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「……原田を呼べ。」
畑中が低く呟いた。
「ハッ!」
部下は敬礼すると、すぐに部屋を飛び出していく。
原田章造――65歳。
かつて天才科学者・鷹野修司に技術を教えた恩師。
しかし、その教え子は道を踏み外し、世界を混乱へ陥れる怪物兵器を生み出す存在となってしまった。
裏切られた原田は命を狙われ、現在はORVASの保護下で身を潜めている。
約30分後。
護衛に付き添われた原田がモニタールームへ入ってきた。
畑中は挨拶もそこそこに本題へ入る。
「原田さん。」
「敵の異常な戦闘力……あなたなら理由が分かるはずです。」
原田は腕を組み、戦闘映像を静かに見つめる。
数秒の沈黙。
やがて重々しく口を開いた。
「……おそらく。」
「オーバードライブ・シンクロだ。」
「オーバードライブ・シンクロ?」
ジュリーが眉をひそめる。
原田はゆっくり説明を始めた。
「簡単に言えば、二つの魂を無理やり重ね合わせる技術だ。」
「本来の限界を超えた力を、強制的に引き出す。」
「つまり……限界を超えるための禁忌の技術だ。」
畑中の表情が険しくなる。
「強制的に……?」
原田は深いため息をついた。
「本来、シンクロは適合者同士でしか成立しない。」
「だが奴は違う。」
「適性など無視し、生身の身体へ膨大なエネルギーを押し込んでいる。」
ジュリーが青ざめた。
「じゃあ……ロキたちも?」
「ああ。」
「本人たちは気付いていないだろう。」
「命を削りながら戦っていることにな。」
部屋の空気が重く沈む。
畑中が静かに尋ねる。
「……副作用は?」
原田はゆっくり目を閉じた。
「強化が切れた瞬間――」
「身体は燃え尽きる。」
「最悪……死ぬ。」
その言葉に全員が息を呑んだ。
ジュリーは拳を握り締める。
「……なんてことを。」
畑中も静かに拳を握る。
「つまり。」
「奴らを止めなければ、更に危険な実験が始まる。」
原田は黙って頷いた。
「……ああ。」
畑中は真っ直ぐモニターを見据える。
「なら、やるしかない。」
ORVASはついに敵の力の秘密へ辿り着き始めていた。
その頃――
アビス本部。
薄暗い研究室に青白い光だけが揺れている。
巨大なモニターには、公太、唯我、一祟の戦いが映し出されていた。
「フフッ……。」
「フハハハハッ!」
狂気じみた笑い声が響く。
ソファへ深く腰掛けている男。
黒縁の丸眼鏡。
奇抜なスーツ。
アビスの支配者――
鷹野修司。
彼は足を組み、肘掛けを指先で軽く叩きながら戦場を眺めていた。
瞳には狂気と歓喜が宿っている。
「ほぉ……。」
「これは面白い。」
「まだこの世界には、こんな宝石みたいな才能が眠っていたとはねぇ。」
口元が歪む。
「もっと戦え。」
「もっと僕を楽しませてくれ。」
モニターでは、
公太の灼熱の拳。
唯我の鋭い剣技。
一祟の神威拳。
そのすべてを鷹野は恍惚とした表情で眺めていた。
「素晴らしい。」
「実に素晴らしい。」
「君たちは最高のサンプルだ。」
椅子を回転させ、背後の研究設備へ向き直る。
数人の科学者が緊張した面持ちでデータを解析していた。
鷹野は笑顔のまま尋ねる。
「それで?」
「オーバードライブ・シンクロはどこまで進んだ?」
「僕の可愛い怪物たちは、いつ完成するのかなぁ?」
一人の科学者が震えながら答える。
「現状では……適合率が低く……。」
「安定性にも課題が……。」
笑顔が消えた。
「つまり。」
「まだ完成してないってことぉ?」
静かに近付き、科学者の肩へ手を置く。
ギリッ……
指先に力が入り、骨が軋む音が響いた。
「僕の完璧な計画を邪魔する気?」
「僕を失望させるつもり?」
科学者の顔から血の気が引く。
「い、いえ!」
「必ず完成させます!」
その返事を聞くと、鷹野は再び笑顔になった。
「よろしい。」
パチン――
指を鳴らす。
「じゃあ。」
「次の実験体を起こしてあげよう。」
研究室の奥。
巨大な培養カプセルの液体が泡立ち始める。
ボコッ……
ボコボコッ……
中では、人とも怪物ともつかない異形の影がゆっくりと目を覚まそうとしていた。
鷹野は嬉しそうに微笑む。
「この子が暴れたら……」
「公太くんたちは、どんな絶望の顔を見せてくれるのかなぁ。」
狂気に満ちた笑い声が研究室中へ響き渡る。
「さあ――」
「ゲームの続きを始めようか。」
コメント
1件
みぅですっ🤍🥀 第75話、読みました…! 「オーバードライブ・シンクロ」って禁忌の技術だったんだね…それで、ロキたち本人が知らずに命削って戦ってるってのがもう、胸が痛いよ😢💔 畑中たちが真実に気づいて動き出したところも熱いし、鷹野の狂気の笑い声と、あの培養カプセルの不気味さ…。 次の実験体、本当にやばそう…どうなるんだろ…? 続きが気になって仕方ないっ!🔥💫