“一目惚れだった”
きみに言われたその時から
僕の恋は始まっていた
記憶がなくなる前の僕を勧誘した理由が”一目惚れだった”と元貴君に言われた時ドキッとした。それと同時に、胸の奥に温かな気持ちが宿る。これはきっと忘れてはいけない想い。
スマホのパスが元貴君の誕生日だったり、どこか甘いLINEのやり取りを見て”もしかして”と思った。ただ、恋人同士というには「好き」や「愛してる」の言葉がない。それでも、たまに二人で出かけたり食事をしたり、”それはもはやデートでは?”といった感じのことも。僕の希望的観測だとしても、確かめずにはいられなかった。
「…そうだね。俺たちは恋人同士だった。」
カマかけはまさかの成功。
(本当にこんなすごい人と恋人同士だったんだ…。)
多分僕の方が元貴君のことが大好きだったんじゃないかと思う。だって、こんなにも嬉しい気持ちでいっぱいだから。
「安心して。記憶ない涼ちゃんに手は出さないから。」
胸がズキリと痛む。そうだ …、元貴君が好きなのは今の僕じゃなくて記憶をなくす前の僕….。
でも、僕は僕だよ?
僕を見て?
「キス、してみたい。」
僕の言葉に元貴君は大きな目をさらに大きくさせる。
「自宅に戻ってから記憶を戻す手掛かりがないか色々見たんだけど、僕にとってチームとのこと、元貴君とのこと、きっとすっごく大切にしてた。だから早く思い出したいんだよ!」
もっともらしい事を言ってるけど、これは単に記憶をなくす前の僕に対する嫉妬と対抗心。お前だけが元貴君に愛されるなんてズルい。
「本当にいいんだね?」
元貴君の言葉に、僕はコクンと頷いた。
「目、閉じないとできないよ。」
近づいてくる顔があまりにも綺麗で思わず見惚れていたら、困ったように元貴君は微笑んだ。
「ご、ごめん!」
目をギュッと閉じる。すると、唇に柔らかい何かが触れた。
”ちゅっ…”
湿った音が静かな部屋に響く。2回3回と軽く啄む様に触れてから、柔らかなぬくもりは離れていった。
「涼ちゃん…。」
優しく、だけど微かに震える声で名前を呼ばれてそっと目を開けると、苦しそうな表情の元貴君がいた。
「ごめん、涼ちゃん…。」
元貴君が好きなのは僕であって僕じゃない。だからいくら記憶を戻すための手段だといっても、僕のお願いは元貴君を傷つけてしまったかもしれない。
「僕の方こそごめん!変なこと頼んで…。」
自分の身勝手な頼みをしたことを後悔した。
だけど、元貴君へのこの想いは今の僕だけのもの
だからお願い
僕が消えるその日までは
僕がきみを好きでいることを許して
ジワリと目頭が熱くなるが、ここで泣いたら元貴君に気を使わせてしまう。何とか気付かれないように横を向くと、顎を鷲掴みにされて強制的に視線を戻された。
「元貴、くん…?」
目の前の元貴君の熱を帯びたその瞳に、体の奥が痺れるように疼く。
「手出さないって言ったけど、ちょっと無理かも…。」
「え?」
次の瞬間、再び唇を塞がれたかと思うと今度は噛みつくようなキスをされた。
「ん?!」
元貴君の舌が侵入してきて、反射的に逃げようと引っ込む僕の舌は簡単に捕まり、口内を蹂躙される。
「….っはぁ。」
うまく呑み込めなかった唾液が口端から溢れて顎を伝う。どれくらい時間が経ったか分からないが、元貴君が唇を離した時、僕は酸欠なのか刺激が強すぎたのか頭がクラクラとしていた。
「….涼ちゃん、その顔は…。」
「へ…..?]
