔で言うとミーア様は突然泣き出した。
「レナード様の、手が触れたピンなのですか? 私、ずっと彼をお慕いしているのです。どのような方でしたか? お話はされたのですか? このピンを一生大事にします」
私は深く頷いたが、レナード様は白い手袋をしていたので生では触れてはいない。
どうやらミーア様はレナード・アーデン侯爵の緩いファンではなくガチ恋勢だったようだ。