最初はkid視点から ────
肌を掠める冷気に起こされた。眠っていたのかどうか、自分でもよく分からないまま目を開けた。天井は見慣れない色味の白で、寝心地に覚えがないベッドに身を預け、薄いカーテン越しの朝の光が静かに滲んでいた。
胸の奥にまだ微かな重さが残っている。昨日、自分がここに来て、何を言ったのか――思い出した瞬間、喉がひりついた。
「……頼る相手、間違えたな」
死にたいと言えば、否定せずにただ話を聞いてくれる。そんな『都合のいい相手』に頼ったつもりだったのに、不破さんは真逆だった。
まるで自分の命を拾い上げるみたいに強く掴んできた。あんなふうに言われるなんて思ってなかった。
部屋の外から、小さく食器が触れ合う音がした。
ため息をつこうとして、やめた。不破さんの気配があるだけで、心の奥がざわざわと揺れ出す。
食器の触れ合う音に導かれるように、ゆっくり身体を起こしてリビングへ向かった。ドアを少しだけ開けた瞬間、ふわっと苦くて温かい香りが鼻の奥に広がる。
コーヒーの匂いだ。思ったよりずっと、ちゃんとした香り。
視界の先では、不破さんがキッチンに立っていた。寝癖をそのままに、片手でポットを持ち、もう片方でドリッパーを支えている。動きは驚くほど滑らかで、迷いがない。湯を細く落とす手つきなんて、完全に慣れてる。
その横顔は真剣で、けれど張り詰めてない、静かな朝の表情だった。
なんだよそれ。意外すぎるだろ。
不破さんは僕に気づいていないのか、蒸らしの時間に小さく息を吐いて、ポットを置いた。その仕草が妙に落ち着いていて、胸の奥がひゅっとした。
不破さんの背中は優しいとか温かいとか、そういう簡単な言葉では片付かなかった。もっと……面倒くさいくらい真剣で、まっすぐで。 “生きてほしい”って言った人間の背中そのものだった。
彼が言ったのは、僕が欲しかった答えとは真逆のもので、頼る相手を間違えたと思った理由が改めて胸に突き刺さる。
けれど、こうして黙ってコーヒー淹れてる背中を見ると、自分の中の何かが、少しだけ静かになってしまう。
……癪だ。 癪なのに、視線が離れなかった。
途端に不破が気づいて振り返る気配がした。
「おぉ起きたか、おはよ」
「……おはようございます」
「んはは、んな固くなんなよ。別に今すぐ取って食おうだなんてしねぇから」
「……」
コーヒーを蒸かす不破さんは、ふわりと笑いながらそう言った。そんなこと無理な話なのに。
昨夜襲われなかったことが、不幸中の幸いだった。本当ならそれさえ怖くて、同じ部屋で眠るのは断ろうとした。しかし、その覚悟がないのに頼みを聞いてもらおうとは、虫が良すぎる。
あんな奴にさえ暴かれた秘部を、今更隠すつもりもないはずなのに。
……やっぱり嫌なものは嫌だった。自分は研究者の身分で、普段は色々な魔の体を扱うのに、自身の身体を売ることはしたくなかった。そんなまさに自分勝手な理由を抱えながら、もっと狡猾な方法があったような気がして、後から何度も何度も後悔した。
それなのに、僕はまた自分の身体を売った。
ドM……なのかな……。
「まぁとりあえず座れよ、コーヒー持ってく」
「……ありがとうございます」
マグカップにコーヒーを注ぐ不破さんの後ろ姿を見つめながら、運ばれるのを静かに待っていた。
fw視点 ────
1日目、2日目と日々を一緒に過ごしていると、甲斐田の心がだんだん警戒しなくなってきている事を強く感じた。
飯を作ったり、買い出しに行ったり、ゲームをしたり。共にすることが増えれば増えるほど、この日常が当たり前だったように、彼は俺との生活を受け入れてくれていた。
甲斐田が来た次の日から1日目が始まり、あの日の夜キスをした。
酒を交えて話しているうちに、ふとその艶やかな唇に触れたくなった。両頬を掴みグッと引き寄せ触れるだけのキスをすると、だんだんその顔は熱を帯びていった。
愛おしいその表情に理性は働かなくて、気づいたら彼をベッドに縫い付けていた。湧き上がる
欲を必死に抑えながら、一線は越えなかった。
楽しみは、最後に取っておくべきだから。
何日もそんな夜を過ごした。あまりにも嬉しくて幸せで、願ってもみなかった生活を送れているのだ、と思うと、どうしても誰かに自慢したくなったし、体を重ねたくなった。
でもこんな上物を誰かに教えてしまうのは勿体ないし、最後の日までゆっくり味わうのに越したことはない、と納得させていた。
そして、6日目の夜がやってきた。
今日もまた、酒を嗜んだ後に甲斐田とベッドに転がり込んだ。キスをして、脱げない程度に互いの服に手をかけ、熱い肌で胸を焦がす。
……なんて、もう我慢できなかった。
俺は甲斐田の上に跨り、パジャマのスウェットを胸の上までまくり上げた。ピンク色の飾りが上を向き、ぷっくり腫れている。
「……は……っ、え?何……、すんの…」
「何って……こんなんひとつしかないやろ」
「…え、っ……明日じゃないの…? 」
俺の興奮具合に乗せられつつも、不安が隠しきれない彼は俺にそう問いかける。なんだ、こいつも分かっていたのか。明日に行為をしようと思っていたことを。
だったら話が早い。今日は本番じゃないから。
「本番は明日やで」
「……え、今日は何…?」
「……素股、しよ」
ご拝読いただきありがとうございました!
大変長らくお待たせしてしまい、本当に申し訳ございません💦
言い訳ですが、インフルになり、定期考査があり、謎の高熱にうなされておりました。
そのためいつもより短いかと思われます💦どうかご容赦ください🙏
近況報告として、最近はfwtyやkghrなども見始めておりますが、原点にして頂点のfwhr、hrfwは頭一つ抜けています☝️(kgfwは地雷とまではいきませんが、あまり好みではありません🙇♀️)
また次回の作品まで期間が空いてしまうかもしれませんが、何卒よろしくお願いします🙌🏻
コメント
7件
みるのめっちゃ遅れた😭 最高でした!!!
いやぁ...,良すぎでは...,?( ߹ㅁ߹)🫶💕