「まぁ、いいや。もっと気持ちよくしてあげるね。」
「な….にを….?」
「荒療治だよ。記憶取り戻したいんでしょ?」
そう言って僕のズボンのベルトを外し、チャックを下す。
「も、元貴君?!」
「大丈夫。いつもしてたことやったら思い出すかもしれないじゃん?」
「いつもやってたこと….?」
詳しく聞きたいけど聞きたくないような….。
「あぁ、先走りでパンツ汚れちゃったね?キスそんなに気持ちよかったんだ。」」
「違っ….。」
「ねぇ、涼ちゃん。いつもみたいに言って?」
「いつも….?」
「”元貴が欲しい”って。それが俺達の合図だったんだよ。」
本当にそんな恥ずかしい事言ってたんだろうか?しかし、じっと注がれる熱視線に耐えられず
「も….元貴君が….欲しい、です….。」
元貴君は嬉しそうに笑った。
「う~ん、60点。」
元貴君は僕の足の間にしゃがみ込み、何のためらいもなく僕のモノを口に含んだ。
「!!」
舌と唇とを器用に使いじゅぷじゅぷと卑猥な音を立て、たまに奥まで飲み込まれるとぬるぬるとした粘膜の感触にそれだけで達してしまいそうだった。
「きもちひ?」
声を出す余裕がなくてコクコクと頷くと、元貴君は嬉しそうに目を細めた後、より強い刺激で攻め始めた。
「うっ、元貴君、離してっ。」
達する直前、慌てて元貴君の肩を押して体を離す。そして家具を汚さないようにと咄嗟に自分の手で吐き出す欲を受け止めた。
「はぁっ、はぁっ….。」
何とか間に合ったみたいだ。元貴君にかかってないか見ると、元貴君は目を見開いて僕を見ていた。
「元貴君….?」
やっぱりかかってしまったんだろうか?しかし、予想に反して元貴君は一言。
「エロっ…..。」
え?
「今の姿、オ〇ニーした後みたいでエロい。」
「馬鹿なこと言ってないでティッシュ頂戴!」
「あ、ごめんごめん。でも、それは後ろに塗って。」
「後ろ….。」
「痛いの嫌でしょ?」
にっこり笑顔の元貴君が中途半端に引っかかっていた僕のズボンとパンツを取っ払い、僕の片足を肩に担いだ。
「!?」
「ここに塗るんだよ。いつもやってるでしょ?」
丸見えになった後ろを、トントンとノックする。
「あ、あの、元貴君っ。」
「涼ちゃんのまた元気になって来てるよ。」
固さを取りの戻しつつあるモノを撫で上げられ、小さな喘ぎを漏らす。
「ね、涼ちゃん。こういう時はいつも”僕のいやらしい穴を元貴のチ〇ポでぐちゃぐちゃにして”って言ってたんだよ。」
嘘でしょ?!そんなこと言ってんの僕?!
「言って?そうしないとずっとこのままだけど。」
じっと見つめる元貴君。このままだと終わらないし、何より恥ずかしいから早く終わらせたい!
だけど….
「…..っ。」
いつの間にか溜まっていた涙がポロリと零れ落ちる。
「ごめ….、元貴君。ぼく、は、きみが好きな僕じゃ、ないっ。ごめんなさっ。」
元貴君が求めてるのは
僕であって僕じゃない
分かってたはずなのに
ぽろぽろと涙が溢れて止まらなくなった。
「涼ちゃん!」
ぎゅっと抱きしめられた。元貴君の匂いと温かさに安心し、さらに涙が溢れてくる。
「ごめん、涼ちゃん。俺が悪い。完全に調子乗った。」
「ううん….。」
「ね、涼ちゃん。ゆっくりでいいから続きしていい?」
「え…..。」
「大丈夫。全部俺に任せて。」
膝を立てて座る僕の足の間に元貴君は座り、掌にたっぷりのローションを垂らす。
「痛かったら言うんだよ?」
そう言うと、元貴君の指が僕の中に入って来た。
「久しぶりだからやっぱりちょっと固いかもな。痛くない?涼ちゃん。」
「あ、…..変、な感じっ。」
ゆっくりと抜き差しの始まった指の存在を感じる。どれくらい時間をかけるのが正解かは分からないが、元貴君はかなりの時間をかけてくれた。ふと、元貴君のズボンを見る。かなり膨らんでいるそこは、とても窮屈そう。
「元貴君、もう大丈夫だよ….。」
「涼ちゃん….。」
「元貴、くん。僕を、ぐちゃぐちゃに、して?」
流石にそのまま言うのは恥ずかしいから、これくらい省略してもいいよね?
