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「柊は柚葉のこと本気なんだな。でも、俺が柚葉と仲良くできるかはまだわからないな」



「お前なぁ……」



僕は、苦笑いした。



「柊は昔からめちゃくちゃ人気あって、すごくモテてたけど、いよいよ結婚するんだな。不思議な感覚だよ、兄弟が結婚するって」



「めちゃくちゃモテるのは樹だろ。僕は普通だよ」



クールでオシャレな樹の周りには、いつも女の子達がいた。ただ、樹は、本気の恋愛ができないって、いつも悩んでた。アメリカでも、特定の彼女はいなかったらしい。



「普通じゃないだろ。柊なら選び放題なのに、何で柚葉なんだ?」



樹がソファに座りながら、前のめりになって質問してきた。



「柚葉に初めて会ったのは、採用面接の日だ。顔も可愛いし、笑顔が良くって。彼女が言った言葉もとても好感が持てたんだ」



あの日、柚葉はすごく緊張してた。

過呼吸になりそうなくらいに。

それでも、一生懸命会社への思いを語ってくれて……



『私は、正直、自分に自信を持てずにいます。ここでやりがいのある仕事に携わって、たくさんの人のお役に立てるよう、成長したいです』



確かに言葉は少し幼稚で頼りなく感じた。

それでも、彼女の真っ直ぐな思いが伝わってきて、どうしようもなく、一緒に仕事をしてみたいと思えた。



他の面接官達は反対したけど、「一緒に成長したい……」、そんな思いも手伝って、僕は柚葉を採用した。



入社してからの彼女の成長は、誰が見ても明らかで、社内の評判も良かった。

見た目の可愛さに加えて、愚痴を言わなかったり、人に好かれる性格も、僕には全てが新鮮に写った。



そんな柚葉を近くでずっと見ているうちに、彼女への想いは「恋愛感情」になり、どんどん募っていった。自分に正直になりたくて、思い切って彼女に告白することにした。

あの時はかなり緊張したけど、結局、柚葉は僕を受け入れてくれた。



とても嬉しかったし、ホッとした。



「実際、柚葉と付き合ってからも、他の女から告白されたんだろ?」



樹が、真顔で聞いた。



「それは……」



「まあ、柚葉は本当に幸せなやつだな。柊みたいな才能ある最高の男に、こんなに愛されてるんだから」



僕は微笑んで、またペットボトルに口をつけた。



これから先、柚葉と結婚して、会社も樹と一緒にもっともっと大きくして、世界で通用するようにしたい――

やりたいことは、まだまだたくさんあるんだ。



「柊。俺は、ずっとお前と一緒に仕事を頑張っていく。柚葉とも……ちゃんと幸せになれよ。応援してる」



「ああ。樹がいてくれて、本当に良かったよ。仕事で不安な時も、いつもお前が助けてくれた。たとえ遠くにいても、樹の的確なアドバイスはすごく有難かったよ。ありがとうな、これからも頼む」



「お互い様だ。俺も柊に助けられた。モデルも中途半端で、お前に声をかけてもらわなかったら……今頃どうなってたかわからない。俺の方こそ、ありがとう」



ちょっと気恥しかったけど、お互いに本音を伝え合えて良かった。久しぶりの2人だけの会話に、自然に頬が緩んだ。

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