テラーノベル
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〇〇side(家を出る前〜タクシー移動)
朝5時。まだ薄暗いし眠い。
窓の外は小雨。
今日の撮影は第11話。雨の中の大喧嘩、ずぶ濡れ、そして抱きしめ――最大の山場だ。
ベッドに座り、スマホで台本を確認する。
ページをめくるたび、セリフのトーンや動線、呼吸のタイミングを頭の中で反復する。
〇〇「……完璧にやるしかない!!」
小さくつぶやき、深呼吸。
でも頭の片隅に北斗の顔が浮かぶ。
不仲。
仲間。
それ以上じゃないはず。
服を着替え、雨でも動きやすい衣装に。
靴を履き、傘を置く。
荷物をまとめながら、また台本を目で追う。
〇〇「今日こそ、1発で終わらせる」
心の中で北斗への警戒心を確認。
本番中、感情のコントロールが必要だ。
不仲コンビ。
口喧嘩も覚悟。
タクシーに乗る。
窓の外の雨を眺めながら、何度も台本を頭の中で再生する。
北斗に会う緊張感も混ざる。
〇〇「……仕事だから」
自分に言い聞かせる。
涙も震えも見せない。
―――――
北斗side(家を出る前〜スタジオ到着)
まだ家。
窓の外の雨音に耳をすませながら、撮影のことを考える。
今日の撮影は重要だ。
雨の中、ずぶ濡れ、口喧嘩、そして抱きしめ。
何度もテイクを重ねる可能性もある。
北斗「……役だから」
心の中でつぶやく。
でも胸の奥は少しざわつく。
〇〇に会う瞬間を想像するだけで、体が緊張する。
普段の俺たちは、周りから見ると、お似合いカップルに見えるかもしれない。って樹に言われた。
―――――
〇〇side(スタジオ入り〜リハ)
スタジオ到着。雨は降り続き、肌寒い。
衣装は濡れても大丈夫なように調整済み。
鏡で自分を確認しながら、呼吸を整える。
〇〇「よし、完璧にやる!!」
北斗は無言。
やっぱり不仲。
距離感は縮まらない。
〇〇「……仕事だから我慢。」
自分に言い聞かせる。
口喧嘩も覚悟。
リハ開始。
雨の中で叫ぶ練習。
セリフをぶつけ合う練習。
北斗とぶつかるたび、心の中で微妙にドキッとするが、演技として押し込む。
―――――
撮影・本番(雨の中の喧嘩〜抱きしめ)
セットには人工雨。風も少し強い。
カメラ前に立つ二人。
〇〇「どうして何も言ってくれなかったんですか!」
北斗「言えるわけないだろ」
〇〇「私、あなたの部下です!」
北斗「だから守ろうとしたんだ!」
〇〇「勝手に守らないでください!」
いつもみたいな、口喧嘩。
雨に打たれながら、声を荒げる。
濡れた髪が顔に張り付く。
服も重い。
北斗「お前、無理してるの分かってたんだぞ」
〇〇「分かった気になるな!」
小さく舌打ちする。
でも目が合うと、つい笑いそうになる瞬間もある。
でも笑いはすぐ止める。
演技に集中
――本番1回目――
北斗が抱きしめる。
力加減が少し強すぎて、〇〇が軽く反発。
〇〇「……っ」
監督「カット!」
――本番2回目――
抱きしめ方を微調整。
〇〇の肩に自然に腕が回る。
まだ完璧ではない。
口喧嘩も少しずれる。
――本番3回目――
北斗「これ以上、突き放すな」
雨の中、力強く抱く。
〇〇は肩を震わせつつ、演技を崩さず耐える。
息が荒くなるが、台詞は完璧に出す。
〇〇「……っ」
笑いそうになる瞬間もあったが、二人で自然に笑う代わりに、空気で通す。
周りにはお似合いカップルっぽく見えるのが最悪
――本番4回目(最終テイク)――
北斗「……これ以上、突き放すな」
抱きしめ方、力の入れ方、視線の角度、すべてが自然。
〇〇は肩を沈め、震える体を耐えながらも表情を保つ。
息が止まる一瞬。
〇〇「……っ」
カット!
