コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今日も、外を見上げる。
隣で騒ぐあの子達を横目に、小説を開く。
『…ねぇ』
「‥なに?」
『それ、面白い‥?』
この子には到底理解できそうにない内容の本。
「‥はは、ちょっと、難しいかな。」
『‥!笑っ、た‥』
乾いた笑いを返してやったら、とても喜んだ。
『ね、ねぇ、!めめさんが__』
気怠げだが、嬉しそうな声で隣の子に話しかける。
『へぇ〜‥そうですか。』
私の隣の隣にいるあの子は、つまらなさそうに返事をしている。
もう、ここからは出れない。
青い青い空が、じりじりと光る太陽が。
そう、私に語りかけてくる。
でもそれは、この子たちだって。
どうしようもない病になったのだから。
進むのが、早すぎたから。
『おーい、朝ごはんだよ!』
「あ、はーい。」
『‥おはよ、ッ…ふぁ〜』
『まだ眠そうだね、れいまりさん‥』
『眠いよぅ…』
『あ、お醤油とって』
『はい、これ。』
「‥」
何故彼女たちはこんなに元気なのか。
これから先なんて、すぐ見据えれるのに。
『ねぇ、私、洋服ちっちゃくなってきた。』
『ほんとー?今サイズなんだっけ?』
『えーっとね、160とか。』
『あ、じゃあ私のSサイズの着てみる?』
『服届くの、先だもんね。』
‥お洋服、か。
〝あなたももう立派な“女の子”なんだから、お洒落しないとね〟
〝そうか、もうしっかりとした“女の子”、だもんなあ〟
「‥ッ、」
悪意のない笑顔が、言葉が私の心に突き刺さる。
‥好きな服を、好きな時に着たい。
あわよくば、“男の子”として、産まれたかった。
『‥めめさん、さっきからお箸進んでないけど、大丈夫ですか‥?』
「ッあ、うん、大丈夫。」
反射的に、そう返してしまう。
こうなったのはいつからだろうか。
‥味がしない。
今、私にはだいぶストレスが溜まっているようだ。
‥暫く、一人になりたい。
でも、人の暖かみも感じたい。
「…、?」
…食べ終わったら、食器洗いくらい手伝おう。
『‥ッあ‥!』
ぱりーん、と食器が割れる音が部屋に響く。
『だ、ッ大丈夫!?怪我ない、ッ!?』
『あ、ッ、ぅ…』
「‥どいて、かたすから。」
「消毒、向こうの棚にあるからね。」
『ありがと、痛いとこある?__』
キッチン付近には誰も居なくなったことを確認する。
「‥早く済ませなきゃ」
「…」
ベッドに横たわる。
もう何もしたくない。
これが俗に言う「無気力」ってやつなのか。
あー、今何時だっけ…
「‥‥」
そろそろ、お昼だ。
お腹が空いてきたが、動きたくない。
こんこん、とノックの音が聞こえる。
『お昼、だよ』
「‥ぁ〜…」
『…入るよ、?』
きぃい、と音を立てた古めのドアの先から八幡さんが出てくる。
『‥無気力ってやつ、ですか』
「…ん〜‥」
声を出す気力もない。
『ほら、行きますよ…?』
俺の手を引っ張る八幡さん。
もちろん動けるわけもなく。
『はぁ〜…』
呆れた様子の、腕に絆創膏を貼った八幡さんは、「仕方ないな」とでも言いたげに部屋をあとにした。