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あれから、1週間が経った。
絵名と話してから、ナイトコードには入っていない。
学校にも行っていない。
部屋で一人、息を潜めて生きているだけ。
現実から目を背けて、光なんて当たらない日常をおくる。
それだけで、よかったはずだった。
もうしんどいなら手放せばいいものを。
いつまでも、いつまでも、縋ってしまう。
皆のことが大切になったから。
人と一緒にいることの暖かさを知ったから。
「どうしてボクは、皆と一緒に居たいなんて思っちゃったんだろう…」
もう一度、なんて叶わない。
ピコン、と音を立てて通知が届く。
一瞬薄明るい灯火がついたが、すぐに消えてしまう。
通知を見る気力もないボクは、スマホ片手にベッドに寝転がった。
「…」
朝かどうかもわからない時間に目を覚まし、ひたすら天井を眺めている。
気持ち悪くなったら水を飲んで、忘れるようにしていた。
何もする気が起きず、ただ時間だけが過ぎてゆく。
「っはぁ…」
「なんか…食べようかな」
ここ数日部屋にこもりきりで何も食べていない。
流石にと思い、重い体を引きずるように階段を下りた。
「わ…!」
暫く歩いてなかったため、足が床と触れた瞬間、縺れて体勢を崩す。
「…ぅ、」
「もう…ご飯はいいや」
「瑞希、どうしたんだろう…」
奏が、ぽつりと呟いた。
「わからない」
1週間ほど前から瑞希と連絡がつかなくなった。
どうしてかは何も知らない。
瑞希が消える前日も、普通に作業して、学校に行くからと朝頃に解散しただけ。
「大丈夫かな…何かあったのかも…」
しかし、学校も違い、瑞希の家すら知らない私たちには、もう連絡を取る手段がなかった。
不安に駆られた奏が、日に日に作曲に集中できなくなっている。
ナイトコードもいつもより静かだ。
「…絵名」
『…』
「絵名」
『…え、な、なに』
最近、絵名の様子もおかしい。
大人しいし、なんだかずっと上の空。
セカイで会った時も、思い詰めたような顔をしている。
「セカイに集合、ちゃんと聞いてた?」
『…ごめん、そんな気分じゃない』
「いいから来て」
『だから…!』
「うるさい、来て」
『……わかったわよ』
「急にセカイに呼び出して何なのよ」
「瑞希」
「え?」
「瑞希のこと」
「何か知ってるんでしょ?」
そう聞くと、絵名は口を噤んだ。
薄々勘づいていた。
瑞希の失踪に絵名は何かしら絡んでること。
「絵名…?」
奏はまさかという顔で絵名を見、心配そうに尋ねる。
「ど、どういうこと?」
「黙ってないで答えて」
「……わ…だ…」
「何?」
「私だってわかんないわよっ!!!」
「え、絵名?」
「私だって瑞希の口から聞きたかったっ!!」
「そんな…もう、どうしろって言うのよ…っ」
絵名が、喉から絞り出したような声で吐き捨てた。
私たちから視線を逸らし、床に膝をつけて泣き崩れる。
「…まふゆ、なにかあったの?」
「ミク…」
さっきの大声に吸い寄せられたのか、ミクたちが集まってきた。
絵名を見た瞬間、目を見開いて硬直している。
「絵名泣いてるの…?」
「だ、大丈夫…?!」
皆が心配の声を寄せる中、ルカの一言が辺りを静まらせた。
「あら、今日も瑞希はいないのね」