テラーノベル
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〜side小柳〜
疲れ切った身体に服の袖を通す
身なりを整え鞄を手にする
洗面台の鏡に映る自分を見て目を閉じる
1番上までシャツのボタンを閉じるが紅く残る跡は隠れない
もうどうでもいい
早く帰ろう
扉を開けると玄関前に叶さんが立っていた
「タクシー呼んでおいたから。行こっか」
「‥‥」
行く?
叶さんと?
「うちまで一緒に行くから。さぁ、行くよ」
「‥‥1人で帰れるっス」
「分かってるよ。でも一緒に行きたいんだ」
こんな押し問答をここでしていても仕方ない
早く帰って休みたい
そう思い、素直に2人でタクシーに乗り込んだ
家まで無言のまま走り、車を降りる
タクシーの扉が閉まる音を後ろで聞きながらエントランスを上る
ふと振り向くとまだそこにタクシーがいた
まだ夜が明け切らない群青の空の下、叶さんが小さく手を振った
俺は小さくペコリと頭を下げ、叶さんを見る
叶さんは俺を指差し『帰れ』とジェスチャーを送る
もう一度頭を下げて俺は家の中へと歩み出す
優しい叶さん
でもこんな事になったのも叶さん達の所為
頭の中がごちゃごちゃだ
自分の部屋の前に立ち鍵を出そうとした時、スマホの画面が灯る
そこには通知欄がズラッと並んでいた
鍵を開け電気を付ける
鞄を片付けスマホを手に取りベッドへ寝転ぶ
仕事の要件から返信をし、ため息を吐く
ちゃんと返信出来てるだろうか
頭痛もしてきて起きていたくない
最後の返信はカゲツか‥
《マイク壊れた、配信終わったら借りに行く》
《今から行く》
《お前配信してないよな?留守?》
《明日午前中に借りに行く》
少し前に使わなくなった良いマイクあるって言ったもんな
それより買いに行ってくれ?
俺たちDyticaは同じマンションに部屋を借りている
行き来するのは簡単だ
いつもなら面倒くさいと言いつつ、部屋まで持って行ってるかもしれない
だが、今はそれどころではない
風邪を引いた事にしよう
《風邪を引いたかも。頭が痛い。移るとヤバいから買ってこい》
送信した後にスマホを枕元に放り投げる
起き上がるのも面倒くさく、ベルトとズボンをベッドの下に放り、シャツのボタンを何個か開ける
シワになるかも‥‥‥
どうせ洗濯するのに、脱ぎきれなかったシャツのシワ心配をしている自分に呆れる
毛布を引っ張り、うずくまるように丸くなる
身体を動かす度に痛みが走る
エクスさん
叶さん
ゲームも上手くて面倒見も良い
そんな2人とこれからどんな関係になってしまうのか
もう眠い
眠ろう
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