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ruruha
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ほんまにびっくりする。ゆうとは恋愛に対しては受け身やから、勝手に、俺と一緒にずっと独身のままおってくれる仲間やと思ってたのに。
「そう。あの時、はんちゃんとそういう話したやろ? やから、なんとなくはんちゃんには早めに言うときたいなぁって思ったんよ」
「えー! おめでとう! なんかすっごい嬉しいわ!」
「はんちゃんやったら、そう言ってくれると思てたわ」
「相手は誰? とか聞くのは無神経すぎたりする?」
「あー、相手があんまり騒がしいの好きちゃうから、まだ詳しくは言えへんねんけど。……元々友達やった人やな。綺麗で優しくてモテるからさ、絶対俺では無理やなぁと思っててんけど」
「……それってさ、ゆうとから告白したん?」
うわ、なんかワクワクする。だってゆうと、仲良くなってからそんな浮いた話、一度も聞いたことなかったし。平凡こそ幸福、みたいな考えの人やから、自分からガツガツ行く性格でもないもんな。
「……うん、バレンタインら辺にな、告白されてん。嬉しかったけど、やっぱり考えるやん? 友達でおった方がずっと仲良くおれるわけやん。付き合ったらそれなりに嫌なとこも見えて、喧嘩とかもするようになるやろし」
「……うん。それは、すっごいわかるわ」
平和主義の俺らにとって、好きな人と友達のまま安定を保つのは、ごく当たり前の防衛本能みたいなもんや。
「で、ずっと返事先延ばしにしててんけど。昨日、ホワイトデーやったやろ? マンションの前でバラの花束抱えて、俺が帰ってくるまで待っててくれたんよ」
「うわぁ、すごいロマンチック!!」
手を叩いて喜んだ……。
――でも、ちょっと待って。
「元友達」「バレンタイン付近の告白」「返事の先延ばし」「ホワイトデー当日の成就」。
それって、もしかして……相手、くうちゃんの可能性、ない?
くうちゃんの好きなタイプ、男らしくて、頼りになる、そんな人やった。
「やろ? そんなん、もう逃げ場ないやんか。やから、受けて立ったろうと思って。あかんかったら簡単には友達に戻れへんやろうけど、それも運命かなって」
「……運命か。……よかったな、ゆうと」
頭がクラクラする。吐きそうや。
ゆうとに振られたと思ったくうちゃんが、あの夜、俺で妥協したんや。
……ほんまに気持ち悪い。
「おめでとう」なんて言いながら、陰で親友の恋人とキスしてもうた。
それでもまだ友達面して。なんなん、ほんまに気持ち悪い関係すぎるやろ、俺ら。
知らんかったとはいえ、自分が情けなくて、気持ち悪すぎて。
「……はんちゃん、大丈夫? 酔った?」
「いや……昨日ちょっと同僚と飲みに行ったのが残ってたみたいで。これ食べたら帰ろうかな、ごめんな」
「いや、俺もごめんな。わざわざ休みの日に呼び出して」
ゆうとは、ええ奴や。
真面目で、優しくて、面白い。
くうちゃんには、ゆうとがぴったりや。
ゆうとなら、くうちゃんを安心して任せられる。……これで、やっと諦めもつく。
「幸せにしてあげてね。その人のこと」
帰り際、精一杯の強がりを込めてゆうとに手を振った。
あぁ、短い恋やったな。たった三ヶ月。
いや……気づいたのが三ヶ月前なだけで、きっと俺はずっと前から、くうちゃんに片想いしてたんやろな。
♢♢♢
「はんちゃん、おはよう! あれ? もしかして三日酔いくらいしてる?!」
週明け、朝から陽気な上重の声に救われる。
そうや。親友を一人失ったかもしれんけど、俺にはこの最高に優しくておもろい同期がおるやんか。
元々、誰かと付き合うつもりなんてなかったんや。こんなに周りに恵まれてるのに、贅沢なことばっかり考えてたな。
「ん、大丈夫。嫌なことあったけど、上重に会ったら元気出たわ」
「ふわぁ! はんちゃん! 俺、今泣きそう!!」
大袈裟に抱きついてきたけど、今日だけは振り払わんといてやろう。
……それにしても「ふわぁ」って何? 初めて聞いたわ。
ところで、あのメッセージカード。結局、内容の真意がいまいち分かってへん。
未来の売れっ子ポエマーに、ポエムの意味を聞くのって失礼にあたるんかな。
「あの、未来のポエマーさん?」
「はいはい、なんですか? はんちゃんさん?」
「メッセージカードの真意が読めないというか、表現力が高度すぎて意味がわかってないというか……」
言葉を選びながら伝えてみると、上重は「おほほ」とお上品に笑ってみせた。その表情を見る限り、もう少し突っ込んでも良さそうや。
「……あの『月光』って、なに?」
「……それはそのままの意味ですよ? はんちゃんさん?」
いや、見ればわかるよ。芸術に疎い俺でも「月光」が月の光やいうことくらい。
「とりあえず、俺に伝えたかったのって……いや、とりあえずも何も、全くわからん!」
「……まぁ、いつかその時が来たら教えたるわ。はんちゃんだけにね」
イシシ、とジャンプ漫画の主人公みたいな笑い方をして、上重が自分のデスクに戻っていく。
なぁ、メッセージって人に伝わってこそのもんやろ? 意味不明な暗号残されたままじゃ、こっちは怖いねん。
♢♢♢
『はんちゃん、今日の夜会える?』
お昼休み、スマホが震えたと思ったらこれや。
え? 次はしゅうた?
なんなん、最近俺への個人呼び出しが多すぎるやろ。みんなで集まればええやん。俺、そんなに暇そうに見えてるんかな。
『ちょっとだけなら、会えるよ』
流石に心が沈んでる時に、無理して笑い続けるのは辛い。
でも、しゅうたは俺に「大吉」をくれた恩人やから。少しでも優しく返したいねん。
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