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こんばんは!
今日も投稿です!偉すぎる!でも思いつきの死ネタです!ご注意ください!!
🗻✖️🐱
⚠︎死ネタです!
⚠︎適当!
どうぞ!
かしゃ!
聞き慣れた耳に残る高い音に気を取られて後ろを振り返る。
「お、」
かしゃ!
もう一度。嬉しそうにアイツは微笑むと写真の様子を確認して満足そうに頷いた。
「もー、フジ!何回目だよ!」
「いや〜、キヨがあまりに綺麗で…!」
「…そーかよ」
アイツ_フジは楽しそうにまた俺にカメラを向けてきた。慣れた手つきで操作をしてもう一度シャッター音を響かせる。
今日はフジの希望で海に来た。きらきらと光を反射する海水に目を奪われる。でもフジはそんな海よりずっと俺をみてくる。
「海に来た意味よ。俺より海見ろ海」
「えー、いいじゃん?そういうキヨも結構写真撮られるの乗り気でしょ?」
「うっせーなー!海の方が綺麗なの!」
そうかなー、と呑気そうに笑うフジはいつもに増して嬉しそうだ。
「きよ〜、あのさぁ?」
「おん、なに」
「もし俺がさ、先に死んだら俺の骨の一部だけ、海に流してくれない?」
「……は、死ぬって、縁起でもないこと言うなよ…」
「いや、だってどっちが先に死ぬとかわかんないじゃん。急に死んでもその後どうすればいいかわかんないでしょ?」
「…まあな」
納得いってない俺にフジはカメラを向けた。ほんと、何度目だよ。好きだよな、写真撮るの。
かしゃ、カシャッ
「…2枚撮ったな…!」
「あはは、いーじゃん。可愛い顔撮れたよ?」
「タヒね」
「ひどぉ?!」
ふっと笑いが出てくる。今日も何気ない日常が流れていく。そんな1日1日も幸せで溢れる。
「キヨ、俺の写真撮ってよ〜」
「はあ、なんで?俺写真撮るの下手なんだけど」
「いーじゃん。お願い!」
「いやぁ、そう言われましても…」
「そこをなんとか頼むよキヨ〜」
「無理なもんは無理!てかネタにすんな!」
「でもノってくれるじゃん!いいからいいから!撮って!」
「はあ、」
俺にカメラをずいっと寄せると海辺に立った。なんだよ、結局撮らなきゃなんないのかよ…。まあ、いっか。たまには。
「撮るぞー。はい3、2、1」
フジはにこっとしてピースをする。俺はなんだか意地悪がしたくなってしまった。だからもう1秒多く継ぎ足してやった。
「とれ、」
かしゃっ
「おう、撮れたわ」
「え〜!?嘘!キヨそこまで下手だったの?!」
「なわけねぇだろ!」
小ボケをはさみ、ふは、と目を合わせて笑い合った。撮れた写真を確認すると微妙な顔つきをしたフジの顔が写っていた。
「見ろよ、お前の愉快な顔。ちょーおもしろい」
「えぇ、ひどぉい!撮り直し!」
「やだよ!結構俺なりに上手くいったから!」
「まあそっか、ブレてないだけマシかぁ…」
少し納得いってない顔を浮かべるから気付かれないようにこっそりとカメラを向けた。重くないそれは数秒構えているだけでは余裕だ。
「フジ」
「ん、な、」
かしゃ!
撮った後すぐ確かめる。あれ、ブレてる。うわぁ結構ひどい。俺こんなに下手だっけ?
「また撮ったの?見せて」
「すげーブレたんだけど」
「まあぐらついてたからねぇ」
俺が持っていたカメラを受け取ると確認した。にこりと笑うと写真をまじまじと見つめ、頷いた。
「これ、俺の遺影にしてね」
「は?こんなんがいいの?もっとマシなのあるだろ」
「いやいや、俺はこれがいい!」
「へー、変なの」
…ちゅんちゅん、ぴちちちちち…
あさ、おきた。ねむけなんてない。今日も目が腫れていたい。
「ふじ、おはよう」
きょうも、かたくてつめたい。
写真の中のふじは笑ってたりびみょうなかおしてたり、今よりかはぜんぜんましなくらい。
朝ごはんをふたりぶんつくって、ひとりでたべる。ふじが残した分はおれのお昼ごはん。
苦手だったじすいもふじのまねをしてがんばった。きっとほめてくれてる。
「ふじ、きょうは海でもいこっか」
へんじはない。もともとあまりものがなかった部屋にはおれのこえだけがひびく。
「あるいていこ。すぐちかくだから」
そんなことを言ってもなんの反応もないことはしってる。てを近づけても握ってくれることはない。きょうもふじはつめたい。
家をでるまえ、おれはしゃしんをとりだして、あぶらをかけて、あかりをともした。
ついたとき、いきぎれがひどかった。はいにつきささるようなつめたさがすっごく痛くって、泣きそうになった。
「ふじ、いっしょにむこうまでいこう」
おれは
骨壷を開けた。なんだか正気に戻れた気がする。口元に近づけて、キスをする。なんの香りもないのに、懐かしい匂いが鼻をくすぐった。遠くの方では誰かの叫び声と焦げ臭い匂いがした。
「最後の最後まで、いっしょ」
遺骨をもう一度骨壷に戻すと紐を固く結んだ。もうこれで離れない、いっしょにいられる。大丈夫、寂しくないのだから。
ひとりでいたぶん、しあわせにしてほしいな
波がさざめく海に体をつける。脱力すれば浮いてしまうから、がんばって沈む。でもカメラを首にぶら下げていたせいか、案外すぐに下に沈んでいく。
そういえば、カメラロールに
「いまいくね」
ほら、ふじのおねがい、かなえたよ
ーーーー
末期癌だと分かった時、とんでもない感情が溢れた。
あーあ、俺、死ぬんだって
現実味のない感情に、どうしようもなく呆れた。
入院を余儀なきされたけど、最後のお願いでキヨと一緒に暮らした。
それが俺の幸せだった。
家族にも知らせた。泣いてた気がする、多分。
家族にもお願いして俺の遺骨はキヨに全てあげることにしてもらった。それが俺なりの優しさだから。
今日も、最後最後、と繰り返して願う。
カメラに込めた思い、彼はそれを正しく受け取るだろうか?
ただ、お願い、どうか、幸せになって
明日大好きな女の子とお祭り行ってきます。毎日してる告白してきます。