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桜の時間

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桜の時間

5 - 【第4話】しばり

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2021年11月15日

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「え、」


「落ちた場合、2次募集があるところがあるんですけども、」

「まぁ遠くなったり私立になる可能性はありますが、そういう考えも視野に入れといた方がいいかと思います。」


「2次募集ですか」


聞いたことない、2次募集?


母親に今まで言われたことを思い出す。


『私立?』

『ダメよ、お金かかるんだから。』

『私立だけは何がなんでもダメよ。』

『もし私立しかなかったら働くしかないからね』


私立は絶対ダメ───


ずっと併願だと思ってた、私立にも受験はできると思ってた。


それなのに母親の言葉一つ一つで、


希望も、夢も、願いも、消え失せた。


「定時制にはなるんですね、それも夕方の方にはなってしまうんですけども。」

「でもそこなら2次募集も毎年しておりますので、ぜひ考えてみてください。」


「わかりました」


「ほかに何かありますか?」


「いえ、大丈夫です。」


「それなら今日はここまでになります。」

「ありがとうございました。」


「ありがとうございました〜」


終わった。


今回も何も言えなかった。


ぼーっとする。


フラフラして、視界がぼやけていく。


廊下を歩いていると、


(ぁ…副主任だ…)

(なんでこんな時に…お願いだから話しかけてこないで…)


願っていたら、先生は別の教室に入っていった。


内心すごくほっとした、


今主任と副主任に会いたくなかったから。


話しかけられても、完璧に偽れる自信が無いから───


いつもの元気で明るくて、静かな私ではない。


頼りがいがあって、元気で、賢くて、期待されるような私でもない。


暗くて何も出来ない、ワタシ。


そんな私は誰にも見せたくない。


だから安心した。


車に戻る。


頭痛は酷くなるばかり。


それでも私は嘘をつく。


「これどうするの?」


「あんだが持っといてよ」


「えー。」

「このあと服買いに行くんでしょ?」


「うん、ジージャンあるといいけど」


「何ジージャンって。」

「ジーパン着るの?」

「ジーパンはズボンだから履くものでしょ?」


「‪w‪w‪w‪w‪w」


「違う違う、ジーパンと同じ生地のやつ‪w」


「あー‪w」


こうやってどうでもいい話で盛り上げる。


いつもなら容易いことなのに、

 

なんとも思わないはずなのに、


頭痛のせいだろうか


どこかがズキズキといたんだ。


車の外を見る。


外はいつもよりぼやけて、太陽も出ているはずなのに、暗くて。


綺麗なはずの緑も、帰る時には綺麗に見えなかった。

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