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昼下がり
熱心に掃除機をかけて今日の特別な客を待つ
部屋の隅まで片付けてチラッと鏡に映った自分を見た、ジャージにTシャツ..やっぱり着替えようかな
そうぼんやり思いながら掃除機を戻した
時計を見ても先程からあまり進みがない
少しそわそわしている自分を落ち着けるように急いで寝室のクローゼットに手を掛けた
新しいTシャツにいつも履いてるデニム、選んだ服を身体に当てあまり普段と変わり映えがない姿に落胆しながらもカレに少しでもよく映りたいと思ってしまう
またみんなで一緒にショッピング行きたいな
忙しくて最近はみんなで一緒に出掛けることもなくなった、こうして束の間に会えるのはどちらかの家ばかりでそれに今までは友達としてうちに来てくれてたから..
2週間ぶりの逢引きに早く会いたいと焦がれる
…普通のデートもしてみたい
でも叶わないことだってわかってる
僕だってちゃんと分別があるからと
次にデニムを手に取った
履こうとした瞬間にチャイムが鳴る
あれ、予定より早い
いつもだったら着く前に先に連絡くれるのに
デニムを履いてリビングに戻る
モニターも確認せずに
”はーい“と声を掛け解錠し急いでチャックを上げた
あれ?モニターが消える瞬間に一瞬だけ目に映ったシルエットが待ち人と違う気がした
携帯を見たけどやはり連絡はまだだった
不思議に思いながらモニターの前でもう一度チャイムが鳴るのを待った
2回目のコールに今度は応答を待ってみるが返事はない
玄関に向かいドアスコープを覗いた
今度は見知った相手で急いで解錠してドアを開けた
「ど、どうしたの?」
「よっ!」
「よっ!って急に!なんかあった?」
「お邪魔しまーす、はいこれ!
てか誰か来るの?確認せずに開けて」
「え、上がるの?う、うん、その予定なんだけど..ありがと」
「誰?りょうちゃんにしては小綺麗にしてるじゃん部屋 あ、はいこれ」
「う、うん?ねね..元貴今日ね..」
「それ、限定のイチゴのクッキーサンド
今予約でしか手に入らないらしいよ!もらった」
「うん嬉しい..」
「ふーん、ねぇお腹空いてない?」
ちゃんと話さないとと思うのに
元貴は僕の話を遮って話を続けた
その時携帯が鳴る、チャットアプリの通知が立ち上がる
”もう着くよ“
嬉しいはずなのに頭の中がごちゃつく
元貴は普段は誘っても来ないのに
今日は外へは出ない日だからとか..これまでも色々と理由をつけて2人で誘っても断られる事しばしば、まぁ日々忙しいからいいんだけれど..今日はどうしたんだろう
でも今日はそれより何より頭の中を占めているのは、ずっと友達としてうまくやってきたのに内緒にして隠し通すはずだった僕の秘めた片想いがひょんな事から彼にバレて絶望が待ってるかと思ったら相手も僕と同じ気持ちなことを打ち明けられた
素直に嬉しくてそれからやっと2人の時間が合って僕の部屋で会えることになって..
だから今日は特別な日になる予定だったんだけどな
でもそんな事知らない元貴が笑いながら僕をからかった
「へー紹介してよ」
「うん..そうね」
「俺の知ってる人だった?ねぇ何か隠してる?」
「か、隠してないよ」
その時チャイムが鳴った
「あっ!」
急いで戻ろうとしたらすっと元貴が僕の脇から抜けて先にリビングに戻り解錠ボタンを押す
「ふーん」
モニターを消した後で笑ってこちらを振り向いた
あ、相手..分かっちゃったよね?
内緒にしててごめん
仲間外れにした訳じゃないんだよ
輪を乱したくなくていっときは有耶無耶にしようとしたんだけど
だけど根が深くて摘んでもまた芽生えちゃって..どうしようもなくなって
でもあの日僕に伝えてくれたから
「俺もりょうちゃんが好きだよ」って
だから彼には素直になりたくって
元貴がうちに来てくれて嬉しいし邪魔じゃないんけど何せこれからここへ来る相手は元貴が 一番知ってるひとで
おまけに親友で、カレが来た後は..あれ?この3人ならいいんだっけ
僕がオロオロし始めたら元貴がまた変なこと言い出した
「俺隠れとく?」
「だめ!そんな事しないで」
元貴はあろうことか寝室に入っていく
ベッドに近寄って真新しいシーツを一つ撫でし
また「ふーん」と振り返ってベッドの中央に座り僕を見た
「な、なに?」
一応、 新しいシーツに替えただけだから、別に他意はないし、だいたいいつもお泊まりしあいこしてるしだから綺麗にしてるだけだし..
だんだん言い訳みたいになって僕の声が細くなっていく
そして元貴はベッドに腰掛け
「ねぇ、一体なんの話?」
ってまたニヤニヤ意地悪に言ってきた
2回目のチャイムがまたリビングで響く
「あっ来ちゃった、
もうーリビングで待っててね」
そう声を掛け僕は玄関に向かった
元貴の靴を揃えて端に置き玄関を開ける
「お邪魔します、はいこれ」
「ん?何?ありがとう」
「りょうちゃんの好きそうなの買ってきた
あっ先に着替えていい?」
「嬉しい..うん、リビングで待ってて」
僕はハンガーといつも置いてる部屋着を取りに行く、寝室からは元貴がいなくなってた
「え?元貴も来てたの?」
「何か用事だった?」
リビングから話し声が聞こえてくる
「別にーただ遊びに来た」
「そうなんだ、珍し..わーこれうまそうじゃん」
「そうでしょ?!もらったの、俺が持ってきた
限定のクッキーサンド」
2人が楽しそうに話してるのが聞こえてきた
そこは友達でもあるし杞憂だったよね
でも今出て行って部屋着を渡すのを悩んだ
「2人とも何飲む?」
何か話題を振りながらさりげなくソファの端に置く、案の定彼はずっと着替えなかった
結局暗くなるまで3人で遊んで久しぶりも相まって色んな話しをしてゲームもして笑ってすごく楽しかった
元貴が持って来てくれたクッキーサンドも大好評で一瞬でも躊躇してごめんね..
自己嫌悪して自分が一体今日何をしたかったのか解らなくなった
自信がなくなった今僕は間違ってたのかもしれない
僕の行動を見透かすように来たのかもしれない
僕が望む関係がおかしいから
今日彼にきちんと好きだよって返事して付き合ってほしいって言わなきゃってあんなに意気込んでいたのに..
終わりにしなきゃいけない
芽生えた執着心の答えが出る前に
やっぱり僕たち気の迷いだったって
寂しく置かれた彼の部屋着に僕は手を伸ばした