コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
──寝ようとして目をつぶってはみるものの、彼の息づかいや肌の温もりを感じる度に起きてしまい、たいして眠れないまま朝を迎えた。
「はぁー」と、ひと息を吐いて、緩められていた腕の中から抜け出す。
もやもやとして落ち着かない気分を切り替えようと、洗面所でバシャバシャと顔を洗って部屋に戻ると、蓮水さんが既に起きてベッドのへりに腰かけていた──。
いつものようにピシッと決まったビジネスモードじゃない、寝起きの彼の姿に、こういうのって一緒に住んでたりしないと見られない特別感があるよねと、つい視線を奪われていると、
「……おはよう。昨晩は、ホテルに泊まったのか?」
彼が私に気づいて、そう尋ねてきた。
「おはようございます。ええ、スタッフの方に頼んでお部屋を取ってもらいまして」
「……そう、か」と、彼が考えるように顎に手をあてがう。
「……昨日は、酔って寝てしまったのか、私は」
「ええ、まぁ…そう、ですね……」
なんとなく気まずい思いで曖昧に返事をする。
すると、胸の辺りまでボタンの外されたワイシャツにふと目を落として、
「……スーツは、自分で脱いだんだろうか?」
蓮水さんが呟いた──。
「は、はい! スーツは、ご自身で脱がれてましたっ!」
咄嗟に声が裏返る勢いで否定をする。
「そうなのか、自分で……」と、再び呟くのに、(どうかもうそれ以上は何にも気づかないでいてください!)と、切望をした。
けれど次に彼の口から出た問いかけに、私の切なる願いは脆くも崩れ去った──。
「ところで昨日は、何か抱いて寝ていたような気もするんだがな?」