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事のなりゆきで、孤児院で行う炊き出しの手伝いをすることになった。
今、肉やら野菜を孤児院の調理場へ運び込んでいるところだ。
よく考えると、襲撃現場からモンソロの町まではそれなりに距離がある。
ひとりであの数の豚魔獣を片付け、帰ってくるには半日あっても難しいかもしれない。
よって豚魔獣の報告はあとまわしにしたのだ。
………………
材料の搬入をひとまず終えた俺は水を飲みながら一息ついていた。
ここで気になっていた自分のステータスを確認してみる。
ゲン Lv15
年齢 17
状態 通常
【従魔】 シロ (フェンリル)
HP 112/117
MP 114/193
筋力 72
防御 73
魔防 82
敏捷 60
器用 63
知力 115
【特殊スキル】 時空間魔法(U) 身体頑強 状態異常耐性
【スキル】鑑定 (4) 魔法適性(全) 魔力操作(6) 剣術 (2)
【魔法】 風魔法(5) 氷魔法(3) 身体強化(3)
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
おお~、これは凄い伸び方だな。
従魔であるシロからの経験値と女神さまから授かった加護のお陰だとは思うけど。
おそらく、女神さまから頂いたこの身体にも秘密があるのだろう。
今日の戦いでもそうだが異常な強さだったよな。
あの戦っていた騎士たちが弱い訳ではないと思う。
ただ、基準をアーツ先生にしていたのがそもそもの間違いだったのだ。
お陰で自分の力を認識できたのは大きい。
無自覚だったとはいえ自重が必要だな。……自重が。
そうしないと、そのうち人外認定されるよな。
ちなみに、例のレベルアップを知らせる電子音とガイダンスは寝ている時や戦闘中は聞こえないようになっている。――安心設定なのだ。
さて、次は何をしたらいいんだ?
ここの子供たちは下は3歳から上は14歳まで総勢42名。
この国では成人は15歳からで成人すると孤児院を出ないといけないらしい。
それでも、孤児院に居る子はまだ良いほうでスラムの方ではストリートチルドレンが溢れている。
スラムの子供の平均寿命は6歳と低くとても世知辛い。
そこでアーツ先生はそんな子供たちに少しでも足しになればと、定期的にスラムや孤児院で炊き出しを行なっているのだ。
アーツ先生、凄い! 素晴らしい! かっこいい!
「俺も暇があったら手伝いますのでいつでも声をかけてください!」
そう言ったのだがアーツ先生は何か寂しそうに笑うと……。
「そうか」
そう一言だけであった。
ん……、あぁ、みんな口だけで行かないんだろうなぁ。
冒険者なんてすぐ居なくなるし生活も楽じゃないからね。
………………
そのあとはパンとスープをみんなで美味しくいただきました。
「あれれ、なんでこんなに肉が入っているんだ?」
なんてアーツ先生は呟いていたわけだが。
フフフッ……、肉なら山ほどあるからね。――解体済みのやつが。
オークの肉は美味しく結構な需要があるらしい。
食事のあとは子供たちと楽しく遊んだ。
なかでも俺の手品は子供たちにすこぶる好評だった。
うんうん、どこの子供たちも一緒だね。
そして、また来るなと言って解散……。
できるはずもなく教会までシスターマヤに連行されましたぁー。
もちろんアーツ先生にもご同行をお願いしましたよ。
それでもって、俺は今教会の談話室に軟禁状態になっている。
まぁ、シスターマヤも居るんだけど話すしかないよね。
俺は談話室のテーブルを囲んでいるアーツ先生とシスターマヤに今朝起こった魔獣襲撃の件について説明をおこなった。
するとアーツ先生は少し慌てた感じで、
「オークだと!? 全部倒したのか? 周りにはもういなかったか? 他に被害は出てないのか? 事後処理はしっかりやってきたのか? 住処は探ったのか?」
