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「すごい家だね」
瞳は門の前で立ち止まって家を見つめている。
高校生の頃、ヤルだけの女子を家に呼んだ時も豪邸すごーいとか言われたっけ。
「俺が建てた訳じゃいから何とも言えないな」
瞳はくすっと笑うと
「確かに、おかげで緊張がすこしだけとれたかも」
「緊張?」
「するよ、初めてのお宅訪問の訪問先が豪邸とかって、しかも彼の初自宅だよ」
玄関に入ると家政婦のフミさんが出迎えてくれて瞳が挨拶をした。
フミさんは小声で「お飲み物はいかがなさいます」と聞いてきた。
多分、高校生の頃の事を考えているんだろう。
あの頃は即エッチだったから、3階のヤリ部屋にはミニ冷蔵庫を置いてペットボトルの水を入れていたが、瞳をあの部屋に入れるつもりはない。
「2階の俺の部屋に何か適当にお願いします」
フミさんはにっこりと微笑んでキッチンに向かった。
部屋に二人でいると何をすればいいのかわからない。ベッドに二人で並んで座ってテレビをつけて何となく見ていると部屋のドアをノックする音が聞こえ返事をするとフミさんが紅茶のセットと菓子器に入ったお菓子を持ってきてくれた。
フミさんは事の他嬉しそうに見える。
子供の頃からこの家で働いてくれて俺の乱れた女性関係を知っているから尚のことこの状況が微笑ましく見えるのかもしれない。
「紅茶美味しい。広い家の中でもいつも居てくれる人がいてよかったね」
フミさんの事は玄関で挨拶をした時に、子供の頃からずっとこの家に来てくれてる家族のような存在であることを説明した。
「そうだな、お袋は習い事だったり何かの集まりだったり実家の呉服店に行くことが多かったし、親父は会社の社長で常に忙しかったから。家のことはフミさんに任せっきりだし学校とかのイベントは父方の祖父母が参加してくれたんだ」
「そっか、寂しかったんだね」
寂しい?
寂しかったのか?
俺はただ、おふくろが嫌いで、呉服店の奴らが嫌いで社長の息子ということで群がる女が嫌いだった。
だから誰にも関心を持たないし、そんな女を使い捨てしたところで何も感じなかった。
寂しさを紛らわしていたと言うことなのか?
「凌太?」
瞳の言葉で考え込んでしまった。
「ごめん、一瞬ぼんやりしていた」
瞳はクスクスと笑って「疲れているんじゃない?」と言ってクッキーを一つ口に入れると紅茶を飲んだ。
「甲斐商事の創業者が曾祖父さんなんだ」
瞳は目を見開いて驚いた表情をした。
今まで近づいてくる女性は最初からそのことを知っていたり、知った後はやけに媚びてくることがあった。
瞳のリアクションが怖い
「うっそ!凄い」
何が?
凄いのは親父でじいさんで曾祖父さんだ
「お父さんは甲斐工業に勤めてるんだよ。家電の!大きな家電メーカーではないけどってゴメン、アイデアは他のどのメーカーより凄いってお父さんがいつも自慢してる。家の家電はほとんどKAIだよ」
「凄いってそっち?」
「そっちってなに?だって、凄くない?思わぬところで繋がってたとかって、社長と社員で立場は違うけどね」
そう言って笑う瞳の姿が本当にかわいくて思わず抱きしめてキスをした。