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リハーサル後のスタジオは、いつもより静かだった。
照明が落ちて、床に残るのは二人分の影だけ。
「……シューヤ、さっきの振り、もう一回だけ確認しない?」
リョウガが何気ない声で言う。
シューヤはタオルで首元を拭きながら、少しだけ目を丸くした。
「え、今から? もうみんな帰ったけど」
「だから、だよ。二人のとこ、詰めたい」
その言い方が、どこか照れ隠しみたいで。
シューヤは小さく笑って、うなずいた。
音のないスタジオで、二人は向かい合う。
カウントを取るリョウガの声は、いつもより少し低くて、近い。
動きを合わせるたび、距離が縮まっていく。
手が触れそうで触れない、その一瞬がやけに長く感じた。
「……シューヤさ」
リョウガがふと、動きを止める。
「最近さ、俺、お前のこと見すぎてる気がするんだけど」
「……は? 何それ」
シューヤは笑おうとしたけど、リョウガの視線が真剣で、言葉が続かなかった。
「ステージでも、リハでも、オフでも。
気づくと、目で追ってる。……自分でも、ちょっと困ってる」
空気が、静かに張りつめる。
「え……」
驚き、何の言葉も発せないシューヤに、リョウガは一歩近づいた。
近すぎて、息がかかる距離。
「たぶん、好きなんだと思う。メンバーとして、だけじゃなくて」
シューヤの心臓が、どくん、と大きく鳴った。
「……ずるいんだけど。そういうの、急に言うの」
「シューヤは?教えてよ。俺のこと、どう思ってるのか」
正面から真っ直ぐ見つめるリョウガに恥ずかしくなって、シューヤは目を逸らした。
「たぶん…、リョウガのこと気にしてる。
……いなくなったら嫌だなって、思うくらいには」
リョウガの表情が、少しだけ柔らぐ。
「じゃあ……少しだけ、確かめてもいい?」
返事を待つみたいに、リョウガは止まる。
シューヤは一瞬だけ迷って、それから小さくうなずいた。
額が触れて、視線が絡んで、
ほんの一瞬、軽く唇が触れる。
それだけなのに、胸の奥が熱くなる。
「……これ、内緒な」
「ばかっ…言えるわけ」
シューヤが照れたように言うと、リョウガは笑った。
「ステージの上では、いつも通り。
でも、裏では……俺の、ってことで」
「っ……調子乗るなよ」
そう言いながら、シューヤは少しだけ、嬉しそうだった。
静かなスタジオに、二人分の笑い声が落ちていく。
まだ名前のつかない関係は、ゆっくり、でも確かに始まっていた。
fin
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