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第4話 戦影
早朝の御神家。
まだ3兄妹は起床したばかりで、眠い目を擦っていた。
叔父
「お〜い!帰ったぞ〜!!」
懐かしい声が響くと、
竜之介、千姫、晃平は一斉にその声に反応した。
竜之介
「叔父さんだ!」
千姫
「叔父さんが帰って来た!」
晃平
「今回は長かったね〜!!」
叔父は数ヶ月間の修行を終え、無事に帰宅した。
その顔には疲れがにじみつつも、どこか一回り成長したような厳しさが漂っていた。
しかし、以前と変わらぬ優しい眼差しを持ちながらも、
どこか憂いを帯びた表情だった。
叔父の名は「修道(しゅうどう)」。
竜之介たち3兄妹の父親、天真(てんしん)の弟であり、
3兄妹が両親を失った後、
彼らを引き取り育ててくれた大切な存在だ。
その存在感は、兄妹たちにとって大きな支えであった。
修道
「お前たち、元気だったか?
今回は修行の旅が長くて、
帰るのにかなり時間がかかったな…ん?
その猫は?」
千姫の足元にいる月夜を見て、
修道はしばし考え込んだ。
修道
「うを?あ、え!お前は…月夜!
月夜じゃないか!!」
月夜
「よ!久しぶり!」
月夜の姿を見た修道は驚き、
急に思い出したように言った。
修道
「お前がいるってことは、まさか…
兄妹はあの力を授かったのか?」
月夜
「そうだよ!
また、人間界に危機が迫ってるんだ!
大きな戦いに備えて、
また魔界から来たんだ。
よろしくな!」
修道は顔をしかめ、声を落として言った。
修道
「くっ…!
またあの凶々しい戦いが迫っているのか…
何て事だ…」
竜之介
「え?ちょっと待ってよ…
修道叔父さん、月夜と知り合いなの?」
修道
「ああ…そうか…ふう〜…
お前たちに本当のことを話さなければならないな…
お前たちの両親の話を…」
千姫
「え?お父さんと母さん?
お父さんと母さんは…
叔父さんたちと一緒に戦で戦って死んだって
言ってたよね?」
修道は一度深呼吸をし、
目を伏せながら続けた。
修道
「ああ…お前たちのお父さん、
天真(てんしん)と母、陽姫(ひめ)は、
あの長原の乱の戦いで亡くなったのは真実だ…」
その瞬間、修道の表情が険しくなり、
話は一層深刻なものへと変わっていった。
修道
「しかし、あの戦いはただの戦いではない。
長原の乱の表向きの説明は、
キリスト教徒と農民による幕府への反乱
と伝えられている。
しかし真実は異界の力が交錯した
壮絶な戦争だったんだよ。
実は人間界の戦争や災害は全て、
各界との戦いが原因なんだ…
あの時も、妖怪たちは人間界を支配しようと、
キリスト教徒や農民に憑依し、
戦争を引き起こした。
その時、守護の使命を持つ御神家も参戦した。
そして、私たちが参戦した戦いには、
魔界からも使者が送られた。
その使者こそ、月夜だった。」
月夜は静かにうなずき、
その目は、ただの使者としてでなく、
仲間として戦いに臨んだ表情だった。
修道は続ける。
修道
「天真と陽姫は神おろしを習得していた。
私はその才能が無くて、
残念ながら習得できなかったが、
人間界の神道に仕える者として
他の者と共に戦いに加わった。
戦いは激闘だった。
敵の頭、妖怪四天王は強大で、猛攻撃をしてきたが、
それでも人間界は少しずつ妖怪たちを
追い詰めていった。」
修道
「そして、ついに四天王を追い詰めたが、
私たちも全滅する寸前だった。
追い詰められた天真と陽姫は禁術を使い、
力を最大限に膨らませた。
その力によって四天王を打ち破ることができたが、
禁術は限界を越えていた。
力を膨らませ過ぎた二人は…
力尽きてしまったんだ…」
修道は目を閉じ、悔しそうに言った。
修道
「私は二人を止められなかった…
あの時四天王に勝つには、
二人の力に頼るしかなかったんだ…。
そして、その後、
私にできることは何かないかと考え、
君たちを引き取って育てることにした。
同時にきっとまた来る次の戦いに備え、
修行を始めたんだ。」
竜之介は深くうなずき、目を細めながら言った。
竜之介
「父さん、母さんもオレたちと同じ使命があったんだ…。
四天王だと…くそっ!」
千姫は動揺した表情のまま、震える声で言った。
千姫
「まさか…自分の力で死んじゃうなんて…。
信じられない…。」
晃平は眉をひそめ、真剣に考え込んだ。
晃平
「ちょ、ちょっと待って!
その話だと、僕たちも力を使いすぎると…」
修道はその言葉に苦い表情を浮かべて答えた。
修道
「そうだ…
君たちも同じ力を授かった…
だが、今回は絶対にお前たちを死なせない。
お前達!旅の準備をしろ。
この時のために、
私はすでに協力者を仲間にしている。
そこで修行を積んで、
戦えるようにするんだ。」
竜之介は戸惑いながらも言った。
竜之介
「え?どこに行くんだ…?」
修道は立ち上がり、険しい表情を見せながら言った。
修道
「この時のために、
全国を回って情報を集めていた。
お前たちの修行も、
ただ力を強くするだけじゃない。
戦いに備えて、力を管理し、
制御できるようになるためだ。
行くぞ、今すぐに!」
修道は旅支度を整え、再び動き始めた。
竜之介たちもそれに続き、
覚悟を決めて一歩を踏み出した。
彼らの前には、長原の乱に続く新たな戦いが待っていることを、まだ知らない。