そう、矢継ぎ早に確認してきた。
俺は質問に対し丁寧に答えていく。
確かに周りの確認と事後処理はやってきたが、その他のことは確認していない。
もちろん住処など探してない。
俺が話し終えるとすぐに、
「よし、今から冒険者ギルドへ行ってギルマスに報告する。ゲンもついてこい!」
そう言って襟首を掴まれ冒険者ギルドに連行されていく。
すると、シスターマヤが今にも泣きそうになっている。
「また来るから……」
俺は両手をあわせながら教会をあとにした。
俺とアーツ先生は冒険者ギルドに赴きギルドマスターと面会している。
そして、魔獣襲撃の件について報告をあげていた。
40頭ものオークを殲滅したと言う報告に、ギルドマスターであるガンバ・ラルさんは怪訝な表情で俺とシロを見ている。
確かに貴族の護衛騎士が20名いたとしても、到底手に追える数ではない。
しかも助っ人はFランクの冒険者1名と、その従魔、と言っても犬コロ1匹である。
とても信じることはできないだろう。
しかしながらアーツ先生は悠然と構えている。
そんな懐疑的なガンバさんに向かって、
「こいつはゲンといって私が毎朝鍛えてやっている者だ。そして、今日の朝で4日目となる」
何故か知らないがアーツ先生は意気込んでいる様子だ。
それに対してガンバさんの方も、
「ほほう、4日とな。それほどの者なのか」
とか言いながら関心しているわけで。 ……なぜに?
………………
「俄に信じられんが貴族の名前をおいそれと口にするとは思えんし……」
「おおよその話は理解した。しかし、こちらも確認せんことには人は動かせん。そこでだ、緊急措置として指名依頼を出すことにする」
そのように決断したガンバさんはアーツ先生に向かって、
「依頼内容は事後処理がしっかりできているか。と、その他に被害が出ていないかの確認だな。事は街道で起こっている、くれぐれも慎重に行動してくれ。そして、出来ればでいいが住処の洗い出しもやってくれると助かる。アーツおまえがそこのボーズを連れて確認にいってくれ。手続きが済みしだい直ぐに発ってくれ」
アーツ先生はガンバさんの言葉に大きく頷くと、
「わかった、任せてくれ」
そうして、諸々の手続きを終えると俺たちは冒険者ギルドをでた。
「今から野営の準備を整えて現場に向かうことになる。最低3日は掛かるつもりで用意しておけ。半刻 (1時間) 後に北門前に集合だ。遅れるな!」
「了解です。それでは半刻後にまた」
俺はそう答えると急ぎ家に向かった。
冒険者ギルドの依頼で何日か帰れないと説明し、空にしたダッフルバッグを持って家をでた。
………………
野営の準備を整え俺とシロは北門へやってきた。
今、そこで買ってきた串焼きをシロと食べている。
そして、食べ終わったあとに水を飲んでいると、
「おう、待たせたな!」
アーツ先生が合流したので、すぐに北門を出て歩きだした。
打合せなどは歩きながら……というより、駆け足をしながら進めていった。
森を突っ切るとかえって時間が掛かってしまうので、少し遠まわりにはなるが途中で左に折れ西に進路をとる。
程なくして、アーク (サミラス領都) から伸びる街道にぶつかったので、そこからはラファール領方面へ向かって進んでいく。
野営の荷物の入ったダッフルバッグを背中に担ぎ、腰に剣を佩いた状態で駆け抜けていく。
北門を出てから二刻 (4時間)、俺たちは襲撃現場にたどり着いた。
通常は馬車を使っても半日で行けるか行けないかの距離である。
「本当にここか?」
アーツ先生は疑念を浮かべた顔で呟いている。
(まぁ、そうなるよね)
ここには何の痕跡も残っていないのだから。
だって、キレイに片付けちゃったし。
40頭ものオークの亡骸はどこへ消えちゃったの? って話しだよね。
なれど、亡くなった騎士たちのお墓は今も街道脇に並んでいた。