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亮の言葉が耳に残り、悠真はしばらく黙り込んでいた。
コーヒーの湯気がもう消えかけている。
(咲を……好き、だと?)
心の奥では、とっくに気づいていた。
夏祭りで浴衣姿に目を奪われたとき。
体育祭で真剣に走る姿に鼓動が速くなったとき。
そして、ふとした笑顔に救われたとき。
――ただの妹ちゃんのはずがない。
「……亮」
低い声で名を呼ぶと、悠真は拳を握りしめた。
「俺は……」
言葉が喉につかえて出てこない。
素直になることが、こんなにも難しいなんて。
亮はそれ以上何も言わず、ただ静かに悠真を見ていた。
その沈黙が、答えを促しているようで、胸が苦しかった。