最初に言葉を交わしたのは高校2年生のとき
元から顔は知ってた
そりゃあんなでけーやつ目に入ってくるのは当たり前
バレー部って聞いてすぐ納得できるような身長とその整った顔、年齢にそぐわない落ち着き様
毎日のように木兎光太郎先輩に呼び出され、いつものように世話をする忙しい人
イケメンだし、女子からモテるしで正直あんま好いてなかった
自分とは無関係とか思ってたあの頃
の自分を殴り倒したい
絶賛片思い中ですハイどうしてくれるんですか赤葦くん
2年生になり新しい教室で席に座ったその日、目の前に広がるバカデケェ背中を眺めて一日は終わった。
「あんの野郎!ただでさえデカいんだからちょっとは配慮しろよ後ろにさぁ!」
大きく不満を漏らす友人(Aとする)との帰り道
「まあまあ、悪気があるわけじゃないし、それに…」
俺体を上から下まで凝視し
「後ろのやつにも少し…問題があるんじゃないかな」
「なっ!このやろ!」
短い足でキック喰らわす
そうです。ワタクシめっちゃ身長低いんです。
男子高校生2年、平均身長169センチ
俺の身長159センチ
どこでついたんだよこの差はよぉ!
小学生の頃はみんなとほぼ一緒だったのに…
「落ち着けって、まだ赤葦と話したことないんだろ?少しは仲良くなれよ前後なんだし」
「うーんまあ仲良くなるのはいいんだけどさ、あいつあんまりいけ好かないんだよな」
「なんでさ?めっちゃいいやつじゃね?」
「いや、いいやつなのは分かんだけど、ちょっと落ち着きすぎててなんか絡みづらいっていうか、身長高いくせにイケメンで女子にモテるところがムカツクというか」
「絶対最後だけだろww」
「とにかく!なんか苦手なの!」
「まあ、頑張ってくださいな」
友人と赤葦の話題で下校した
その翌日
「夢くん、おはよう」
「あっ、え、とおはよう」
急に赤葦から話しかけてきた
話すというか挨拶だったけど
(めっちゃびっくりした、案外フランクなやつなのかな? )
初めて言葉を交わしたのはその一瞬
でも、衝撃的だったせいか今でも鮮明に覚えている
「んんんーーーーー」
授業が始まるとまた憂鬱な気分になる
授業が嫌いなわけじゃない、それなりの頭いいですし?
でも問題はやっぱり
このデケェ背中!さっきの挨拶ですこーし上がった好感度だだ下がり
(もうめっちゃ邪魔!)
「おーい夢、黒板みえてるか〜w」
先生ですら笑いものにしてくる
周りの奴らも俺を見て笑う
(気づいてんなら席どうにかしろよ!)
恥ずかしさで顔真っ赤っか
ちょっと涙すら出てきそうのなったその時
「夢くん、席変わろう」
眼の前のデケェ背中が正面を向く
うわイケメン
じゃなくて!
「あ、えいいの?か?」
「うん、気付けなくてごめん、俺無駄にデカいからさ」
そういって席を立ち上がり、机を移動させ始める赤葦
それに置いてかれないよう急いで席を動かす
「赤葦は優しいなぁ、夢は感謝しろよ〜」
またクラスで笑いが起きる
ありがたいけど、これはこれで恥ずかしい
少しの感謝と「無駄にデカいから」というセリフへのイラつきを覚えながらも授業の続きを受ける
放課後
A「良かったじゃん、席変えてくれて」
Aがいつものように話しかけてくる
「まあ良かったんだけどさぁ、ちょっとムカツクというか悔しい」
「しゃーないじゃん、お前が小さいのは事実、赤葦がデカいのも事実、諦めろ」
まあそうなんですけど……
「てか、ちゃんとお礼言ったか?」
「あ、」
「おまえ…」
すっかりお礼を言うの忘れていた
後ろの席を見ると赤葦はもういない
「あれ、もういない」
「そりゃそうだ、もう部活に行ってるだろ」
赤葦はバレー部
そしてうちの学校はバレー強豪校
そりゃ練習も大変なんだろう
「明日言えばいいか…いやなんかそれはそれで気まずい…」
「バレー部ってことは体育館にいんじゃね?帰り待っててやるから少し行ってこいよ」
「そうだな…わりぃちょっと行ってくる!」
Aのアドバイスを受け、体育館に直行する
バシーンバシーン
体育館に近づくにつれ、音が大きくなっていく
チラリ
体育館の入口から顔を覗かせる
みんなデカぁ……
バレー部ぼ奴らは皆身長が高く、威圧感がある
そんな奴らがいっぱい居るところで長居できるはずもないので、すぐに赤葦を探す
(赤葦赤葦は〜っと)
あれ、どこにもいない
トイレにでも行ってんのかな?
そう思いながら体育館を眺めていると
「あれ、夢くん?」
後ろを振り向くと壁…じゃなくて体操着姿の赤葦が立っていた
近っっっっ!
びっくりして後ろに跳ねる
「あ、赤葦」
「夢くん、何か用事でもあった?」
あ、そうそう用事があってですね
「体育館に」
あ、違いますアナタです
と言おうと思ったのだが、焦りに焦った俺は
「うん、そう!あの〜体育館見たくて!そのーはい!」
とかいう意味のわからん言葉を発してしまった
赤葦も不思議そうな顔でこちらを見つめる
「なら、中の少し入っt…」
恥ずかしくなった俺は赤葦が話し始める前に
「今日は十分満足したので帰ります!では!」
と言い残してすぐにAが待つ教室へ向かった
「おーどうだった、ちゃんとお礼言えたか? 」
と薄ら笑いを浮かべ聞いてくるAに
「言えなかった〜〜〜〜〜もうイヤだ!」
と半べそかきながらすがりつく
事情を説明すると笑いだすA
「ッッハハハハ!そりゃwそりゃねーわww」
「俺だって、すぐに言って終わらすつもりだったんだ!」
「まあまあ落ち着けよ、また明日があるだろwちゃんと言うんだぞ」
「言われなくても分かってる!」
そういって教室をあとにした俺達は帰路についた
そうして波乱万丈の一日は幕を閉じた
〜〜体育館では〜〜
「あれ!赤葦どうした?顔真っ赤だぞ!」
「いえ…何でもありません…」
何かが起こり始めたようです
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!