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廊下に鳴り響く、心地よい音。
あの日を思い出す…セミの鳴き声がいつしか霞んで消えて、あの音色だけが鳴り響く。
ーーーあの日と、同じように。
私は吹奏楽部とやらに入った。
きっかけは、私のピアノの経験だ。
ずっと小さい頃から音楽が好きで、好きで…
中学生になったら、音楽系の部活に入るんだって、決めていた。
私の進学先の中学校には吹奏楽部しか音楽系の部活がなかった。
だからなんとなく、そう、なんとなく。
吹奏楽部に入った。
なにかの直感でクラリネットを選んだ。
…と言っているが、私は暖かいあの音が、大好きだった。
難しいし、折れかけたこともあった。
でもめげずに続けた。
そしたら、いつしか楽しい時が来ると…
やっぱり先輩たちはコンクールの季節だったから、とても忙しそうだったし、大変だったと思う。
でも、私たちにたくさん教えてくれたんだ。
感謝の念でいっぱいだ。
夏休みになると、練習は本格化してくる。
私たち一年生は、第二音楽室で練習する日々が続いた。
ある日、先生が言った。
「今年の曲ではピアノを使いたいと思います。一年生、誰か弾ける人はいますか?」
ー私の出番だ…!
そう思った。
まあでも、ピアノを弾ける人なんかいっぱいいるものだから、沢山の手が上がった。
第二音楽室でオーディション的な、そんなのが行われた。
みんなが「自分の中で一番うまく弾ける曲」を弾かされているのである。
前の子は、よくある練習曲を弾いた。
私は、ピアノの試験で弾いた曲を弾いた。
私の後の子は、小学校の校歌を弾いていた。
私の後の子は、先生のお気に入りの子だ。間違えても弾きなおしが求められていたのである。
少し不公平に感じたが、何も言えなかった。
緊張感のなか、次の日に結果が発表されたのである。
「ピアノの担当者を発表いたします…」