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<瞳>
で、ヨリを戻したことを認めるのね」
「だから、ヨリを戻したのは昨日」
お土産と、ここ最近のことを報告するために里子の部屋に遊びに来ている。
「結局は甲斐くんと運命の糸が繋がっていたってことね」
「運命って、正人のことがなければ再会することは無かったし」
「それが運命なんでしょ、てか執着か。あの時私が飲み会を開いたけど、瞳に会いにわざわざ来たんだから、執着だよね。ところで元旦那はどう?」
一口かまぼこを口に入れると「うまっ、チーズ入ってる」と言いながら美味しそうに咀嚼している。
私もついでに口に入れると、かまぼこの甘みととろりとしたチーズが絶妙にマッチして美味しい。
自分の分も買ってくればよかった。
「あー、お義母さま襲撃事件でお父さんが向こうのお義父さんに抗議をしたのかも、って、まだそれほどたってないからどうだろ?少し経ったらまた連絡が来たりして」
「ありそう。常識のある人だと思ってたんだけど。何げに瞳ってダメンズホイホイなんじゃないの?」
うっ
声が詰まってしまった。
「正人は確かに、ちょっと頼りないと思ってだけどいい人だと思っていたし」
「自己主張のない残念男だけど」
里子の容赦の無い一言が返ってくる。
「凌太はしっかりしてると言うか」
「女にだらしないけど」
うぐっ
「付き合っていた間は浮気とか無かったと思う」
「それは無かったと思うよ。瞳を大切にしてると言うか執着してる感じはあったし、ただ過去の遺産的な女関係で面倒なことはあったけどね」
嫉妬に駆られた女性達からかけられた言葉の数々を思い出す。
そして、松本ふみ子は本当に諦めたんだろうか?
そんな不安を感じ取ったのか里子が「松本ふみ子のアカウントが削除されてるけど、もしかすると新しくアカウントを取り直してる可能性もあるよね」と言った。
「学生時代には全然気が付かなかったよね」
「瞳と付き合う前のセフレコレクションってゴメン、にも居なかったったと思うよ」
と、しれっと爆弾投下される。
「凌太って目立ってたから、卒業後にBARとかで再会したら声をかけるかも」
「甲斐くんが覚えてないだけで、つまんでる可能性があるかもよ」
「うーん、あんまり聞きたくないかも。それより、ちょっと仕事で知り合った人がいてなんかグイグイくるのよね」
里子はかまぼこの袋を開けながら「ほうほう、それで」と楽しそうに言うとポンとかまぼこを口の中に入れる。
里子の前にはかまぼこの空袋が積み重なっている。
「自意識過剰って言われたらそれまでなんだけど、休みに誘われて断ったら仕事帰りに食事をしようとか。深い意味はないのかもしれないけど彼の事をよく知らないからちょっとモヤモヤしてる」
「ふーん、あっ、かまぼこ無くなっちゃった。美味しかった。その彼、瞳に気があるんじゃない?」
「えー、でも仕事関連で一緒にランチをしたくらいだし。てか、基本可愛いイラストなんだけどモヤっとするのがあって」
泣いている子虎と窓から覗いているハイエナのイラストを見せる。
「何かのストーリーなのかな?」
「ストーリー、そうかそうなのかも。私が考えすぎなのかもしれない」
「考えなさすぎてもいけないけど、考えすぎると進めなくなるよ」
「「だね」」
「変態上司はどうなった?」
「示談で進めてもらってる。私が起訴しなくても酷い事をされた被害者がいるらしいから。それも複数」
「つくづく未遂でよかったね。後輩くんに感謝だよ」
「その後輩が実は社長の親族とかね、でも彼が上に立つ頃にはもっと仕事がしやすい会社になりそう」
気心の知れた里子との話は尽きる事なく、気がつくとすっかり日が落ちてきて結局二人で夕食を外で食べてから里子と別れて帰路に着く途中、電車の中でスマホを確認する。
Ryoさんから庭木の写真とピンクのユリっぽくもあり彼岸花っぽくもある花の写真が送られてきた。
可愛い花と思っていると
[山茶花はつぼみがついていてこれからたくさん咲きそうです]
綺麗に剪定された山茶花の木や、ピンクの花や金木犀など庭を随分と綺麗に維持をしているのがわかる。
[庭がとても綺麗ですね。Ryoさんがやってるんですか?]
あまり深追いしたくないのについ質問をしてしまった。
[僕には無理です。庭師の方が定期的に来てくれるんです]
庭師にお願いしているというのはやっぱり結構な富裕層なのかもしれない。そんなことを考えていると
[山茶花と椿って今まで見分けがつかなかったけど、花の散り方でわかるって教えてもらいました]
ああそれなら
[椿は花ごとボトリと首が落ちるように見えるから武士が嫌ったとか、だから椿は花ごと山茶花は花びらが落ちると聞いたことがあります]
[なんだ、知ってたんですね。僕は前はバラだと思い込んでいて山茶花だと教えてもらったんです]
[八重の山茶花だとバラに似てますよね。日本のバラと言われいたりするらしいですよ]
[咲くのが楽しみですね]
[この山茶花はピンクの花で花言葉を調べてみたら”永遠の愛”らしいです。永遠の愛なんてうらやましいですよね]
素敵な言葉だけど、永遠の愛なんてそんなものは幻かもしれない。
[ピンクの花はなんですか?彼岸花に見えるけどちょっと違いますよね?彼岸花はあまり庭に植えることはない気がするし]
[ネリネという花らしいです。彼岸花の遠い親戚みたいなものだって教えてもらいました]
[色々勉強になりました。おやすみなさい]
Ryoとのやり取りの途中で凌太からのメッセージが入り、そろそろ終了させようと思いこの言葉で〆ようと思っていたら
[最近はよく花言葉を調べているんです。ネリネは”また会う日を楽しみに”だそうです。おやすみなさい」
意味なんて無い
そう無い
自意識過剰だぞ私!
自分自身を戒めているとラインにメッセージが入った。
[今話せる?]の一言にRyoさんとのやりとりに気まずい気持ちになりながら凌太に電話をかけた。