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……
「ぐッ、う、っ!!!」
大きな攻撃を直接受けてしまった佐伯、そのまま壁へ打ち付けられる。
「テツ!!!!!!!」
佐伯と共に任務をこなしていた宇佐美は、攻撃を受けた佐伯の方に視線を向け、名前を叫ぶ。
目の前の敵を拳で思いきり殴り飛ばすと、急いで佐伯の方へ走った。
「リト、く…、ごめ……っ…」
「喋んな!!!!貫通、してないよな…?大丈夫だよな…?」
地面に倒れ込んでいた佐伯の肩を抱えて、負傷している場所がないか細かく目を通した。
宇佐美は、今にも泣いてしまうのではないか、と思ってしまうほど不安そうな顔を見せていた。佐伯はボヤケた視界に映るその宇佐美の表情を見て、悔しくて、苦しくて、こんな顔をさせてしまった自分が情けないとしか思えなかった。
「っ…ぅ゙、…ご、ごめ……ん゙…!!り、と…くっ……!ぐっ…!!!」
力になりたかっただけなのに、結局はまた助けられている。いつも助けられてばかりで、何も力になれていない。
徐々に意識が戻る、戻る度に悔しくてたまらない感情が溢れていった。
その結果、佐伯は彼よりも先に涙を流した。
「…泣くなよ、謝んなよ…、テツ……」
溢れそうな涙をグッと堪えて、涙を流す彼の額に自分の額を合わせた。
佐伯を支えていた腕に力を入れ、そっと抱き寄せた。彼を安心させるように “大丈夫だから” と、小さく何度も呟いた。
頭をあげ、先程殴り飛ばした敵の方に頭を動かす。数体の敵がこちらに向かって来ていたのを確認した宇佐美。佐伯を後の壁へ移動させ、座らせた。
立ち上がった宇佐美は、一歩前へ出て後ろを振り返り、佐伯の方を見ながら
「あいつら倒したら、一緒に帰ろうな!!」
と笑顔で伝えた。
そして前を向き直し、目の前の敵へ向かって走り出した。
佐伯はそんな宇佐美の姿を見て、”本物のヒーローだ” なんて思ってしまった。
次は、次こそは…
『リトくんの力になりたい。』