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今日も、外を見上げる。





隣で騒ぐあの子達を横目に、小説を開く。


『…ねぇ』


「‥なに?」


『それ、面白い‥?』


この子には到底理解できそうにない内容の本。


「‥はは、ちょっと、難しいかな。」


『‥!笑っ、た‥』


乾いた笑いを返してやったら、とても喜んだ。


『ね、ねぇ、!めめさんが__』


気怠げだが、嬉しそうな声で隣の子に話しかける。



『へぇ〜‥そうですか。』


私の隣の隣にいるあの子は、つまらなさそうに返事をしている。






もう、ここからは出れない。



青い青い空が、じりじりと光る太陽が。

そう、私に語りかけてくる。



でもそれは、この子たちだって。



どうしようもない病になったのだから。


進むのが、早すぎたから。




『おーい、朝ごはんだよ!』


「あ、はーい。」








『‥おはよ、ッ…ふぁ〜』


『まだ眠そうだね、れいまりさん‥』


『眠いよぅ…』



『あ、お醤油とって』


『はい、これ。』





「‥」


何故彼女たちはこんなに元気なのか。


これから先なんて、すぐ見据えれるのに。




『ねぇ、私、洋服ちっちゃくなってきた。』


『ほんとー?今サイズなんだっけ?』


『えーっとね、160とか。』


『あ、じゃあ私のSサイズの着てみる?』


『服届くの、先だもんね。』




‥お洋服、か。


〝あなたももう立派な“女の子”なんだから、お洒落しないとね〟

〝そうか、もうしっかりとした“女の子”、だもんなあ〟



「‥ッ、」


悪意のない笑顔が、言葉が私の心に突き刺さる。


‥好きな服を、好きな時に着たい。

あわよくば、“男の子”として、産まれたかった。



『‥めめさん、さっきからお箸進んでないけど、大丈夫ですか‥?』


「ッあ、うん、大丈夫。」



反射的に、そう返してしまう。


こうなったのはいつからだろうか。




‥味がしない。

今、私にはだいぶストレスが溜まっているようだ。


‥暫く、一人になりたい。


でも、人の暖かみも感じたい。



「…、?」


…食べ終わったら、食器洗いくらい手伝おう。









『‥ッあ‥!』


ぱりーん、と食器が割れる音が部屋に響く。


『だ、ッ大丈夫!?怪我ない、ッ!?』


『あ、ッ、ぅ…』


「‥どいて、かたすから。」

「消毒、向こうの棚にあるからね。」



『ありがと、痛いとこある?__』



キッチン付近には誰も居なくなったことを確認する。


「‥早く済ませなきゃ」









「…」


ベッドに横たわる。

もう何もしたくない。


これが俗に言う「無気力」ってやつなのか。


あー、今何時だっけ…


「‥‥」


そろそろ、お昼だ。


お腹が空いてきたが、動きたくない。


こんこん、とノックの音が聞こえる。


『お昼、だよ』


「‥ぁ〜…」


『…入るよ、?』


きぃい、と音を立てた古めのドアの先から八幡さんが出てくる。


『‥無気力ってやつ、ですか』


「…ん〜‥」


声を出す気力もない。


『ほら、行きますよ…?』


俺の手を引っ張る八幡さん。


もちろん動けるわけもなく。


『はぁ〜…』


呆れた様子の、腕に絆創膏を貼った八幡さんは、「仕方ないな」とでも言いたげに部屋をあとにした。

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