監督もカメラマンも息を呑む。
〇〇は表情を崩さず完璧。
北斗はすぐ離れる。無言。
〇〇も視線をそらし、平然を装う。
〇〇「……平気」
でも心臓はまだざわつく。
抱きしめられた感触が残る。
口喧嘩で張り合っても、あの瞬間だけは、重い感情が残る。
北斗も、冷たい表情を作りつつ、心の中ではあの抱擁を反芻している。
好きだから、止められなかった。
〇〇は仲間。
それ以上ではない。
でも周りから見るとお似合い。
口喧嘩しても、笑うときは一緒に笑う二人。
雨の中、ずぶ濡れで、体力も限界。
でも二人の距離感は変わらない。
―――――
北斗side
ー撮影前に当たるー
移動中。
雨粒が窓を流れる。
〇〇はきっと完璧に仕上げてくる。
国民的女優。
歌もダンスも演技も完璧。
自分はその少し下。
でも今日のシーンだけは。
俺は、負けたくない。
役として。
社長として。
そして。
男として。
目を閉じる。
抱きしめる瞬間。
力を入れすぎない。
でも弱すぎない。
好きが漏れないように。
何度も、頭の中でシミュレーションする。
―――――
撮影直前(雨セット前)
人工雨が準備されている。
冷たい空気。
〇〇が現場入りする。
目が合う。
〇〇「今日長いねー」
北斗「別に」
素っ気ない。
でも目は一瞬だけ優しくなる。
〇〇「雨で滑ったら最悪なんだけど笑」
北斗「転ぶなよ笑」
〇〇「は?」
すぐ口喧嘩。
スタッフは少し笑う。
また始まった、みたいな空気。
でも周りから見たら、距離が近い。
自然すぎる距離。
一瞬だけ思う。
この距離が、役じゃなかったら。
すぐにその思考を消す。
―――――
撮影後・休憩中
4テイク目でOKが出る。
監督「最高」
スタッフもざわつく。
〇〇は息を整えながらタオルを受け取る。
濡れた髪をかき上げる。
俺は目を逸らす。
抱いた感触が残っている。
〇〇「ちょっと強くない?」
北斗「弱かったら説得力ないだろ」
〇〇「腕痛いんだけど!」
北斗「大げさ」
〇〇「は?」
また始まる。
スタッフの一人が小声で言う。
「ほんと仲良いよね」
二人同時に振り向く。
〇〇「どこが?」
北斗「意味分かんない」
声が揃う。
一瞬、目が合う。
そして、ふっと同時に笑ってしまう。
〇〇「…は、なにそれww」
北斗「お前が同時に言うからだろww」
〇〇「そっちが合わせたんでしょ!」
また言い合い。
でもさっきより空気は柔らかい。
―――――
夜・追加カット撮影
朝からずっと雨。
体力は限界。
それでも〇〇はセリフを一度も噛まない。
立ち位置も完璧。
感情もブレない。
さすが国民的女優。
俺は横目でそれを見る。
やっぱりすごい。
〇〇「北斗、今ズレた」
北斗「ズレてない」
〇〇「ズレてた」
北斗「……じゃあ次合わせる」
〇〇「最初からやって!」
きつい。
でも嫌じゃない。
こうやって言い合いながら、
隣で一緒に作っていくのが好きだ。
好きだけど。
言えない。
―――――
撮影終了後
夜遅く。
やっと終了。
スタッフが拍手。
〇〇は軽く頭を下げる。
疲れてるはずなのに、最後まで完璧。
北斗は少し離れた位置からそれを見る。
〇〇「…おつかれ!!」
北斗「おつかれ」
短い。
でも、目だけは少し柔らかい。
雨は止んでいる。
好きな人を、演技で抱いた一日。
嬉しくて、苦しくて、
でも役として完璧だった。
〇〇はきっと、何も思っていない。
仲間。
それでいい。
ーーーーーーーーーーーーー
〇〇side(撮影終わり)
「第11話、OKです!」
拍手が広がる。