「涼ちゃん….貴方って人は本当に….。」
元貴君は大きくため息をついた。やっぱり、ちゃんと言わないとダメだった….?
「止めてって言っても止められないからね?」
元貴君は手早くゴムを付け、僕の太もも掴むと一気に貫いた。
「ああっ!」
中がうねって収縮しているのが自分でもわかる。
元貴君が僕の中にいる
嬉しくて、もっと元貴君を感じたくて、無意識にその形を確認するように下半身に力が入った。
「ちょ、そんな絞んな ….っ。」
焦った元貴君が僕の足を再び担ぐ。挿入の角度が変わり、新しい刺激に僕はあられもない声をあげた。それが合図になったかのように、何度も腰を打ち付けられる。
「ああ、あ、ああっ。」
絶え間なく繰り返され、お腹の奥からじわじわと快感が込み上げてくる。
「涼ちゃん、気持ちい?」
「あ、きもちいっ。もとき、くは?」
ガクガクと揺さぶられながらもなんとか聞く。だって、僕一人だけ気持ちいいんじゃ意味がない。
「ん。涼ちゃんの中、すげぇ気持ちい。」
「よかった….。」
嬉しくてにっこり笑うと、元貴君は少し驚いた表情をした後、嬉しそうに微笑んでくれた。
「頭が痛い….。」
行為が終わった瞬間、頭がズキズキと痛くなった。
「涼ちゃん、ソファーに横になって。」
言われて横になると、元貴君は後処理を全てしてくれた。
「流石に泊ってくでしょ?」
「いいの?」
「もちろん。酒飲んでんのに無理させちゃったのは俺だし。ごめん。」
「ううん。元貴君は悪くないよ。」
「いや、きっと記憶戻ったら涼ちゃんに怒られる….。」
そんなに?
「涼ちゃん、ベッドに行ける?」
「僕このソファーでいいよ。っていうかこのソファーがいい。」
流石に家主を差し置いてベッド使えない。
「そ?じゃあ掛布団持ってくるから。」
「ありがとう。」
しばらくして布団を持って戻って来た元貴君は
「はい、じゃあちょっと奥に詰めて。」
「え?」
奥に押しやられ、隣に元貴君が横になる。
「元貴君もここで寝るの?」
「腕枕必要?」
「いえ、大丈夫です….。」
どうしよう。落ち着いて寝れないんだけど….。
「涼ちゃん。」
「な、なに?」
「焦って記憶戻す必要はないよ。貴方は貴方だし、貴方が忘れてることはちゃんと俺が覚えておいてあげるから安心して。」
「元貴君…..。」
元貴君はそう言ってくれるけど
僕は早く記憶を取り戻して
きみが好きな僕を返してあげたい
好きな人の幸せを願って身を引く人って
多分こんな気持ちなんじゃないかな
「で、涼ちゃん。」
「ん?」
「キス、どうだった?」
「日本酒味。」
「ロマンティックのかけらもねぇな。」
コメント
9件
初コメ失礼します! すごい切ない…でも最後の会話が不意打ちで吹きました() 応援してます!
このお話の題名はこういう意味だったのですね🥲 記憶がなくても、♥️くんを好きになる💛ちゃんが可愛いくて、切なくてでした!
うぅー、きゃわぁ