長い一日だった。
朝からずっと雨。
体は冷えきっている。
腕も少し重い。
でも私は崩れない。
深く一礼。
〇〇「ありがとうございました!!」
声も安定。
呼吸も乱れない。
プロとして当然。
タオルを受け取り、髪を拭く。
さっきのシーンを冷静に振り返る。
感情のピーク。
間の取り方。
視線の落とし方。
問題なし。
北斗が少し離れた位置にいる。
〇〇「…おつかれ!」
北斗「おつかれ」
短い。
〇〇「さっき一瞬ズレたよね」
北斗「ズレてない」
〇〇「ズレてた」
北斗「…次ないから問題ない」
〇〇「あるかもよ?」
軽く睨む。
また始まる。
スタッフが笑う。
「ほんと仲良いよね」
〇〇「どこが?」
北斗「違うから」
同時。
一瞬、目が合う。
思わず二人とも吹き出す。
〇〇「タイミング被るのやめて!!」
北斗「お前が合わせてる!」
〇〇「してない!!」
不仲。
でも笑うときは一緒。
それでいい。
――――――――――
〇〇side(楽屋)
ドアを閉める。
静かになる。
鏡の前に座る。
濡れた髪。
少し赤くなった肩。
「強かったな…」
でも不満ではない。
あれで正解。
シーンは完成した。
メイクを落としながら、台本をもう一度見る。
自分のセリフの温度。
間違いはない。
北斗の抱きしめも、
役として完璧だった。
それだけ。
「仲間として、ちゃんとやった」
それで十分。
私は不仲のやつとは、恋愛で仕事を揺らさない。
恋愛体質だけどあいつだけはないわ。
着替えて、荷物をまとめる。
明日は第12話の打ち合わせ。
もう次を考えてる。
――――――――――
北斗side(楽屋)
ドアを閉めた瞬間、
一気に静かになる。
タオルで髪を拭く。
腕が少し震えているのに気づく。
雨の冷たさのせいじゃない。
好きな人を抱いた。
何回も。
理性を保つのに必死だった。
強くなったのは、
感情を抑えるため。
〇〇は何も思ってない。
仲間。
分かってる。
だからこそ、
自分だけが揺れてるのがきつい。
鏡を見る。
いつもの暗い顔。
「バレてない」
それでいい。
〇〇に知られたら終わる。
不仲コンビでいられなくなる。
深く息を吐く。
今日のシーンは成功。
役としては完璧だった。
それでいい。
――――――――――
〇〇side(タクシー帰り)
一人で後部座席。
窓の外は、もう雨が止んでいる。
体の疲労がどっとくる。
スマホで今日のスケジュールを確認。
問題なし。
第11話、山場クリア。
「ちゃんとできた」
冷静に振り返る。
北斗とのシーンも安定。
テンポも噛み合っていた。
あれは信頼。
役者としての信頼。
仲間として、
ちゃんと成立している。
それ以上でも以下でもない。
「次は最終回」
もう頭は第12話。
感情は置いていく。
仕事は前に進む。
――――――――――
北斗side(タクシー帰り)
一人。
窓に映る自分の顔。
外は濡れた道路が光っている。
腕にまだ感触が残っている。
抱きしめた瞬間の、
あの距離。
〇〇は何も感じていない。
ただの仲間。
分かってる。
それでも。
「きついな…」
小さく呟く。
でも今日のシーンは完璧だった。
〇〇に「悪くなかった」と言われた。
それだけで十分だ。
恋は隠す。
バレない。
不仲コンビのままでいい。
タクシーが信号で止まる。
北斗は目を閉じる。
次は最終回。
役として、隣に立つ。
それだけでいい。
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